日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ44] 海底マンガン鉱床の生成環境と探査・開発

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア国際研究所)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)

17:15 〜 19:15

[MZZ44-P01] 拓洋第5海山の鉄マンガンクラスト表面で観察される微細組織

*宮島 誠1加藤 真悟3,4臼井 朗2鈴木 勝彦4奥村 知世2 (1.高知大学 総合人間自然科学研究科、2.高知大学 海洋コア国際研究所、3.国立研究開発法人理化学研究所、4.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:鉄マンガンクラスト、微細組織

鉄マンガンクラストは、産業的に価値のある金属を含むことから、次世代の鉱物資源の一つとして認識されている。その形成過程に関する研究は盛んに行われているが、成長速度が極めて遅いこと(100万年に数ミリメートル)や、容易にアクセスできない深海(1000 mから5500 m)に存在することなどから、その成因に関する包括的な理解は得られていない。一方で、分子生物学分野における研究では、鉄マンガンクラスト表面に生息する微生物の種類やその代謝機能の解明が進められており、それらが鉄マンガンクラストの形成に関与している可能性が指摘されている(Kato et al., 2018; Kato et al., 2019)。本研究では、採集直後に生物的固定をおこなった鉄マンガンクラスト試料に対して、表面の微細組織を観察し、微生物との関係性を検討することを目的とした。

研究対象としたのは、鉄マンガンクラスト研究のモデル海山としてさまざまな側面で調査がなされている拓洋第5海山の試料である。KR16-01航海において、異なる深度(1432 m、2988 m、5373 m)から、無人探査機「ハイパードルフィン」を用いて採取した海水起源鉄マンガンクラスト4試料を調べた。これらの試料は、3.7%パラホムアルデヒド-濾過海水で一晩固定されたあと、50%エタノール-リン酸緩衝液(PBS)中にて4度で保存されており、観察の前にエタノールで脱水、風乾をしたものを使用した。各試料の厚さ約1 cmの最表層について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって微細組織を観察し、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析(EDS分析)によって化学組成を調べた。

観察の結果、試料の深度ごとに表面構造の違いが観察された。これらの違いは、各試料の断面で観察された微細成長組織の違いと対応していると考えられる。炭酸塩補償深度(CCD)以浅の試料表面では、円石藻の鱗片や、炭酸塩を主成分としたプランクトンの骨格と推測される微細粒子が多数観察されたが、CCD以深の試料では、そうした粒子は分布していなかった。さらに、微生物細胞様の微細構造が観察された溝部分においては、その他の部分と比較してマンガンが乏しくなっていることが確認された。溝部分におけるマンガンの欠乏は、Kato et al. (2018)による、鉄マンガンクラストの薄切片に対するSEM-EDS分析でも報告されており、本研究の3次元的な観察においても同様の傾向が確認された。これにより、微生物が局所的な元素組成の変化に関与している可能性が示唆された。


[Ref.]
Kato et al. (2018) Microbes Environ. 33, 366-377. Kato et al. (2019) PLoS ONE 14(11): e0224888