日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-10] 【防災学術連携体共催】阪神・淡路大震災から30年-教訓と進展

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、松島 信一(京都大学防災研究所)、田村 和夫卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、座長:宮地 良典(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、田村 和夫卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)


15:45 〜 16:00

[O10-07] 震災復興過程におけるコミュニティ機能
-阪神・淡路大震災から近年の災害まで-

★招待講演

*福留 邦洋1 (1.岩手大学)

キーワード:阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、コミュニティ

災害発生直後に開設、運営される避難所は従前の地域コミュニティの有無が影響、反映されるといわれている。従前の地域コミュニティが災害発生直後の生活には不可欠との考えから避難所や応急仮設住宅の入居へ考慮された事例が存在する。コミュニティの存在、形成は発生直後だけでなく、その後の復旧、復興にも大きく影響する。
 1995年に発生した阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)では、被災した地域の復興にコミュニティ機能の有無が大きく影響した。阪神・淡路大震災では、まちづくり協議会を通して復興まちづくりの方向性、コミュニティのあり方などを考える機会となった。しかし、土地区画整理事業などの面的整備やマンションなど集合住宅の建て替えが大きな課題となったものの、これらの事業へ直接関わることができるのは所有者(権利者)のみであり、借家人は参加することができず、震災発生後に再建された建物には周辺地域から若い世代が転入する傾向が顕著となった。復興を通してコミュニティの構成に大きな変化が生じた。
 その後、2004年の新潟県中越地震においては、大規模な土砂災害などの発生により従前の集落で居住継続することが困難になり集団移転(防災集団移転促進事業)などが実施され、まとまって移転できた事例と分散する事例に分かれた。まとまって移転できた集落ではとりまとめしたリーダー役の人物と他の住民との間に強固な信頼関係など長年のコミュニティが形成されているがうかがわれた。一方、就業や親族との関係、自宅再建費用の問題などから分散した再建になる事例もみられた。2011年の東日本大震災では津波被災地を中心として集団移転、土地区画整理事業が実施され、従前の住宅や事業所を形成していたコミュニティは大きく変容した。2024年の能登半島地震においても同様の事象が懸念される。
 ところで、災害により被災地におけるコミュニティ機能が脆弱化するだけなく、災害発生後に新しく整備された住宅地や災害公営住宅における新しいコミュニティの構築が大きな問題である。まとまって集団移転が実現できた事例も例外ではない。災害発生から時間の経過とともに、世帯主の変更など世代交代や家族構成に変化が生じるからである。災害復興におけるコミュニティの形成、維持は、被災した従前地域と新しい地域の両方で求められている。
 こうしたコミュニティ力が試される機会として災害復興においては復興基金の利・活用があげられる。復興基金では、コミュニティの形成、維持を支援する事業メニューがある一方、事業メニューへ申請するためにはコミュニティ形成やコミュニティにおける情報共有、意思決定が必要となるものもみられた。
 今後の大規模災害を考慮するにあたり、これまでのコミュニティを維持するということだけでなく、新しいコミュニティの構築と発展をどのように進めるか事前防災、事前復興の一つとして検討することが重要である。