13:45 〜 15:15
[O11-P112] ブロック塀に関する無料デジタルツールを用いた防災マップ作成とその意義
〜千葉県市川市の市川学園周辺を例にして〜
キーワード:防災マップ、Google ストリートビュー、ブロック塀、生成AI
1 背景と目的
ハザードマップは災害時における危険エリアの把握において有効的であるが,登下校などの学生生活で使用する場合のニーズを十分に満たせていないのではないかと考えた.そこで,本研究では市川学園の生徒を対象に学校周辺のハザードマップに求める改善点に関する記述式のアンケート調査(以下,アンケート)を実施した上で,生徒が求める防災情報の提示を試みた.本研究を進めていく上で,アンケートを定量的に集計し,考察するには集計者の作為的な要素を排せないという問題点があると分かった.また,アンケート結果から市川学園の生徒が要望する防災情報はブロック塀の分布であると明らかになったが,その調査方法にも様々な問題点が先行研究によって指摘されていることが分かった.そこで,本研究では,無料のデジタルツールを駆使してアンケートの解析方法やブロック塀の分布の集計方法を改善することを目的としている.
2 研究方法
2-1 アンケート収集及びテキストマイニングの改善
市川学園の生徒に対してGoogle Formを用いて,学校周辺のハザードマップを提示したうえで,マップの改善点を尋ねるアンケートを実施した.
アンケートの定量的な考察法の1つにテキストマイニングがある.この方法は形態素解析といった下処理に非常に時間や労力がかかる(越中,2012).また,形態素解析でアンケートに書かれた用語をグループ分けするが,その際に集計者の作為的な意識がどうしても含まれてしまう.そこで,本研究では生成AI(以下,AI)を用いることで,改善を図ることとした.しかし,AIにも様々な種類があり,各AIが導き出す解析結果が同様のものになるか不明である.そこで,本研究ではそれを明らかにすべく,4種類のAIを用いた.
まず,収集された記述データは各AIに形態素解析及び解析結果のリスト作成を行わせた.次に,各AIのグルーピング結果に基づいて,KHcoderを用いて各リスト内のグループごとの共起ネットワーク図を作図し,ハザードマップの改善点の読み取りを行った.
2―2 ストリートビューを用いたブロック塀の現状調査
アンケート結果から,本研究ではブロック塀に着目することとした.川上(1999)などの先行研究で行われているブロック塀の研究では,ブロック塀の分布を実地調査しており,時間がかかることが問題点とされている.
本研究では市川学園周辺の7.5 km2を調査範囲として設定し,範囲内の道を全てストリートビューを使って巡回し,横4ブロック以上のブロック塀について,鉄筋支えが必要となる縦6段以上のブロック塀の分布を調べた.
3 研究結果
アンケートの有効回答数は645件であった.図1における下処理の段階をAIに実行させた際の指令文は図2である.図3はChatGPTに指令を出した結果,表示されたグルーピングリストである.図4は,図3のリストの「*」で示すグループについて,各グループの中に含まれている単語がどれほど同じ文脈で用いられていたかを示す共起ネットワーク図である.誌面の都合上ここでは省略しているが,図3および4の分析をGemini,Deepseek,CopilotのAIおよび発表者が自らグルーピングしたものを作成し,検証した結果,ブロック塀の防災情報の不足が読み取れる.
ストリートビューを用いたブロック塀の分布調査については,ブロック塀の存在を確認することができ(表1),鉄筋の有無は判断できないがある程度の性質が読み取れることも明らかとなった.また、確認することのできたブロック塀の分布を白地図にプロットしたものが図5である.図5中の緑の線はプロットから導き出された周辺駅への安全な避難経路を示している.
4 考察
4-1 各AIを用いた分析結果の差異
各AIを下処理に用いたテキストマイニングの結果から読み取れた事柄の共通点を表2に示した.表2より,どのAIを用いた場合でも,「災害発生時でも安全に避難できるルートの表示」をするべきだということが読み取れた.また,一部共通傾向の項目を参照しても,「小道の危険性の表示」「障壁の表示」が必要であるということが読み取れている.これらは間接的に災害発生時に安全に避難できるルートの表示につながっていると解釈することができる.すなわち,どのAIを下処理に利用しても,得られる傾向が似ているため,この手法であればAIを用いた分析には一定の信頼性があると判断できる.
4-2 実地調査をストリートビューで代用することの信頼性
図5中の緑線で示された経路を実際に歩いて,実際のブロック塀の数と事前調査した塀の数を比較した結果が表3である.ブロック塀の数の多少の変化は見られたが,いずれも5個未満と非常に少なく,すべて減少する方向であった.したがって,ストリートビューで危険なエリアを抽出することは可能であったと判断できる.
