日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] 口頭発表

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[O-02] 地球科学とアートの相互作用

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (5) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:荒木 優希(金沢大学)、豊福 高志(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、長井 裕季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、石田 翔太(横浜市立大学)、座長:荒木 優希(金沢大学)、長井 裕季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

16:03 〜 16:18

[O02-03] 構造色が生むスコリアの虹色

★招待講演

*松本 恵子1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:火山噴火、構造色、スコリア、微細組織

構造色とは、光の吸収等による物質自体の色ではなく、物質のもつ微細な構造による光の物理的作用による色を指す。発表者は、伊豆大島1986年噴火のスコリア噴出物に虹色光彩を呈するスコリアを見出した。虹色はスコリアの物質色とは考えにくい。発表者は虹色光彩がスコリア表面の微細組織による構造色であるとの仮説を立て、顕微鏡観察や元素分析によりその発現メカニズムを詳細に検討した。本発表は、虹色光彩の発現メカニズムについての分析結果を報告するとともに、自然界に存在する色とアートとの関係について考察する。
虹色スコリアの光彩は、スコリアの外側から内側へ青色、黄色、赤色と変化し、同時に透明から不透明(金属光沢)へと変化した。光学顕微鏡と電子顕微鏡による観察では、虹色スコリアの表面付近には可視光波長よりやや短いサイズの複合結晶(球晶)群が高密度で分布し、そのサイズは青から赤色領域にかけて増大していた。この観察結果から、スコリアの虹色は球晶群のサイズや球晶どうしの間隔、鉱物の種類による反射率の違いが生じさせた構造色であると結論付けた。
スコリアの虹色光彩は野外調査で目を惹いた。自然界でよく知られる構造色は、タマムシやモルフォ蝶の翅、クジャクやマガモの羽の色といった生物のもつ発色である。このような生物の色調は進化の過程で獲得した形質だと考えられる。一方、スコリアの場合は進化によるものではない。もしスコリアの虹色が人間の目を惹くのであれば、それは人間側の要因によるはずである。目から多くの情報を得る人間にとって、一つの対象から様々な色が発現したり、色順が規則的であったりすることは、魅力的に感じられる場合が多いだろう。人を通して対象を捉える行為や、人によって対象を変化させることがアートであると仮定すると、虹色スコリアそのものがアートというよりは、「表面に微細組織を生じた多孔質の火山噴出物」が色を通して人に認知され、それが魅力的に見えること、つまり人を介したことでアートになったと言える。物質と光の相互作用によって生じる色は、人間の目を通し美しいと認識することでアートに変化すると考えられる。