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[MZZ44-P04] 海底マンガン鉱床の採掘を想定した海水振とう試験による金属放出の評価
キーワード:マンガンクラスト、マンガン団塊、環境影響評価、溶存金属
海洋鉱物資源の開発に向けた環境影響評価として、海水への金属放出の可能性について検討する必要がある。海水中の微量金属は生物にとって必須元素として働く一方で、許容限度を超えると有害となる。マンガンクラストやマンガン団塊といった海洋マンガン酸化物は、現代の酸化的な海水に溶解することはないと考えられているが、水温や溶存酸素(DO)、pHの変化に応じた各金属の溶出について、詳細な評価はなされていない。本研究では、開発時に想定しうる3つの海水条件、1) 海洋深層(水温4℃、DO 1 mg/L、pH 7.5)、2) 海洋表層(水温25℃、DO >5 mg/L、pH 8.0)、3) 船上貯留タンク(水温40℃、DO 0 mg/L、pH 7.0)を設定し、マンガンクラスト(拓洋第5海山)及びマンガン団塊(GSJ地球化学標準JMn-1)を用いて、4段階の固液比(1:1000、1:100、1:10、1:4)で振とう試験を行った。試験後、海水試料はろ過し、ICP-MSを用いて溶存元素濃度を測定した。その結果、元素の動態は、1) 試験後に元の海水よりも濃度が減少する強吸着型(Cu, Zn, Pb, U)、2) 固液比が大きくなると溶出量が増加する溶出型(Li, Si, Cr, Ni, Se, Cd, Sb, Ba)、3) 溶出量が溶出と吸着のバランスで決まる溶出-吸着型(V, Mn, As, Mo, W)の3つに分類された。全体としてマンガン団塊のほうがマンガンクラストよりも元素が溶出しやすい傾向があり、生成環境に起因する元素の存在形態の違いを反映していると考えられる。海水中でのイオン形態に着目すると、基本的に、強吸着型あるいは溶出型の元素は陽イオン、溶出-吸着型の元素は陰イオン形態をとる。マンガン酸化物の表面は負に帯電しているため、陽イオンのほうが親和性が高く、中でもマンガン酸化物表面と内圏錯体を形成する元素(Cu, Zn, Pb)は吸着がより強いことで説明される。溶出量に関してpHやDOとの関係は明瞭でなく、いくつかの元素については水温が高いほど溶出量が多い傾向が見られた。特に環境影響が懸念される重金属について、米国環境保護庁が定めた海生生物の保全に係る水質環境基準と比較したところ、最も高い溶出濃度でも基準を超えたものはなかった。海水中の重金属の多くは極低濃度(< 1µg/L)であるためベースラインの把握が難しく、かつマンガン酸化物との反応では吸着するかほぼ溶出しないものが多いが、溶出-吸着型元素であるモリブデンは水深によらず濃度が約10 µg/Lと一定で、マンガン酸化物との反応を検出しやすいため、モニタリング対象元素として有望であると考えられる。本研究は、産総研環境調和型産業技術研究ラボ(E-code)の成果である。