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[O11-P110] 現地調査に基づく火口湖の水理特性の解明 ― 伊豆諸島三宅島大路池の例 ―
キーワード:火口湖、水理特性、三宅島
大路池は伊豆諸島三宅島南部に位置する約2500年前のマール(津久井ほか,2005)にできた海水との交流はない(新井ほか,1977)湖沼である(図1).新井ほか(1977),新井(1978),青木ほか(1984)は大路池で地表からの河川による水の流出入はないと報告し,大路池は地下水の露頭である(図2)と示唆した.また小寺ほか(2014),佐藤ほか(2020)は大路池をはじめとする三宅島の陸水の水質に関して火山の影響を受けていることを示唆した.
本研究は大路池を基に火口湖への水の供給方法をはじめとする水理特性を解明することを目的とした.
2024年1月17日,7月31日,2025年2月23日,24日に大路池で6地点の採水地点を設定(図1)し,水質調査を行い,気温,水温,pH,電気伝導度,Na+濃度を測定し,気温と水温の定点観測を行った(図3).また2025年2月23日には自作した採水器(図4)を使用して,池の底層での水質調査も行った.
その結果,2024年1月はどの時間帯も北西部で他地点より高水温,低イオン値となった(図5~7).7月は各地点間で一様な分布となった(図5~7). 2025年2月23日午前は北西部で高水温,低イオン値となり(図8~10),23日午後は各地点間で一様な分布となり(図11~13),24日は北西部で高水温,低イオン値となった.また池の底層において表層と比べ,pHと電気伝導度はほとんど同じ値で,水温は約0.3℃小さかった(表1).
本研究は大路池と同じように閉塞湖でかつ火口湖であることから,比較として摩周湖を選んだ. 摩周湖は北海道東部に位置する約7000年前の噴火によって形成されたカルデラ湖で,湖底から高温,高イオン値の湧水が湧出している(野尻ほか,1990;国立環境研究所ほか,2004)ことに起因して,底層で高水温,高イオン値が観測されている(図14).このことから摩周湖は特に底層で湧水による水質への影響を受けている湖沼の例であると考えられ,また大路池北西部は表層で摩周湖のように湧水の影響を受けていると考えられる.加えて土(2017)は富士山において地下水が溶岩流のクリンカー部を通り,被圧されながら山体を下ることで湧水として溶岩流末端から湧出することを明らかにしている(図15).
摩周湖及び富士山の溶岩流末端からの湧水の事例から大路池北西部において観測された高水温,低イオン値は9世紀に島中央部にある雄山から流れ出た玄武岩質溶岩流の内部を地下水が通り,池に流入したことが原因として考えられる(図16).
今後はその他の火口湖との比較を通して火口湖一般の水理特性を解明していきたいと考えている.
参考文献
青木滋ほか(1984)三宅島火山島の地下水.火山第2集第29号(1984),三宅島噴火特集号
アジア航測株式会社,赤色立体地図
新井正ほか(1972)伊豆三宅島,大路池および新澪の測深図.地理学評論
新井正ほか(1977)三宅島の陸水について. 陸水学雑誌
新井正(1978)三宅島・大路池の水収支.地理学評論
小寺浩二ほか(2014)名水を訪ねて(106)伊豆諸島の名水. 地下水学会誌
佐藤篤来ほか(2020)三宅島における火山活動の影響を考慮した水環境の変化に関する研究(1). 2020年度日本地理学会春季学術大会講演要旨集
地質図Navi.三宅島火山地質図.産業技術総合研究所地質調査総合センター
津久井雅志ほか(2005)三宅島火山地質図.独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター,火山地質図12,三宅島火山
土隆一(2017)富士山の地質と地下水流動.地学雑誌
独立行政法人国立環境研究所(2004).摩周湖モニタリングデータブック
野尻幸宏ほか(1990)摩周湖湖水の水温,電導度,溶存化学成分の分布と湖水混合の推定.国立公害研究所研究報告
本研究は大路池を基に火口湖への水の供給方法をはじめとする水理特性を解明することを目的とした.
2024年1月17日,7月31日,2025年2月23日,24日に大路池で6地点の採水地点を設定(図1)し,水質調査を行い,気温,水温,pH,電気伝導度,Na+濃度を測定し,気温と水温の定点観測を行った(図3).また2025年2月23日には自作した採水器(図4)を使用して,池の底層での水質調査も行った.
その結果,2024年1月はどの時間帯も北西部で他地点より高水温,低イオン値となった(図5~7).7月は各地点間で一様な分布となった(図5~7). 2025年2月23日午前は北西部で高水温,低イオン値となり(図8~10),23日午後は各地点間で一様な分布となり(図11~13),24日は北西部で高水温,低イオン値となった.また池の底層において表層と比べ,pHと電気伝導度はほとんど同じ値で,水温は約0.3℃小さかった(表1).
本研究は大路池と同じように閉塞湖でかつ火口湖であることから,比較として摩周湖を選んだ. 摩周湖は北海道東部に位置する約7000年前の噴火によって形成されたカルデラ湖で,湖底から高温,高イオン値の湧水が湧出している(野尻ほか,1990;国立環境研究所ほか,2004)ことに起因して,底層で高水温,高イオン値が観測されている(図14).このことから摩周湖は特に底層で湧水による水質への影響を受けている湖沼の例であると考えられ,また大路池北西部は表層で摩周湖のように湧水の影響を受けていると考えられる.加えて土(2017)は富士山において地下水が溶岩流のクリンカー部を通り,被圧されながら山体を下ることで湧水として溶岩流末端から湧出することを明らかにしている(図15).
摩周湖及び富士山の溶岩流末端からの湧水の事例から大路池北西部において観測された高水温,低イオン値は9世紀に島中央部にある雄山から流れ出た玄武岩質溶岩流の内部を地下水が通り,池に流入したことが原因として考えられる(図16).
今後はその他の火口湖との比較を通して火口湖一般の水理特性を解明していきたいと考えている.
参考文献
青木滋ほか(1984)三宅島火山島の地下水.火山第2集第29号(1984),三宅島噴火特集号
アジア航測株式会社,赤色立体地図
新井正ほか(1972)伊豆三宅島,大路池および新澪の測深図.地理学評論
新井正ほか(1977)三宅島の陸水について. 陸水学雑誌
新井正(1978)三宅島・大路池の水収支.地理学評論
小寺浩二ほか(2014)名水を訪ねて(106)伊豆諸島の名水. 地下水学会誌
佐藤篤来ほか(2020)三宅島における火山活動の影響を考慮した水環境の変化に関する研究(1). 2020年度日本地理学会春季学術大会講演要旨集
地質図Navi.三宅島火山地質図.産業技術総合研究所地質調査総合センター
津久井雅志ほか(2005)三宅島火山地質図.独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター,火山地質図12,三宅島火山
土隆一(2017)富士山の地質と地下水流動.地学雑誌
独立行政法人国立環境研究所(2004).摩周湖モニタリングデータブック
野尻幸宏ほか(1990)摩周湖湖水の水温,電導度,溶存化学成分の分布と湖水混合の推定.国立公害研究所研究報告
