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[O11-P117] オーロラ発生装置の製作・改良
キーワード:オーロラ、太陽風、プラズマ、熱圏、絶縁破壊、励起状態
1.序論
オーロラは地球の極域を中心に発生する大気の発光現象であり、古くから各地で観測されてきた。その発生原理は主に太陽風として降り注ぐ宇宙からの荷電粒子と大気の相互作用によるものとされる。オーロラ発生装置は排気鐘内の気圧を下げ、模擬地球内の磁石で放電の軌道を変えることにで、オーロラを再現する装置である。
本研究では、学校の備品や入手しやすいもので装置を製作し、その簡便化を図った。また、装置内の条件を変化させ、装置の改良を試みた。オーロラの発生原理と装置の仕組みから、装置内部の気体の種類、気圧、電圧、放電距離、電極の形状及び素材の6要素がオーロラの再現に関与すると仮説を立てた。各要素の条件をそれぞれ変化させ、オーロラ再現に及ぼす影響を明らかにすることとした。
2.方法
(2-ⅰ)ガイスラー管における放電実験
ガイスラー管内に空気、窒素、ヘリウム、二酸化炭素を封入し、放電の様子を比較した。また、ガイスラー管に磁石の極を近づけ放電軌道の変化を調べた。
(2-ⅱ)オーロラ発生装置における放電実験Ⅰ
先行研究に倣いオーロラ発生装置を製作した。装置内に空気、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、酸素、水を封入し、放電の様子を比較した。その際に、電圧と気圧の条件もそれぞれ変化させ、両者が放電に及ぼす影響を調べた。
(2-ⅲ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅱ
装置内部の気体が空気の場合で、気圧、電圧、電極の形状及び素材、磁力、放電距離を変え、放電の様子を比較した。その際、オーロラの再現度が高い方の条件を採択していき、二分探索法で最適な条件を調べた。
オーロラの再現度については、
1.環状で広がった発光になっているか
2.模擬地球付近でのみ発光しているか
という2つの観点で評価を行った。
3.結果
(3-ⅰ) ガイスラー管における放電実験
放電時の色や明るさ、形状が内部の気体によって異なっていた。
空気と窒素は紫、ヘリウムは気圧によって赤から白、二酸化炭素は黄から緑を帯びた白の発光が見られた。ヘリウムの発光が最も太く明るく、二酸化炭素の発光が最も細く暗かった。
ガイスラー管に磁石の極を近付けると、放電軌道が大きく変化した。
(3-ⅱ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅰ
気体の種類、気圧、電圧いずれの条件を変化させた場合でも、放電時の色や明るさ、形状が変化した。ガイスラー管での実験と同じく、空気と窒素は似た発光を示し、ヘリウムの発光が最も太く明るい一方で、二酸化炭素の発光が最も細く暗かった。発光は気圧を下げると広がり、電圧を上げると直線状になる傾向が見られた。
(3-ⅲ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅱ
気圧を1.3×103 Paから10 Paに変化させると、発光が広がり直線状になった。電圧を4.0×104 Vから4.0×103 Vに変化させると、発光が模擬地球付近でのみ見られるようになった。剣山をアルミホイルで作った円盤に変えると発光が見られなくなり、より大きい剣山に変えると発光が広がった。ネオジム磁石を模擬地球内に設置すると、発光がまとまった。
放電距離を10.0 cmから7.0 cmに変えると、発光の色と広がりがわずかに変化した。
4.考察
実験結果から、オーロラの再現には装置内部の気体の種類、気圧、電圧、放電距離、電極の形状及び素材の6要素が関係することが示唆された。ただし、放電距離については大きな変化が見られなかったため、さらに条件を変えて調べる必要がある。
放電の発光には、粒子が受け取るエネルギーとその数が関係し、電圧と電流、粒子の電子配置の3つのパラメータが影響を与える。気体の種類を変えることで電子配置、絶縁破壊電圧が変化し、気圧や電極の形状及び素材、放電距離を変えることで抵抗が変化する。抵抗が変わると同一電圧下では電流が変化する。以上より、6要素はそれぞれ電圧と電流、粒子の電子配置のいずれかに関連し、オーロラの再現に影響すると考察できる。
