13:45 〜 15:15
[O11-P101] 高層ビルにおける風穴の有用性の検証
キーワード:都市環境、風穴、風洞実験
1. 研究背景と目的
高層ビルが立ち並ぶ都市において、ビル風は生活に影響を与えることで知られている。ビル風の対策の一環として、日本電気本社ビルに設置されているのが「風穴」である(図1)。しかし、風穴の効果について検証している先行研究は少なく、建設コスト面からも活用事例が乏しい。本研究では、地上を吹くビル風を軽減できることに加え、風穴を通り抜ける風を活用してエネルギーを生み出すことができる効果的な風穴の開発・提案を目的とし、その第一段階として風穴の効果について検証を行う。
2.実験方法
<実験Ⅰ>
日本電気本社ビルをモデルに300分の1の縮尺で作成した模型(27cm×27cm×60cm)でビル風を再現できているかを検証する。
ビル風の特徴として、(a)ビルの脇を吹く風が強くなる(b)下降流の発生の2点があげられる。その2つを検証内容とし、それぞれの観点で実験を行った。
(a)風速測定実験(図2)
この実験では模型と扇風機の距離を1.5mに設定した。模型の側面の風速を1分間、1秒間ずつ計60個のデータ取得を模型があるときとないときのそれぞれ5回行った。
(b)可視化実験(図3)
赤い印をつけた旗を模型正面に設置し1分間風を流して旗の様子を撮影した。
<実験Ⅱ>
風穴の位置による効果の違いを検証する。
①模型に5つの風穴(横:15cm 縦:5cm)を設置し、実験Ⅰ(a)と同様の計測を風穴の位置を変えて行った(図4)。
②①で効果が高いと考えられた風穴について、計測位置を変えて同様の計測を行った。模型の脇以外に模型の前、模型の裏の2つの測定位置を新たに加えた(図5)。
4. 結果・考察
<実験Ⅰ>
(a)風速測定実験(表1)
表は1回ごとの平均風速をまとめたものである。模型があることにより、ビル脇の風速が強くなっていることがわかった.
(b)可視化実験(図6)
写真は実際の旗の様子である。この結果から、図の緑矢印のような風の流れが考えられる。分析結果から、模型正面に当たった風は下から3分の2の位置で上下に分かれたことが推定される。ビル風の特徴として、ビル正面に当たった風はビルの下から3分の2の位置で上下に分かれる傾向があるため(風工学研究所.1989)、この結果は信頼性が高いといえる。
(a)(b)の結果より模型でビル風を再現できているといえる。
<実験Ⅱ>
図7~9は「平均風速差=(風穴があるときの風速)-(風穴がない時の風速)」を示しており、値が小さいほど風穴の効果が高いといえる。
《①ビルの脇での測定》(図7)
〇上部の風穴について
効果が見られなかった。実験I(b)の結果から3分の2より上の位置に吹いてくる風はビル脇に流れていかないため、一番上・上から2番目に風穴を設置しても効果は少ないからと考えられる。
〇下3つの風穴について
どの風穴でもビル脇の風を軽減できたことと、実験1(b)の結果から、下降流が風穴に通っていると考えられる。しかし、3つの風穴の効果のばらつきが上2つの風穴の風穴に比べて大きい。これは、下3つの風穴の効果には、扇風機の位置や角度、環境要因の誤差による下降流の変化が直接影響するからだと考えられる。
《②複数個所での測定》
①で効果が高いと考えられた下3つの風穴について、模型の前と模型の裏でも同様の計測を行った。
模型の前での計測(図8)では、どの風穴を開けた時もビル風を軽減できていることが分かった。一方で、模型の裏での計測(図9)では、どの風穴をあけたときも、ビルの裏に風発生していることがわかる。一番下の風穴を開けた時に、模型の裏を吹く風は最も強くなった。この風は、風穴を通った風が直接模型の裏に吹くために発生するものであり、地面に近い位置に風穴を設置すると、模型の裏を吹く風がより強くなるのだと考えられる。
5. 結論及び今後の展望
風穴があることにより、地上の人に影響を与えるビル風を軽減することができると考えられる。しかし、風の吹き方の小さな誤差で、風穴の効果に差がでる。また、風穴を開ける位置によって、ビルの裏に新たに風が吹くことになるため、設置する際は建物周辺の環境などを考慮して最適な風穴の位置を検討する必要がある。
今後は、防風効果を維持しつつ、集風効果を高めて風穴を通る風を活用できる風穴の構造を検討する。最終的に、風穴による防風や活用によるメリットと構造・設置上のデメリット(費用がかかる、風穴の体積分、日本電機本社ビルの場合約48000m3の建物内の空間が使えない等)を比較し、コストパフォーマンスの面から実用性を考察したい。
引用文献
・風工学研究所.『ビル風の基礎知識』.鹿島出版会.2005,p184
・超高層ビル情報.「NEC本社ビル - FC2」.http://toolbiru.web.fc2.com/cj4n/d-data-n15.htm,(2024/12/03)
・HEXAGON.「建築デザイナー必見!ビル風コラム 第6回:「ビル風1」:強風現象と乱流現象」.https://www.cradle.co.jp/media/column/a90,(2024/12/03)
・日本電気本社ビル/日本の超高層ビル https://skyskysky.net/building-japan/13tokyo/03/066.html ,(2024/12/03)
