日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P106] 海岸砂中のマイクロプラスチックの空間分布・時間分布の解明 〜マイクロプラスチック問題を自分ごとにする教材の開発〜

*野田 百花1 (1.東京学芸大学附属高等学校)

キーワード:マイクロプラスチック、空間分布、時間分布、教材化、ナイルレッド

1. 目的
 近年,マイクロプラスチック(MPs)による国際的な海洋汚染が問題となっている。海洋ごみ問題を自分ごととして捉えるため,関東の身近な海岸におけるMPsによる汚染被害の状況を調べることにした。本研究では,高校生でも簡単に実践できるMPs検出法を確立し,MPsの空間分布と時間分布の両方から分析する。さらに,研究成果を本校の地学基礎の授業に取り入れ,生徒のMPs問題への関心向上に役立てる。

2. 方法
2-1. サンプリング方法
 空間分布と時間分布について,本研究では図1のように定義する。

2-1-1. 実地調査①
 2024年7月11日,千葉県柳島海岸の4地点と,東京都葛西臨海公園の11地点で,海岸の地表から20cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した(図2参照)。海岸線に対して水平方向に地点を設定した。砂サンプルは,1地点につき10cmごとの2サンプルに分類した。

2-1-2. 実地調査②
 2024年11月23日,東京都葛西臨海公園の10地点で,地表から深さ30cmまでの砂サンプルを検土杖で採取した。海岸線に対して垂直・水平方向の双方を確認できるように10地点を設定した。砂サンプルは,1地点につき10cmごとの3サンプルに分類した。

2-2. 染色方法
 染色の前に砂サンプルに含まれるMPsの分離と精製を行った。比重が2.3g/cm3である飽和炭酸カリウム水溶液を重液に用いて,超音波機で振動を与え,比重分離を行った。大部分の堆積物を取り除き,MPsを含む上澄みを回収した。上澄みを濾過し,濾紙に残ったMPsをナイルレッド染色液で染色した。

2-3. 蛍光観察
 暗室で青色LEDを照らしながら,赤色フィルターを通して肉眼で観察した。発光するMPs粒子があるかどうかを目視で確認し,その個数を記録した。

2-4. 教材化
 2024年2月26日から3月6日にかけて,本校1年生の3クラスを対象に,計2時間の染色実験と発光観察を体験する授業を行った。授業を受けた生徒に,授業評価アンケートを実施した。

3. 結果
3-1. 実地調査①
 MPsの発光の有無を確認したところ,柳島海岸で4地点のうち0地点,葛⻄臨海公園で11地点のうち7地点で発光が確認された(図3参照)。海岸線に対して水平方向に採取地点を設定したため,空間分布に関する議論が困難であった。また,ボーリング調査の深さが不十分であったため,時間分布に関する議論が困難であった。

3-2. 実地調査②
  実地調査①より葛西臨海公園でMPsを観察できたため,葛西臨海公園の10地点で採取を行った。空間分布において,水平方向の分布について,調査地点を海側,中間,内陸側に分けると,地点Bでは海岸でMPsの個数が一番多かったが,地点A,C,Dには,中間がMPsの個数が一番多いという傾向が見られた。一方,鉛直方向の分布について,0cm〜10cm区間がMPsの個数が一番多い地点が多かった。

4. 考察
 実地調査①より,葛西臨海公園と柳島海岸は共に流域に人口が多い河川の河口周辺であるが,葛西臨海公園の方が多くのマイクロプラスチックが観察された。葛西臨海公園は観光地として利用者が多いため,マイクロプラスチックが多くなった可能性が考えられる。
 実地調査②より,空間分布に関して,地点ごとに異なる傾向が見られた。水平方向の分布について,調査地点を海側,中間,内陸側に分けると,異なる傾向が見られた(図5参照)。地点A,C,Dでは中間で最も多くのMPsが観察され,地点Bでは海側で最大値を示した。地点A,C,Dでは,内陸から海岸に向かう作用と海岸から内陸に向かう作用の双方が均衡したため,中間部分にMPsが集積したと考えられる。一方,地点Bでは,海岸から内陸へ向かう作用が内陸から海岸への作用を上回ったことにより,海岸部分にMPsが多く分布したと推測される。
 時間分布に関して,結果より,0cm~10cmで最も多くのMPsが観察されたことから,海水より比重の小さい,表層に浮上しやすい性質を持つMPsが多いと考えられる。一方で,海岸部分の0cm~10cmの層ではMPsの個数が分散しているが,10cm~20cm,20cm~30cmの層では個数の変動が少ないことから,表層部分で波の影響を受けたことで,MPsが一時的に移動したとも考えられる。鉛直分布を時間分布とみなすためには,より深度の大きいサンプルとの比較が必要であると考えられる。

5. 結論
 実地調査①より,柳島海岸と比較して葛西臨海公園は表層のMPs量が多いことがわかった。実地調査②より,葛西臨海公園の空間分布は,海岸線に平行に海側・中間・陸側の三つに分類したとき,中間に最も多くMPsが堆積していた。表層の鉛直分布としては,地表から10cmの層で最もMPsが堆積していたが,波の影響で比重の軽いMPsが浮上した可能性があるため,鉛直分布を時間分布とみなすためには,より深度の大きい砂サンプルを採取する必要がある。