日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P103] 高高度発光現象スプライトの統計的分析

*柏木 南々葉1、*石村 未南桃1、松本 拓真1、中村 莉玖1 (1.高知県立高知小津高等学校)

キーワード:スプライト、高高度発光現象、統計的分析

1.研究の背景と目的
 高高度発光現象とは高度約50〜100kmの中間圏において雷に伴っておこる発光現象で、その一種であるスプライトはおもに高度約50〜90kmで発生する。上空の陰イオンに由来し、雷雲上部の正電荷と地表の負電荷間で放電する正極性落雷によって発生する場合が多い。日本で多く観測されるのは冬季の若狭湾周辺であり、本校は2006年度に高知工科大学と共同で高高度発光現象に関する広域コンソーシアムを立ち上げてから、全国32の高校、2の大学とその周辺の高高度発光現象を共同観測し続けている。これは世界最大の観測ネットワークである。以降、2022年度までにのべ6512件のスプライトを含む高高度発光現象を観測している。そのうち660件以上の観測データは複数の高校からの同時観測であり、発生位置と高度を分析することができる。そしてスプライトには発生地点の地形との関係や起こる条件など、まだ詳しくわかっていないことが多い。そこで私たちは今までの蓄積データである同時観測イベントについて統計的に分析し、若狭湾周辺を中心とした日本海近郊のスプライトの発生位置や高度(上端・下端)、地理的条件との相関などを検証したいと考え、本研究を行った。
2.方法
 2-1撮影方法
 観測にはCCDカメラWatec WAT-100N(超高感度白黒カメラ)を使用し、UFO Capture HD2 (動体感知ソフト)によって発光の前後の動画を自動的にパソコンに記録している。分析ソフトであるUFO Analyzer V2は1観測地点からのスプライトの位置を分析するソフトで、ここではスプライトの高度は推定値を使用している。また、Sprite Analyzeは2観測地点以上からみたスプライトの位置を分析するソフトである。これらでは観測した画像に映り込んだ恒星と、スプライトの相対位置からスプライトの発生場所を特定することができる。
 2-2分析方法
 まず、共同観測校と同時観測に成功したデータを抽出した。2点観測以上の同時観測は約500件であった。今回使用したデータ(図1)はこのうち、分析用データがそろっていること、スプライトの上端、下端が認識できることを満たしたイベント73件(画像データ162件)である。次にUFO Analyzer V2を使用しそれぞれスプライトの座標を求めた。この際スプライトの上端を80km、下端を70kmと仮定し、方位角と仰角を概算した。さらにこの分析データをSprite Analyzerにかけ、スプライトの発生高度を推定せずに、発生位置と高度を算出した。こうしてスプライトの発生地点や上端・下端を調べた。
3.結果
 3-1各校の観測状況
 総観測数は6616件であり、年度別でみると直近5年間のうちでは令和1年度が最も多く391件であり、その後減少している。高校別でみると香川県立三本松高校が最も多く計2237件で全体の31%を占め、次いで静岡県立磐田南高校が計1885件で全体の28%であった。また、本校(高知県立高知小津高校)の観測数は計412件で兵庫県立神戸高校に次ぎ全体の4番目で6%であった。(図2)
 3-2 2点間観測と3点間観測での精度比較
 2点間観測と3点間観測での分析結果を比較すると緯度差・経度差は共に約±0.15度、上端差は約±6㎞、下端差は約±4.5㎞であった。
 3-3データ分析結果
 スプライトの発生位置を地図上にプロットした結果を図3に示す。発生位置は沿岸部付近に集中している。スプライトの発生高度は上端高度平均は約80㎞、下端高度平均は約70㎞である(図4)。また、上端と下端の相関係数は0.193であり相関は認められなかった(図5)。そして上端高度は緯度が高いほど高い傾向にあり(図6)、下端にはそのような傾向は見られなかった(図7)。
4.考察と今後の課題
 スプライト発生場所が沿岸部に集中していたのは、大陸から吹いてくる冬季の冷たい風が日本海沿岸の山地にぶつかることでスプライトが発生しやすい正極性落雷を引き起こすような規模の大きい雷雲が発生しやすいことを如実に表していると考える。また上端の高度は緯度が高いほど高い傾向にあったがその原因は今後考察を深めていく。スプライトの上端・下端の差は相関がないことが分かったがスプライトの種類や場所などの要因を考えていないため今のところは何も言えることがない。今回の分析ではスプライトの高度や落雷地点、最大発光地点との関係の分析まで進んでいないため、分析をさらに進めていきたい。


5.参考文献
清水裕河崎善一郎(2004).「1.雷放電とは―雷放電の物理―」.J.Plasma Fusion Res.Vol.80,No.7(2004).589-596
中村貴弘ら(2004).「北陸冬季雷に伴う中間圏発光現象とその原因となる雷放電特性」.電学論B,124巻8号,2004年.1012-1020清水裕士 (2016 ). フリーの統計分析ソフトHAD:機能の紹介と統計学習・教育.研究実践における利用方法の提案  メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 59-73.
tree-maps(2017).「複数の緯度経度を一気にプロットするWEB TOOLです | tree-maps」.https://www.tree-maps.com.2024年11月14日