・吉田正昭.実務面より見たビル風問題.日本風工学会誌.1990,44,p.43-52
高層ビルが立ち並ぶ都市において、ビル風は生活に影響を与えることで知られている。ビル風の対策の一環として、日本電気本社ビルに設置されているのが「風穴」である(図1)。しかし、風穴の効果について検証している先行研究は少なく、建設コスト面からも活用事例が乏しい。本研究では、地上を吹くビル風を軽減できることに加え、風穴を通り抜ける風を活用してエネルギーを生み出すことができる効果的な風穴の開発・提案を目的とし、その第一段階として風穴の効果について検証を行う。
2.実験方法
<実験Ⅰ>
日本電気本社ビルをモデルに300分の1の縮尺で作成した模型(27cm×27cm×60cm)でビル風を再現できているかを検証する。
ビル風の特徴として、(a)ビルの脇を吹く風が強くなる(b)下降流の発生の2点があげられる。その2つを検証内容とし、それぞれの観点で実験を行った。
(a)風速測定実験(図2)
この実験では模型と扇風機の距離を1.5mに設定した。模型の側面の風速を1分間、1秒間ずつ計60個のデータ取得を模型があるときとないときのそれぞれ5回行った。
(b)可視化実験(図3)
赤い印をつけた旗を模型正面に設置し1分間風を流して旗の様子を撮影した。
<実験Ⅱ>
風穴の位置による効果の違いを検証する。
①模型に5つの風穴(横:15cm 縦:5cm)を設置し、実験Ⅰ(a)と同様の計測を風穴の位置を変えて行った(図4)。
②①で効果が高いと考えられた風穴について、計測位置を変えて同様の計測を行った。模型の脇以外に模型の前、模型の裏の2つの測定位置を新たに加えた(図5)。
4. 結果・考察
<実験Ⅰ>
(a)風速測定実験(表1)
表は1回ごとの平均風速をまとめたものである。模型があることにより、ビル脇の風速が強くなっていることがわかった.
(b)可視化実験(図6)
写真は実際の旗の様子である。この結果から、図の緑矢印のような風の流れが考えられる。分析結果から、模型正面に当たった風は下から3分の2の位置で上下に分かれたことが推定される。ビル風の特徴として、ビル正面に当たった風はビルの下から3分の2の位置で上下に分かれる傾向があるため(風工学研究所.1989)、この結果は信頼性が高いといえる。
(a)(b)の結果より模型でビル風を再現できているといえる。
<実験Ⅱ>
図7~9は「平均風速差=(風穴があるときの風速)-(風穴がない時の風速)」を示しており、値が小さいほど風穴の効果が高いといえる。
《①ビルの脇での測定》(図7)
〇上部の風穴について
効果が見られなかった。実験I(b)の結果から3分の2より上の位置に吹いてくる風はビル脇に流れていかないため、一番上・上から2番目に風穴を設置しても効果は少ないからと考えられる。
〇下3つの風穴について
どの風穴でもビル脇の風を軽減できたことと、実験1(b)の結果から、下降流が風穴に通っていると考えられる。しかし、3つの風穴の効果のばらつきが上2つの風穴の風穴に比べて大きい。これは、下3つの風穴の効果には、扇風機の位置や角度、環境要因の誤差による下降流の変化が直接影響するからだと考えられる。
《②複数個所での測定》
①で効果が高いと考えられた下3つの風穴について、模型の前と模型の裏でも同様の計測を行った。
模型の前での計測(図8)では、どの風穴を開けた時もビル風を軽減できていることが分かった。一方で、模型の裏での計測(図9)では、どの風穴をあけたときも、ビルの裏に風発生していることがわかる。一番下の風穴を開けた時に、模型の裏を吹く風は最も強くなった。この風は、風穴を通った風が直接模型の裏に吹くために発生するものであり、地面に近い位置に風穴を設置すると、模型の裏を吹く風がより強くなるのだと考えられる。
5. 結論及び今後の展望
風穴があることにより、地上の人に影響を与えるビル風を軽減することができると考えられる。しかし、風の吹き方の小さな誤差で、風穴の効果に差がでる。また、風穴を開ける位置によって、ビルの裏に新たに風が吹くことになるため、設置する際は建物周辺の環境などを考慮して最適な風穴の位置を検討する必要がある。
今後は、防風効果を維持しつつ、集風効果を高めて風穴を通る風を活用できる風穴の構造を検討する。最終的に、風穴による防風や活用によるメリットと構造・設置上のデメリット(費用がかかる、風穴の体積分、日本電機本社ビルの場合約48000m3の建物内の空間が使えない等)を比較し、コストパフォーマンスの面から実用性を考察したい。
引用文献
・風工学研究所.『ビル風の基礎知識』.鹿島出版会.2005,p184
・超高層ビル情報.「NEC本社ビル - FC2」.http://toolbiru.web.fc2.com/cj4n/d-data-n15.htm,(2024/12/03)
・HEXAGON.「建築デザイナー必見!ビル風コラム 第6回:「ビル風1」:強風現象と乱流現象」.https://www.cradle.co.jp/media/column/a90,(2024/12/03)
・日本電気本社ビル/日本の超高層ビル https://skyskysky.net/building-japan/13tokyo/03/066.html ,(2024/12/03)
・吉田正昭.実務面より見たビル風問題.日本風工学会誌.1990,44,p.43-52
