日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

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[O-07] 国連海洋科学の10年:SDG目標14の推進に向けた今後の展望

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原田 尚美(東京大学)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、斎藤 実篤(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、堀井 元章(文部科学省)、座長:原田 尚美(東京大学)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、斎藤 実篤(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、堀井 元章(文部科学省)


11:15 〜 11:30

[O07-09] 未知なる深海を開く -潜水船パイロットが見る世界-

★招待講演

*飯島 さつき1 (1.日本海洋事業株式会社)

キーワード:国連海洋科学の10年、夢のある魅力的な海、女性活躍、しんかい6500、深海

地球の表面の約70%を占める海は、私たち人類にとって最も身近な存在であるにもかかわらず、その大部分はいまだに謎に包まれている。特に、世界の海の約95%を占める水深200m以深の“深海”は、高い水圧(水深6500mで指先に軽自動車1台が乗るほどの圧力)による影響で調査すること自体容易ではない。深海は、「高圧」「低温」「暗黒」で餌資源に乏しいという過酷な環境下ながらも、独自の進化を遂げた特殊な生物・生態系が存在することや、海底下には地球の内部構造・過去の環境変遷・進化などを解明する為の貴重な情報が記録されている。これらを把握する事は、生物多様性・生態系を保護しつつ持続可能な海洋利用方法を考える上でも重要である。
深海調査は大きく分けて2種類の方法がある。一つは無人のロボットや観測機器を使い探査する方法、もう一つは潜水調査船を使い人間が現地に赴く方法。その中で私は、有人潜水調査船「しんかい6500」のパイロットとして調査研究のサポートを行っている。
パイロットといえば操縦士をイメージする方が多いと思うが、実際には整備や管制業務など職務内容は多岐に渡る。これらは安全かつ調査を成功させる為に必要な知識であり、日々変化する自然相手に知恵比べを行っている。また、船上で働く中で深海調査の現場について、本命の調査研究以外にも人材育成、異業種・異分野間のシナジー効果、協同体疑似体験など多様な役割を感じ、調査に身を投じる人々との交流を通して"海洋科学が人の心を豊かにする可能性"を感じるようなった。
深海は未知で課題も多い。専門分野・年齢・性別・国籍問わず様々な人が深海調査に携わる事で、問題解決に対する新たなアイディアや研究的発見があるのではないかと思う。国連海洋科学の10年の目的の一つである「夢のある魅力的な海」を実現する為には、映像資料、WEB教材、書籍含むアウトリーチ活動と並行して現場を体感する機会を増やすことが必要だと考える。
本講演では、最前線で携わる潜水調査船パイロットの視点から観た、未知なる深海の世界をご案内する。深海を含む海洋調査の魅力をお伝えするとともに、そこで目にした課題についても考察する。未知なる世界を開いた感動を共有し、未来に向けて「探求心」を刺激し育む機会になれば幸いである。