13:45 〜 15:15
[O11-P107] 宇宙線μ粒子を用いた校舎構造の推定
キーワード:ミュオグラフィ、Cosmic Watch、同時測定法
1. 背景と目的
1-1. 背景
●宇宙線
宇宙線とは、宇宙を飛び交っている高いエネルギーを持つ粒子を指す。宇宙線の原因として、超新星爆発や太陽の核融合が挙げられる。宇宙線が地球の大気と衝突すると、相互作用を起こして大量の粒子が生成され、地上に降り注ぐ。これを二次宇宙線という。本研究には、この二次宇宙線に含まれるμ粒子を用いた。
●ミュオグラフィ
二次宇宙線は、自然放射線で放射線源を調達しやすい。また、μ粒子は、二次宇宙線の中でもものを通り抜ける力(=透過力)が強い。この2点から、μ粒子を使って火山やピラミッド、古墳などの大規模な構造物を透視する技術が発達した。これをミュオグラフィという。
1-2. 先行研究
ミュオグラフィは普通、大規模な構造のものに使われるが、これを高校の校舎に活用しようと試みたのが、先行研究[1]の「ミュオグラフィによる校舎内構造の把握」である。先行研究は、部屋の四方にμ粒子検出器CosmicWatchを向け、μ粒子の検出頻度と遮蔽物の面密度を比較したものである。
1-3. 目的
本研究では先行研究を踏まえて、本校校舎の垂直方向の厚みを推定することを目的とした。
2. データおよび解析方法
2-1. 本研究に用いた機器について
本研究にはμ粒子検出器CosmicWatchを用いた。CosmicWatchは、μ粒子を検出する媒体としてプラスチックシンチレータを用いている。シンチレータとは、電気を帯びている粒子が通過すると発光する物質のことを指す。プラスチックシンチレータは、シンチレータの中でも発光の継続時間が短いため、μ粒子のような大量に降り注ぐ物質の測定に適している。μ粒子が通過してこれが発光すると、SiPMと呼ばれる機器が光を感知し電気信号に変換する。この信号をパソコンで収集、解析した。
2-2. 実験手順
実験方法は次の通りである。
① μ粒子検出器CosmicWatchを校舎各階の鉛直同位置に設置し観測を行った。この際、1台測定、2台測定の2パターンで実験を行なった。2台測定では、CosmicWatch2つを同時に通過したμ粒子のみが記録される。
② μ粒子のみのデータを得るために、先行研究[2]にならい、ADC値つまり信号の強さ200以下のデータを削除してこの後の分析を行なった。
③ 時刻と総検出回数の相関を見た。
④ 各階の100秒毎の到来頻度平均値を出した。
⑤ ④を1台測定と2台測定でまとめ、グラフにして階数と各検出回数の相関を見た。
3. 結果
結果は添付した画像のようになった。どちらの測定方法でも階が下がるにつれて到来頻度が減少していくことが示唆されたが、このデータからの厚みの推定は難しいと考えられた。
4. 考察と今後の課題
今回の実験の欠点として、このデータだけでは校舎天井や床の厚みの推定は困難という点が挙げられる。そのため、追加して校舎の面密度を調べるために校舎の材質や厚みの設計図・実測値からの計算や、構造物の材質・厚みと検出頻度の相関を調べる基礎的な実験が必要と考えられる。また、遮蔽物に設定した校舎の壁が薄く、調査対象として適切ではなかった可能性を考慮し、別の校舎構造を利用する実験も行いたい。
謝辞
本研究を進めるにあたり、μ粒子検出器をお貸しいただくとともに、多大なご協力を頂いた加速キッチン合同会社の田中香津生先生に、厚く御礼申し上げます。またメンターとしてご助言いただいたUniversity of California, Berkeley department of mathematics and physical scienceの新井琴乃氏に、深謝の意を表します。
最後に、実験を進めるにあたり、実験場所を快くご提供いただいた本校の先生方に、御礼申し上げます。ありがとうございました。
参考文献
[1] 稲見颯大,藤井駿,山谷優衣, 渡辺利玖, 熊谷洸希,田中香津生, 藤井翼,“ミュオグラフィによる校舎内構造の把握“,2024-01-19,
https://drive.google.com/file/d/1qFiyRygDnasaNetOlGZLHUeiXXgY0RR5/view(参照 2024-06-13)
[2] 平悠人、帆足莉子,“富士山での宇宙線観測~Cosmic watchによる連続的な測定~” , 2024-09-29,
