11:20 〜 11:35
[O04-03] 協働でつくる学びの場とその先にあるもの
★招待講演
キーワード:人材育成、げんさい未来塾、協働、学び、ネットワーク
日本は世界でも有数の自然災害多発国であり,市民一人ひとりの防災意識や防災対策が非常に重要な意味を持つ.そのため,全国で学校防災の促進や防災に関する内容の科目教育への導入,地域防災人材の育成などが行われている.一方で,防災や災害対策など,災害を通じて考えなければならないことは,殆どが平時の生活で考えなければならないこととオーバーラップしている.すなわち,「防災を考えること」は,「日々の暮らしを考えること」と同義である.では,平時に対する災害の位置づけとはなにか,というと,「平時に潜む問題を拡大するもの」である.大きな災害は,人口減少や人口増加などの社会のトレンドを加速させることが指摘されており1),災害時に顕在化するものの多くは,将来的にその地域で大きな問題となる事柄にも通じている.
筆者はこれまで,実際の活動と人材育成,地域と学校,各部局の連携というように,防災人材の育成とそのコミュニティ形成を通じて,防災という文脈を通じた多様な連携,協働の実践を進めてきた.本稿では,この事例について紹介する.
筆者の関わっている清流の国ぎふ 防災・減災センター(https://gfbosai.jp/)では,実践を通じた地域防災人材育成プログラムとして「げんさい未来塾」を開講している.これは,1年間のプログラムであり,自分自身が実践する防災課題(自分の地域の地区防災計画の作成,防災啓発プログラムの作成など)の遂行,基礎研修(コミュニケーション研修,プレゼンテーション研修,ファシリテーション研修など),OJT(実地研修)を通じて,主体的に防災に関する活動ができるようになることを目指すものである.正副2名のスーパーバイザーが伴走支援しながら主体的な活動を通じて学ぶ形式であり,大学のゼミに近い形式である.受け入れ人数は毎年5名程度(最大10名)となっている.このプログラムは2016年に開講され,2023年度までの入塾生は62名,卒塾生は56名である.塾生のバックグラウンドも,地域で防災活動をされている方,行政職員,学校の教職員,会社員,福祉系職種の方,など多様である.そのため,塾生の防災課題のテーマも,地域の防災啓発や地区防災計画の策定,ペット防災,乳幼児を持つ世帯への防災,女性防災,学校防災,所属する職場の防災対策の促進などのように様々である.
塾生同士のネットワークづくりの一環としてメーリングリストやfacebookグループの運用,中間報告会を含めた合宿には卒塾生も参加できるようにしている.塾生同士,相互の防災活動に協力し合う事例も増えている.近年は岐阜県の各部局が実施する防災施策に塾生が講師として登壇したり,企画から協力するような事例も増えてきている.このように,実際に活躍する塾生が増えてくると,社会的な認知度も高まり,学校での防災訓練や防災講話など,学校との連携を行う塾生も出てきている.塾生同士のつながりにより,多様な職種,領域,地域の人同士が連携できる土壌ができてきており,学校教員の塾生も,学校防災に他の塾生の協力を得て進めることができている.このような協力関係ができることで,自分だけでは対応できないテーマにも取り組むことができるようになるため,活動機会が増えるだけでなく,相互の学びの機会,塾生以外の多様な人とのつながりを得る機会も得られるようになっている.
多様な人と一緒に考え,協働する機会は違う価値観と触れる機会でもあり,新しい気付きにつながる.これが,相互の学びにつながっていく.このような学びは,いわゆる「防災」(備蓄や耐震補強などの狭義の防災)の視点だけでなく,日常と連結した視点にもつながるため,防災という文脈で社会を見ることで,「平時に潜む問題」を見つけやすくなり,平時を含めた社会課題の解決にもつながるものとなる.
以上のように,げんさい未来塾という人材育成の取り組みを通じて,多様なバックグラウンドを持つ防災人材のネットワーク化と協働,それらの活動を通じて,塾生以外のコミュニティにもネットワークと協働の輪が広がってきている.行政との連携や,学校との連携も行われており,それが相互の学びやさらなる協働にもつながっている.実際の活動については,清流の国ぎふ 防災・減災センターのホームページの「げんさい未来塾卒塾生の活躍」の陸で紹介されているので参照されたい.
