日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P113] 温度・粘性・摩擦を考慮した伊豆大島溶岩流シミュレーション

*北 瑛太1、大谷 凪生1、佐々木 遥海1、巽 梨花1 (1.東京都立三鷹中等教育学校)

キーワード:溶岩流シミュレーション、伊豆大島

【目的と背景】
私たちは2025年2月に伊豆大島に赴き、そこで伊豆大島の火山活動について学んだ。伊豆大島は1777年の安永の大噴火以降、約36~38年の周期で中~大規模噴火を繰り返しており、1986年の中規模噴火から今年で39年目になることから、とても近い将来再び噴火を起こすことが予測される。
前回の噴火では、溶岩流が伊豆大島の中心である元町のすぐ近くまで到達し、全島民が避難する事態となった。伊豆大島の火山である三原山が噴火した場合、迅速に溶岩流の到達速度と到達までの時間を予測し、避難などの適切な対応を検討する必要がある。
しかし、数式やプログラミングを利用した精密なシミュレーションは、シミュレーションを完了するまで丸1日かかることもあり、災害発生後の迅速な対応には向いていない。一方で、赤色立体地図や3Dモデルに溶岩に似た粘性の液体を流して行う実験は、簡単に行えるという利点がある一方で、流し方などによっては結果が大きく変わってしまうこともある。そこで、私たちは効率性と信憑性を両立した簡易版の数式シミュレーションを開発し、災害直後の防災での有用性を検証しようと考えた。

【方法】
溶岩が流れるときに、溶岩には以下の力が作用することとした。
I 重力の斜面に平行な分力
II 地面との摩擦力
III せん断応力
また、簡略化のため、溶岩の先端を一つの物体として扱う。力の作用の様子を図1に示す。
上の三つの力はそれぞれ写真の(1)のようにあらわされる。
ただし、III(せん断応力)は、溶岩がビンガム流体に分類されることからこのようにあらわされる。
よって、溶岩流の運動方程式は(2)上の式であらわされる。
したがって、溶岩流の加速度は(2)下の式で表すことができる。
(2)下の式より、流れ出してからt秒後の溶岩流の速度は、(3)の式で計算できる。
せん断応力におけるη(粘性係数)は、(4)の式であらわされる。
粘性係数におけるTt(噴出後t秒後の温度)は、(5)の式であらわされる。
速度勾配は(6)であらわされるので、V(t)は(7)の式のようにあらわされる。
ここで、数式の簡略化のために平衡速度を仮定すると、(8)となる。
これに初速度を加味させると、(9)となる。
積分を使って噴出t秒後の溶岩流の到達距離をあらわすと、(9)となる。
この数式をシミュレーションに使用する。

【結果】
まず、過去に実際に起こった噴火データとシミュレーション結果を照らし合わせこの式の妥当性や防災への有用性を検討する。
この式の使用方法は以下の通りである。シミュレーションを行う対象の地域の斜面の距離を求めXに代入する斜面の平均の勾配を求めるその勾配における三角数の近似値をθに代入するグラフ生成ソフトDesmosを利用して1986年の割れ目火口Cの噴火シミュレーションを行った様子を例として図2に示す。
各パラメータに当てはめる数値を実際のデータをもとに(10)の通りに設定した。いずれも玄武岩質溶岩の妥当な範囲で設定している。
結果として、実際に到達にかかった時間よりも13分短い時間で溶岩流が到達すると推定できた。この結果は、防災として最悪のシチュエーションを想定しているため、防災の手段として妥当だと考える。また、この差は木や岩、水などで速度が低下する分を考慮していないためだと考えられる。
斜面の長さや勾配を調べDesmosに入力し計算が完了するまでおよそ10分かかった。これは、迅速な非難が想定される噴火直後の防災という視点において妥当な時間であると考える。
3D立体模型を使った実験で、今後噴火が起きた際に溶岩流が流れると想定された地域(裏砂漠地域)のシミュレーションを行った様子を図3に示す。このシミュレーションによって、溶岩流は約63分で約3.7kmを流れていることが明らかになった。

【結論】
 精密な溶岩流シミュレーションは計算の完了まで非常に長い時間がかかり災害直後の防災手段としては不向きであるが、簡略化された数式でも短時間でおおよそ予測できることが分かった。このシミュレーションは一部の摩擦などを考慮していないが、最悪のシチュエーションを予測するため防災手段として適切である。今後は、溶岩が流れる範囲を距離ではなく面積で表せるよう、座標平面の次元を一つ増やしたいと考える。また、溶岩流だけでなく火砕流についても同じ数式で予測ができるか検討したい。

【謝礼】
伊豆大島ジオパーク 田中由里香様
アジア航測株式会社様