日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-05] 変動帯の地質と文化

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:鈴木 寿志(大谷大学)、川村 教一(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、先山 徹(NPO法人地球年代学ネットワーク 地球史研究所)

17:15 〜 19:15

[O05-P08] 日本風景街道「奥能登絶景海道」の地形地質的特徴と地域資源の活用

★招待講演

*森野 善広1、川角 優子2、灰庭 由美2 (1.パシフィックコンサルタンツ株式会社、2.珠洲市観光交流課)

キーワード:日本風景街道、奥能登絶景海道、地域資源

1. はじめに
 能登半島珠洲市域の海岸線沿いに設定されている奥能登絶景海道は、能登半島最先端の岬「禄剛崎(ろっこうざき)」を境に、日本海に面した断崖地形特有の雄壮な絶景を味わえる「外浦」と、富山湾に面した波穏やかな「内浦」が共存している地域である。能登半島の形成にもかかわる地質の分布やそれに伴う地形の多様性は、この地域の観光や生活、文化に大きく影響している。また、令和6年能登半島地震においては、このような地形地質的特徴から、外浦では大規模な地すべり・斜面崩壊と海岸隆起(最新の海成段丘面)、内浦では津波、液状化被害が発生している。奥能登絶景海道の地形地質的特徴を明らかにし、景観・自然資源、歴史・文化資源、そして漁業などの生業との関係についてまとめる。
2. 「外浦」「内浦」の地形地質的特徴と景観資源、自然資源
 外浦はおもに新第三紀前期~中期中新世の安山岩、流紋岩、凝灰角礫岩、火砕岩が分布し、比較的硬質な岩盤であることと、地震活動に伴う隆起帯であることから、海岸に近接した急峻な崖(高低差50~100m規模)と階段状の海成段丘地形が発達する。景観資源としての「仁江海岸」や「木ノ浦海岸」は岩礁海岸であり、「禄剛埼灯台」や「椿展望台」は断崖上の高所に位置することからビュースポットとなる。自然資源については、急崖を海まで流れ落ちる「垂水の滝」、流紋岩の岩盤に空いた穴「窓岩」、岩礁地帯に出現する「ゴジラ岩」と冬の風物誌である「波の花」などがある。
 一方、内浦はおもに新第三紀前期中新世のデイサイト火砕岩類と後期中新世の珪質シルト岩および第四紀更新世中位段丘堆積物が分布し、部分的に急崖や岩礁地帯が見られるものの、多くは中位段丘地形と海岸平野・海浜からなり、ルートとしては比較的平坦な地形を通過することとなる。景観資源としての日本の渚・百選「鉢ヶ崎海岸」は白砂青松の海水浴場として知られ、海浜にはハマドクサ群落がみられる。自然資源の「能登双見」は荒々しい岩礁景観であり、「見附島」は珪質シルト岩などからなる成層した岩盤が露出し、島の形から別名「軍艦島」と呼ばれる。
3. 地形地質と文化、生業
1)揚げ浜式製塩
 外浦の大谷から仁江地区にかけては昔から塩の生産が盛んなところである。「塩田」と呼ばれる砂が敷き詰められた場所に仁江海岸の海水を汲み揚げることから「揚げ浜式」と呼ばれており、今から500年以上も前から継承されてきた伝統技法である。能登半島沖の日本海は暖流と寒流が混ざり合うポイントで、能登の海には多くの種類豊富なミネラルが含まれていることと、潮の流れが速く海水はキレイな状態を保っていることで、良質の塩を生産できる。
2)珪藻土七輪
 内浦に広く分布する珪質シルト岩(珪藻土岩を含む)は、細かな超多孔質構造を有し、「調湿性」という最大の特性と共に「脱臭性・耐火性」等の効果を発揮することより、古くから炭火を入れて使う七輪として、家の土壁の材料として、また漆器で有名な輪島塗の下塗材としても使用されている。坑道より切り出される「天然珪藻土岩」は、時に岩盤に筋や亀裂が入っていることもあり、その切り出し技術は、土を知り尽くした熟練職人の技でなければ難しい作業であることから、「珠洲市無形民俗文化財」に認定されている。
3)海産物と漁法
 外浦のおもな海産物は、岩礁地帯を採取場所として、サザエ、アワビ、岩海苔、海藻(ギバサ、カジメ、ワカメ、アオサ)などの採貝、採藻業やタコすかし漁が盛んである。また、沖合では底引き網、イカ釣り、刺し網による加能ガニ、香箱ガニ、ハタハタ、イカ類、メバル、タイなどの漁獲がある。富山湾に面する内浦は、比較的穏やかで深い海域が存在することから捕獲(定置網、刺し網、まき網)と養殖が盛んである。主な海産物はブリ、アジ、サバ、アンコウ、鱈、飯田湾沿岸の素潜りによる天然岩ガキなどの漁獲がある。
4. 地域資源の文化地質的解釈とその活用
 能登半島先端部に設定された日本風景街道「奥能登絶景海道」沿いの地域資源を、この地域の成り立ちと地形地質的特徴をもとに、文化地質的な視点での解釈を加えることで、その魅力をさらに充実させることができる。この地域の自然災害からの復興後の観光資源として、あるいはジオストーリーを構築することで、ジオツーリズムにおける震災遺構やジオサイトとして有用であると考える。