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[MZZ43-P04] 加熱による磁性鉱物変化を利用した考古遺物・遺構の被熱環境推定
キーワード:岩石磁気学、考古遺物、焼成環境
土器、窯跡、竈跡、焚火跡、火事場跡などの被熱遺物・遺構は、我々が手にすることのできる考古資料の中でも大きな位置を占める。これらの遺物がどのような状況で熱を受けたのかを解明することは、焼成技術の進化・伝播や当時の人々の生活を知るうえで重要である。著者らは、磁性をもつ鉄鉱物が温度や酸化還元雰囲気などの環境に応じて様々な形態をとることに着目し、磁気測定により考古遺物・遺構の被熱条件を推定するための基礎的な研究を行っている。まず、最も単純な系として、土器や焼土といった被熱遺物の原料である粘土や土壌に含まれる主な鉄鉱物について、加熱によって鉄鉱物単体の磁性がどのように変化し、どのような化学変化が起きていると考えられるかを調べた。その結果、<500℃程度の比較的低温では鉄鉱物の種類や加熱雰囲気が空気中か真空中かの違いにより、様々な温度で磁化の増減が起こることが分かった。特に、水田に含まれる鉄水和酸化物の一種であるレピドクロサイトは200℃~250℃で急激に磁化が増加し、500℃付近で急激に減少した。これはレピドクロサイトの脱水によりマグヘマイト(もしくはマグネタイト)が形成され、その後安定なヘマタイトに変化したと考えられる。これらの結果は、野焼き跡や焚火跡、火事場跡などの遺構や比較的低温で焼成された土器類の被熱温度等を知る手掛かりになると期待される。次に、土器の原料を模した粘土試料を温度と酸化還元雰囲気を変えて加熱し、磁性がどのように変化するかを調べた。試料の磁化は400℃で焼成を行った場合に最大となり、焼成温度が高くなるほど磁化は減少し、保磁力の高い成分が出現する傾向がみられた。また、真空中で加熱を行った場合、空気中の場合と比べて磁化が強くなる、すなわちマグネタイトの割合がより高くなることが示された。今後は、これらの結果を実際の出土遺物・遺構の試料や復元窯で焼成を行った試料の測定結果とも比較することで、磁気的パラメータと焼成条件との詳細な関係を明らかにしたい。