5.結論及び展望
入手の容易な器具を用いてオーロラを再現するオーロラ発生装置を製作することができ、気体の種類、気圧、電圧、磁力、放電距離、電極の形状及び素材を変えることで、明るさ、色、形状の異なる放電を起こすことが可能である。
今後は未だ試していない条件や条件の組み合わせについて調べ、他に重要な要素がないか調べるとともに、オーロラ再現に最適な条件を探していくつもりである。実際に地球でオーロラが発生するのは熱圏であり、より正確にオーロラを再現するには、装置内部を熱圏の条件に近付ける必要があると考えられる。また、発光の色を定量的に分析する方法を現在模索している。さらに、装置内部の条件を調整することで、他の惑星におけるオーロラの再現も目指している。
6.謝辞
本研究を行うにあたり、理数科8期生課題研究物理1班担当の江川義夫先生、理数科長の田口康弘先生、担任の山田憲史郎先生を始めとする多くの埼玉県立所沢北高等学校の先生方に貴重なご指導とご協力をいただいた。
また、本研究は国立研究開発法人 科学技術振興機構次世代人材育成事業SSH(スーパーサイエンスハイスクール)より支援を受けている。
7.参考文献
[1]藤田寛治,大津康徳,三沢達也,“生徒体験型オーロラ実験に関する教材開発”,
http://www.ee.saga-u.ac.jp/plasma/img/aurora.pdf(2004)
[2]牧田里美,長谷川千桂,山出果歩,“手作りオーロラのスペクトル”,
天文教育普及研究会, 天文教育,vol24,p78-82 (2012.1)
[3]鈴木 秀“オーロラ発生の研究”,茨城県立水戸第二高等学校 SEAJ Journal2015, 1No.148,
p28https://www.seaj.or.jp/file/mito2014.pdf
[4]小野陽, et al. “人工オーロラの発生と色の変化”. Diss. Kogakuin University.
大阪教育大学付属天王寺中学校 自由研究“オーロラの色の違いは人工的に再現できるのか”, 第43集(2018)
43集(2018)
オーロラは地球の極域を中心に発生する大気の発光現象であり、古くから各地で観測されてきた。その発生原理は主に太陽風として降り注ぐ宇宙からの荷電粒子と大気の相互作用によるものとされる。オーロラ発生装置は排気鐘内の気圧を下げ、模擬地球内の磁石で放電の軌道を変えることにで、オーロラを再現する装置である。
本研究では、学校の備品や入手しやすいもので装置を製作し、その簡便化を図った。また、装置内の条件を変化させ、装置の改良を試みた。オーロラの発生原理と装置の仕組みから、装置内部の気体の種類、気圧、電圧、放電距離、電極の形状及び素材の6要素がオーロラの再現に関与すると仮説を立てた。各要素の条件をそれぞれ変化させ、オーロラ再現に及ぼす影響を明らかにすることとした。
2.方法
(2-ⅰ)ガイスラー管における放電実験
ガイスラー管内に空気、窒素、ヘリウム、二酸化炭素を封入し、放電の様子を比較した。また、ガイスラー管に磁石の極を近づけ放電軌道の変化を調べた。
(2-ⅱ)オーロラ発生装置における放電実験Ⅰ
先行研究に倣いオーロラ発生装置を製作した。装置内に空気、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、酸素、水を封入し、放電の様子を比較した。その際に、電圧と気圧の条件もそれぞれ変化させ、両者が放電に及ぼす影響を調べた。
(2-ⅲ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅱ
装置内部の気体が空気の場合で、気圧、電圧、電極の形状及び素材、磁力、放電距離を変え、放電の様子を比較した。その際、オーロラの再現度が高い方の条件を採択していき、二分探索法で最適な条件を調べた。
オーロラの再現度については、
1.環状で広がった発光になっているか
2.模擬地球付近でのみ発光しているか
という2つの観点で評価を行った。
3.結果
(3-ⅰ) ガイスラー管における放電実験
