日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P109] 鉱物鑑定における色覚特性への補助の提案

*山田 梨紗1 (1.南山高等学校女子部)

キーワード:鉱物鑑定、色覚多様性、表記法の提案

1.背景
鉱物の鑑定においては、色彩の識別が重要な手がかりとなる場合が多い。しかし、色の認識は観察者の主観と視覚的特性に依存するため、個人差が生じやすい情報である。特に色覚多様性を持つ人にとっては、うまく情報を利用できないことがある。実際に以前私が行った鉱物観察において、色覚多様性を有する人が、輝コバルト鉱上に生じたコバルト華の淡いピンク色を識別できず、鑑定に支障をきたす場面が見られた。また色覚多様性の有無に関わらず、鉱物の肉眼鑑定において色という特徴は「菱マンガン鉱の赤色よりはオレンジ色に近いから別の鉱物のようだ」というような観察者の経験に依存するものとなっている。これらの経験は、色の認識が色名という経験や個人の主観に依存する方法ではなく、客観的な方法で共有される必要性を強く示すものであった。そこでこれらの課題に対処する方法として、鉱物のRGB値を用いた数値化を思い立った。

2.目的
本提案の目的は、色覚多様性の有無にかかわらず、鉱物の色彩情報を正確かつ客観的に共有できる手法を検討することである。従来の視覚印象によった表現に代わり、数値を利用することで、色彩に関する情報伝達の精度向上を目指す。この提案が実現されることによって色覚多様性を持つ人が肉眼鑑定を行う際の障害を減らすことができ、体験の平等化に繋がる。またこれまで観測者の主観の基づいていた指標を数値化できるため、微妙な色差を客観的に表現でき、色による肉眼鑑定を容易かつ明瞭なものにできる。

3.提案
色彩のデジタル表現においては、RGB値をはじめとする数値パラメータによって、色を明確に表現し再現することが可能である。これにより、肉眼の印象に依存せず、一定の基準で色彩を記述することが可能となる。一方で、当てる光の種類によって同一の物体が異なる色に映ることも無視できない問題である。たとえば、白色光下では薄い黄色に映る物体が、橙色光下では濃い山吹色に映るといった見かけの変化が実際に観察される。このように光のカラーピッカー等のツールで取得された色が、実際の視覚的印象と乖離する場合がある。そこで当てた光の色の補正方法として、イラスト制作における色の塗り方を応用することを提案する。イラスト制作において、目やカメラ越し見えている色は「物体固有の色」に「光の色」が加わった結果だと考えられている。今回は鉱物が持つ本来の色に照明などの光の色が乗算という方法で混ざっていると仮定し、その仮定に基づいて補正方法を考えた。ここでいう乗算とは2色を混ぜるとき、RGB値の各パラメータを0.0〜1.0の数値に直して掛け算する処理である。具体的な手順は、まず光の色を示す白板と鉱物を同時に撮影する。次にibisPaintのようなイラスト編集アプリで、画像から白板部分の色情報を取得する。そしてその色をもとに乗算の影響を取り除く除算レイヤーを作成し、画像全体の色情報を補正するというものである。この方法によって画像に乗算された光の色を取り除くことができ、物体固有の色を表すことができると考えられる。結果として、鉱物の色をより正確に数値化できることが期待される。

4.今後の展望
まず異なる照明環境下における鉱物の色彩変化を数値的に記録し、データと観察者の主観的な色の印象との間にどのような乖離があるかを分析し、方法の改良をする必要があるため実験を行いたい。
また、色覚多様性を持つ協力者からのフィードバックを通じて、本提案の手法が多様な視覚特性に対して有効かどうかを検証したい。
さらに現在、鉱物の表面状態や光沢の違いが色の取得や認識に与える影響について十分に考慮できていない。この点についても今後の課題として取り上げたい。現時点では環境色補正後に画像内で最も彩度の高い部分を抽出するなどの方法が有効と考えているが、まだ具体的な検討には至っていない。
最終的には、より現実的かつ実用的な鉱物鑑定支援の方法論を確立することを目標としている。

5.まとめ
鉱物鑑定において、色は有効な情報源である一方で、観察者の視覚特性や環境要因に大きく左右されるという課題がある。本研究は、色覚多様性を持つ人々を含め、誰もが共通して参照可能かつ環境に影響されない色彩表現手法の構築を目的とし、デジタル数値による新たな表現を提案するものである。今後の実証を通じて、より現実的な鉱物鑑定支援の実現を図っていきたい。

謝辞
今回の学習に協力していただいた方々に御礼申し上げます。ありがとうございました。