参考文献
1) Kato, T., Bhattacharya, Y., Sugata, H. and Otagiri, R.: The six principles of recovery: A guideline for preparing for future disaster recoveries, Journal of Disaster Research Vol.8, sp, pp737-745, 2013.
筆者はこれまで,実際の活動と人材育成,地域と学校,各部局の連携というように,防災人材の育成とそのコミュニティ形成を通じて,防災という文脈を通じた多様な連携,協働の実践を進めてきた.本稿では,この事例について紹介する.
筆者の関わっている清流の国ぎふ 防災・減災センター(https://gfbosai.jp/)では,実践を通じた地域防災人材育成プログラムとして「げんさい未来塾」を開講している.これは,1年間のプログラムであり,自分自身が実践する防災課題(自分の地域の地区防災計画の作成,防災啓発プログラムの作成など)の遂行,基礎研修(コミュニケーション研修,プレゼンテーション研修,ファシリテーション研修など),OJT(実地研修)を通じて,主体的に防災に関する活動ができるようになることを目指すものである.正副2名のスーパーバイザーが伴走支援しながら主体的な活動を通じて学ぶ形式であり,大学のゼミに近い形式である.受け入れ人数は毎年5名程度(最大10名)となっている.このプログラムは2016年に開講され,2023年度までの入塾生は62名,卒塾生は56名である.塾生のバックグラウンドも,地域で防災活動をされている方,行政職員,学校の教職員,会社員,福祉系職種の方,など多様である.そのため,塾生の防災課題のテーマも,地域の防災啓発や地区防災計画の策定,ペット防災,乳幼児を持つ世帯への防災,女性防災,学校防災,所属する職場の防災対策の促進などのように様々である.
塾生同士のネットワークづくりの一環としてメーリングリストやfacebookグループの運用,中間報告会を含めた合宿には卒塾生も参加できるようにしている.塾生同士,相互の防災活動に協力し合う事例も増えている.近年は岐阜県の各部局が実施する防災施策に塾生が講師として登壇したり,企画から協力するような事例も増えてきている.このように,実際に活躍する塾生が増えてくると,社会的な認知度も高まり,学校での防災訓練や防災講話など,学校との連携を行う塾生も出てきている.塾生同士のつながりにより,多様な職種,領域,地域の人同士が連携できる土壌ができてきており,学校教員の塾生も,学校防災に他の塾生の協力を得て進めることができている.このような協力関係ができることで,自分だけでは対応できないテーマにも取り組むことができるようになるため,活動機会が増えるだけでなく,相互の学びの機会,塾生以外の多様な人とのつながりを得る機会も得られるようになっている.
多様な人と一緒に考え,協働する機会は違う価値観と触れる機会でもあり,新しい気付きにつながる.これが,相互の学びにつながっていく.このような学びは,いわゆる「防災」(備蓄や耐震補強などの狭義の防災)の視点だけでなく,日常と連結した視点にもつながるため,防災という文脈で社会を見ることで,「平時に潜む問題」を見つけやすくなり,平時を含めた社会課題の解決にもつながるものとなる.
以上のように,げんさい未来塾という人材育成の取り組みを通じて,多様なバックグラウンドを持つ防災人材のネットワーク化と協働,それらの活動を通じて,塾生以外のコミュニティにもネットワークと協働の輪が広がってきている.行政との連携や,学校との連携も行われており,それが相互の学びやさらなる協働にもつながっている.実際の活動については,清流の国ぎふ 防災・減災センターのホームページの「げんさい未来塾卒塾生の活躍」の陸で紹介されているので参照されたい.
参考文献
1) Kato, T., Bhattacharya, Y., Sugata, H. and Otagiri, R.: The six principles of recovery: A guideline for preparing for future disaster recoveries, Journal of Disaster Research Vol.8, sp, pp737-745, 2013.