放電時の色や明るさ、形状が内部の気体によって異なっていた。
空気と窒素は紫、ヘリウムは気圧によって赤から白、二酸化炭素は黄から緑を帯びた白の発光が見られた。ヘリウムの発光が最も太く明るく、二酸化炭素の発光が最も細く暗かった。
ガイスラー管に磁石の極を近付けると、放電軌道が大きく変化した。
(3-ⅱ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅰ
気体の種類、気圧、電圧いずれの条件を変化させた場合でも、放電時の色や明るさ、形状が変化した。ガイスラー管での実験と同じく、空気と窒素は似た発光を示し、ヘリウムの発光が最も太く明るい一方で、二酸化炭素の発光が最も細く暗かった。発光は気圧を下げると広がり、電圧を上げると直線状になる傾向が見られた。
(3-ⅲ) オーロラ発生装置における放電実験Ⅱ
気圧を1.3×103 Paから10 Paに変化させると、発光が広がり直線状になった。電圧を4.0×104 Vから4.0×103 Vに変化させると、発光が模擬地球付近でのみ見られるようになった。剣山をアルミホイルで作った円盤に変えると発光が見られなくなり、より大きい剣山に変えると発光が広がった。ネオジム磁石を模擬地球内に設置すると、発光がまとまった。
放電距離を10.0 cmから7.0 cmに変えると、発光の色と広がりがわずかに変化した。
4.考察
実験結果から、オーロラの再現には装置内部の気体の種類、気圧、電圧、放電距離、電極の形状及び素材の6要素が関係することが示唆された。ただし、放電距離については大きな変化が見られなかったため、さらに条件を変えて調べる必要がある。
放電の発光には、粒子が受け取るエネルギーとその数が関係し、電圧と電流、粒子の電子配置の3つのパラメータが影響を与える。気体の種類を変えることで電子配置、絶縁破壊電圧が変化し、気圧や電極の形状及び素材、放電距離を変えることで抵抗が変化する。抵抗が変わると同一電圧下では電流が変化する。以上より、6要素はそれぞれ電圧と電流、粒子の電子配置のいずれかに関連し、オーロラの再現に影響すると考察できる。
5.結論及び展望
入手の容易な器具を用いてオーロラを再現するオーロラ発生装置を製作することができ、気体の種類、気圧、電圧、磁力、放電距離、電極の形状及び素材を変えることで、明るさ、色、形状の異なる放電を起こすことが可能である。
今後は未だ試していない条件や条件の組み合わせについて調べ、他に重要な要素がないか調べるとともに、オーロラ再現に最適な条件を探していくつもりである。実際に地球でオーロラが発生するのは熱圏であり、より正確にオーロラを再現するには、装置内部を熱圏の条件に近付ける必要があると考えられる。また、発光の色を定量的に分析する方法を現在模索している。さらに、装置内部の条件を調整することで、他の惑星におけるオーロラの再現も目指している。
6.謝辞
本研究を行うにあたり、理数科8期生課題研究物理1班担当の江川義夫先生、理数科長の田口康弘先生、担任の山田憲史郎先生を始めとする多くの埼玉県立所沢北高等学校の先生方に貴重なご指導とご協力をいただいた。
また、本研究は国立研究開発法人 科学技術振興機構次世代人材育成事業SSH(スーパーサイエンスハイスクール)より支援を受けている。
7.参考文献
[1]藤田寛治,大津康徳,三沢達也,“生徒体験型オーロラ実験に関する教材開発”,
http://www.ee.saga-u.ac.jp/plasma/img/aurora.pdf(2004)
[2]牧田里美,長谷川千桂,山出果歩,“手作りオーロラのスペクトル”,
天文教育普及研究会, 天文教育,vol24,p78-82 (2012.1)
[3]鈴木 秀“オーロラ発生の研究”,茨城県立水戸第二高等学校 SEAJ Journal2015, 1No.148,
p28https://www.seaj.or.jp/file/mito2014.pdf
[4]小野陽, et al. “人工オーロラの発生と色の変化”. Diss. Kogakuin University.
大阪教育大学付属天王寺中学校 自由研究“オーロラの色の違いは人工的に再現できるのか”, 第43集(2018)
43集(2018)
