日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-07] 国連海洋科学の10年:SDG目標14の推進に向けた今後の展望

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原田 尚美(東京大学)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、斎藤 実篤(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、堀井 元章(文部科学省)、座長:原田 尚美(東京大学)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、斎藤 実篤(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、堀井 元章(文部科学省)


11:30 〜 11:45

[O07-10] 市民が海洋リテラシーを育むためにはどのような機会があればいいのか ~学校教育や社会教育の場でおこなわれている取り組み事例の紹介~

★招待講演

*今宮 則子1、都築 章子1 (1.特定非営利活動法人海の自然史研究所)

キーワード:海洋リテラシー、学校教育、学校外教育、学習機会

市民の海洋リテラシーを育むためには、年齢や学年に関係なく、異なる季節や場所で、さまざまな機会に海洋を知る入口が用意されていることが重要であろう。本発表では、これまでに国内外の小中学校や大学、社会教育施設などでの取り組みを体験し調査してきた中で知り得た「海洋を知る学びの機会、学びの入口づくり」として参考になると思われる事例を紹介したい。

1.学校教育とつながる事例
(1)ゲストティーチャーが学校に来て海の授業をしてくれる
海洋にかかわる研究者や教育実践者が教室に来て授業をしてくれることは、子どもたちにとって海洋への関心を高めるきっかけになるだろう。一方で、ゲストティーチャーをどのように探しコンタクトをとればいいのか、謝金や交通費などの費用負担をどうするかなどの懸案事項が学校側にはある。講師派遣をおこなう取り組み事例から、講師側と学校側の期待と課題を紹介する。
(2)校外学習で水族館などに行ったときに、生物を見るだけでない学習ができる
日本は世界有数の水族館大国だが、学校向けプログラムが用意されていて事前・事後学習もできる体制が整えられている館もあれば、そもそも水族館の入場料が高く学校行事での利用が難しいところもあり、学校教育との連携には地域差があるのが現実である。
ここでは、水族館が館内見学にとどまらない学習を企画した事例として、島根県立しまね海洋館アクアスと海研が市内の小学校の校外学習をサポートした実践を紹介する。
(3)海洋関連施設の理解者を育てる
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(The University of British Columbia)では、教職を目指す教育学部の学生の博物館実習の場として、水族館やビジターセンターが連携する取り組みがおこなわれていた。館のスタッフは、科学や美術の教員を目指す学生たちと連携することで、来館者とのコミュニケーションや展示の工夫、新しい企画開発などを進めることができる。学生にとっては、学んだことを実地で活かせるだけでなく、学校外の社会教育施設を知り、価値を理解する機会にもなり、将来教員になった際に校外学習先として連携が作りやすいというメリットもある。

2.学校外での学びを広げる事例
(4)興味を持った時に学習や研究をサポートしてくれる
科学館やビジターセンター内に調べものや観察・実験をする場所が開放されていて、スタッフが長期にわたりサポートする体制があれば、利用者は調査や研究を自分のペースで続けることができる。そうした施設の例として、ふなばし三番瀬環境学習館の取り組みを紹介する。
(5)進展中の海洋研究を垣間見ることができる
米国オレゴン州立大学ハットフィールド・マリンサイエンスセンター(Hatfield Marine Science Center, Oregon State University)では、学生の研究内容を展示することで、現在進行中の海洋研究を紹介している。実際に研究をしている学生たちが展示方法も考えて自分の研究内容を紹介している。一般の人には知る機会が少ない実際の研究現場の様子を写真で見たり、研究している学生から直接説明を受けたりできる場になっている。訪問者にとっては海洋研究の内容だけでなく、研究のプロセスに触れて研究者の仕事に興味を持つきっかけになる。学生にとっては社会に自分の研究を知ってもらうためのトレーニングの場としても機能している。

3.学校内外で海洋について伝えられる人を育てる事例
(6)海洋について教え・伝える人たちのスキルを高める
学校内外で海洋について教え・伝えるスキルを持った人たちが増えていくことは、海洋について学ぶ機会や入口を広げていくことにつながる。海研は、海洋科学コミュニケーション実践講座を開催してきているが、海上保安庁が各地の小学校などの要請により実施している環境教室に携わる職員を対象に、授業づくりと教え方のスキルを高めるための研修としてこの講座を毎年開催している。研修に参加した後、環境教室への苦手意識が軽減したり教え方のヒントを見つけられたりしたというフィードバックを得ており、環境教室の実施件数が増えるなどの効果を上げている。