参考文献
越中ほか(2015),宮城教育大学情報処理センター研究紀要: COMMUE,22,67-74.; 川上(1999),小山工業高等専門学校研究紀要,31,155-162.
ハザードマップは災害時における危険エリアの把握において有効的であるが,登下校などの学生生活で使用する場合のニーズを十分に満たせていないのではないかと考えた.そこで,本研究では市川学園の生徒を対象に学校周辺のハザードマップに求める改善点に関する記述式のアンケート調査(以下,アンケート)を実施した上で,生徒が求める防災情報の提示を試みた.本研究を進めていく上で,アンケートを定量的に集計し,考察するには集計者の作為的な要素を排せないという問題点があると分かった.また,アンケート結果から市川学園の生徒が要望する防災情報はブロック塀の分布であると明らかになったが,その調査方法にも様々な問題点が先行研究によって指摘されていることが分かった.そこで,本研究では,無料のデジタルツールを駆使してアンケートの解析方法やブロック塀の分布の集計方法を改善することを目的としている.
2 研究方法
2-1 アンケート収集及びテキストマイニングの改善
市川学園の生徒に対してGoogle Formを用いて,学校周辺のハザードマップを提示したうえで,マップの改善点を尋ねるアンケートを実施した.
アンケートの定量的な考察法の1つにテキストマイニングがある.この方法は形態素解析といった下処理に非常に時間や労力がかかる(越中,2012).また,形態素解析でアンケートに書かれた用語をグループ分けするが,その際に集計者の作為的な意識がどうしても含まれてしまう.そこで,本研究では生成AI(以下,AI)を用いることで,改善を図ることとした.しかし,AIにも様々な種類があり,各AIが導き出す解析結果が同様のものになるか不明である.そこで,本研究ではそれを明らかにすべく,4種類のAIを用いた.
まず,収集された記述データは各AIに形態素解析及び解析結果のリスト作成を行わせた.次に,各AIのグルーピング結果に基づいて,KHcoderを用いて各リスト内のグループごとの共起ネットワーク図を作図し,ハザードマップの改善点の読み取りを行った.
2―2 ストリートビューを用いたブロック塀の現状調査
アンケート結果から,本研究ではブロック塀に着目することとした.川上(1999)などの先行研究で行われているブロック塀の研究では,ブロック塀の分布を実地調査しており,時間がかかることが問題点とされている.
本研究では市川学園周辺の7.5 km2を調査範囲として設定し,範囲内の道を全てストリートビューを使って巡回し,横4ブロック以上のブロック塀について,鉄筋支えが必要となる縦6段以上のブロック塀の分布を調べた.
3 研究結果
アンケートの有効回答数は645件であった.図1における下処理の段階をAIに実行させた際の指令文は図2である.図3はChatGPTに指令を出した結果,表示されたグルーピングリストである.図4は,図3のリストの「*」で示すグループについて,各グループの中に含まれている単語がどれほど同じ文脈で用いられていたかを示す共起ネットワーク図である.誌面の都合上ここでは省略しているが,図3および4の分析をGemini,Deepseek,CopilotのAIおよび発表者が自らグルーピングしたものを作成し,検証した結果,ブロック塀の防災情報の不足が読み取れる.
ストリートビューを用いたブロック塀の分布調査については,ブロック塀の存在を確認することができ(表1),鉄筋の有無は判断できないがある程度の性質が読み取れることも明らかとなった.また、確認することのできたブロック塀の分布を白地図にプロットしたものが図5である.図5中の緑の線はプロットから導き出された周辺駅への安全な避難経路を示している.
4 考察
4-1 各AIを用いた分析結果の差異
各AIを下処理に用いたテキストマイニングの結果から読み取れた事柄の共通点を表2に示した.表2より,どのAIを用いた場合でも,「災害発生時でも安全に避難できるルートの表示」をするべきだということが読み取れた.また,一部共通傾向の項目を参照しても,「小道の危険性の表示」「障壁の表示」が必要であるということが読み取れている.これらは間接的に災害発生時に安全に避難できるルートの表示につながっていると解釈することができる.すなわち,どのAIを下処理に利用しても,得られる傾向が似ているため,この手法であればAIを用いた分析には一定の信頼性があると判断できる.
4-2 実地調査をストリートビューで代用することの信頼性
図5中の緑線で示された経路を実際に歩いて,実際のブロック塀の数と事前調査した塀の数を比較した結果が表3である.ブロック塀の数の多少の変化は見られたが,いずれも5個未満と非常に少なく,すべて減少する方向であった.したがって,ストリートビューで危険なエリアを抽出することは可能であったと判断できる.
参考文献
越中ほか(2015),宮城教育大学情報処理センター研究紀要: COMMUE,22,67-74.; 川上(1999),小山工業高等専門学校研究紀要,31,155-162.