https://accel-kitchen.com/cosmicray/#detector-development,(参照 2024-09-29)
1-1. 背景
●宇宙線
宇宙線とは、宇宙を飛び交っている高いエネルギーを持つ粒子を指す。宇宙線の原因として、超新星爆発や太陽の核融合が挙げられる。宇宙線が地球の大気と衝突すると、相互作用を起こして大量の粒子が生成され、地上に降り注ぐ。これを二次宇宙線という。本研究には、この二次宇宙線に含まれるμ粒子を用いた。
●ミュオグラフィ
二次宇宙線は、自然放射線で放射線源を調達しやすい。また、μ粒子は、二次宇宙線の中でもものを通り抜ける力(=透過力)が強い。この2点から、μ粒子を使って火山やピラミッド、古墳などの大規模な構造物を透視する技術が発達した。これをミュオグラフィという。
1-2. 先行研究
ミュオグラフィは普通、大規模な構造のものに使われるが、これを高校の校舎に活用しようと試みたのが、先行研究[1]の「ミュオグラフィによる校舎内構造の把握」である。先行研究は、部屋の四方にμ粒子検出器CosmicWatchを向け、μ粒子の検出頻度と遮蔽物の面密度を比較したものである。
1-3. 目的
本研究では先行研究を踏まえて、本校校舎の垂直方向の厚みを推定することを目的とした。
2. データおよび解析方法
2-1. 本研究に用いた機器について
本研究にはμ粒子検出器CosmicWatchを用いた。CosmicWatchは、μ粒子を検出する媒体としてプラスチックシンチレータを用いている。シンチレータとは、電気を帯びている粒子が通過すると発光する物質のことを指す。プラスチックシンチレータは、シンチレータの中でも発光の継続時間が短いため、μ粒子のような大量に降り注ぐ物質の測定に適している。μ粒子が通過してこれが発光すると、SiPMと呼ばれる機器が光を感知し電気信号に変換する。この信号をパソコンで収集、解析した。
2-2. 実験手順
実験方法は次の通りである。
① μ粒子検出器CosmicWatchを校舎各階の鉛直同位置に設置し観測を行った。この際、1台測定、2台測定の2パターンで実験を行なった。2台測定では、CosmicWatch2つを同時に通過したμ粒子のみが記録される。
② μ粒子のみのデータを得るために、先行研究[2]にならい、ADC値つまり信号の強さ200以下のデータを削除してこの後の分析を行なった。
③ 時刻と総検出回数の相関を見た。
④ 各階の100秒毎の到来頻度平均値を出した。
⑤ ④を1台測定と2台測定でまとめ、グラフにして階数と各検出回数の相関を見た。
3. 結果
結果は添付した画像のようになった。どちらの測定方法でも階が下がるにつれて到来頻度が減少していくことが示唆されたが、このデータからの厚みの推定は難しいと考えられた。
4. 考察と今後の課題
今回の実験の欠点として、このデータだけでは校舎天井や床の厚みの推定は困難という点が挙げられる。そのため、追加して校舎の面密度を調べるために校舎の材質や厚みの設計図・実測値からの計算や、構造物の材質・厚みと検出頻度の相関を調べる基礎的な実験が必要と考えられる。また、遮蔽物に設定した校舎の壁が薄く、調査対象として適切ではなかった可能性を考慮し、別の校舎構造を利用する実験も行いたい。
謝辞
本研究を進めるにあたり、μ粒子検出器をお貸しいただくとともに、多大なご協力を頂いた加速キッチン合同会社の田中香津生先生に、厚く御礼申し上げます。またメンターとしてご助言いただいたUniversity of California, Berkeley department of mathematics and physical scienceの新井琴乃氏に、深謝の意を表します。
最後に、実験を進めるにあたり、実験場所を快くご提供いただいた本校の先生方に、御礼申し上げます。ありがとうございました。
参考文献
[1] 稲見颯大,藤井駿,山谷優衣, 渡辺利玖, 熊谷洸希,田中香津生, 藤井翼,“ミュオグラフィによる校舎内構造の把握“,2024-01-19,
https://drive.google.com/file/d/1qFiyRygDnasaNetOlGZLHUeiXXgY0RR5/view(参照 2024-06-13)
[2] 平悠人、帆足莉子,“富士山での宇宙線観測~Cosmic watchによる連続的な測定~” , 2024-09-29,
https://accel-kitchen.com/cosmicray/#detector-development,(参照 2024-09-29)
