日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P126] 太陽像を用いたシーイングの測定

*粟飯原 凛久1、*赤尾 柚香1、*落合 咲輝1、*富永 光葉1、*星川 祥太朗1、*矢代 優空1 (1.東京都立富士高等学校)

キーワード:太陽、シーイング

1.目的
本研究では東京都中野区にある本校における太陽黒点の観測場所の選定とシーイングの測定を目的とする。独自に作成したプログラムを用いることで太陽の画像からシーイングを数値化した。また、時間経過に伴うシーイングの変化を観測した。

2.観測
観測に使用した装置を表1に、表2に富士高校での観測条件をまとめる。
この装置での回折限界(L)は L=1.22×(λ/D)を用いると2.09”であり、この時のピクセル分解能は1pix=3.707”である。本研究では、シーイングには、地上からの高さや周辺環境(水辺など)が影響する(H.Socas-Navarro et al.)ことを踏まえ、観測条件を変えて屋上とプールサイドの2か所で太陽の動画(110fps,12bit)を撮影した。この際、10秒×5回の観測(1セット)を、各場所で交互に1日7セット、計5日分行った。

3.シーイングの数値化
①太陽像を円と仮定し、その中心と半径をハフ変換を用いて求める。太陽像の縁付近(図3円周部分)でのピクセルの明度を取得したものを元に、グラフを作成する。さらにそのグラフを空間的に微分したグラフ(図3赤線)を作成する。
②明るさを微分したグラフの最大値のある点が太陽像の縁であると考え、その点から太陽像の中心を通る直線までの距離を求め、計算によって求めた理論上の距離との差を求める。
③1か所で観測された各50秒間の動画について、動画全体における観測された距離と理論上の距離の差(図2赤線)についての標準偏差を求めることでゆらぎの大きさを推定する。
ここで、本手順において太陽像の縁を検出するために使用したピクセルの並ぶ方向は、太陽像1周を評価できるように、中心を通り直交する直線から、170ピクセルの範囲ごとに向きを変え、1枚の太陽画像につき1360の点で明るさを測定した。なお、本プロセスにおいてフラットダーク補正は行っていない。

4.結果
3.の方法を用いて、観測した太陽像で発生したゆらぎの大きさを求めた。表3に各動画におけるゆらぎの大きさ(平均)と各場所におけるゆらぎの大きさの1σ範囲を示す。
表3の結果をもちいて母平均の推定を行った結果、観測される太陽像上の距離r、理論上の大きさRについて,
屋上でr =R±8.86”、プールサイドでr=R±8.97”となることが分かった。

5.考察
 今回の観測結果から、屋上では±8.86”のゆらぎ、プールサイドでは±8.97”のゆらぎがあったことがわかる。屋上のほうがゆらぎの大きさが0.11”だけ小さかった。ゆらぎの大きさはピクセル分解能に対して非常に小さいため、今回の試験観測において観測場所によるゆらぎの大きさに有意な差はなかったと考えられる。
 また、図4の10項移動平均の値に着目すると、ゆらぎの大きさは一定の範囲内で不規則に変化していることが考えられる。 
110fpsで観測した今回の試験観測のデータを用いて、シーイングが時間変化に伴って変化していることが観測されたため、シーイングは10msecより速いスピードで変化していることがわかる。
 図5では、各観測場所において最もシーイングが良い/悪い画像について、太陽像の縁の部分の明るさを三次元座標空間上で表現した。図中の線は太陽像上の位置をxy座標、その位置における明るさの値をz座標とする点を結んだものである。この間隔が広いほど明るさが急激に減少するため、シーイングが良いといえる。図を比較すると、シーイングの良いものではシーイングの悪いものに比べて、明るさが減少する際の線同士の間隔が広く、シーイングの良さを視覚的にも確認することができる。
 結論として、今回の試験観測の結果から、本校における太陽観測に適した観測場所として屋上とプールサイドのシーイングに差はないことがわかった。よって、どちらの場所で観測しても同じ結果が得られると考える。また、本研究の手法を用いることで時間変化によるシーイングの変動を観測できる。

6.今後の展望
現状の課題としては、太陽の撮影において、今回はカメラの感度波長を用いたが、フィルターなどを用いて波長をさらに限定して撮影することや、観測装置を変え、像のサイズを大きくしてより詳細に撮影することがあげられる。また、観測データに対してダークフラット補正を行うことでより正確なデータを用いた分析を行うことができると考えている。
シーイングへの影響として、今回は2か所の観測場所を比較したが、シーイングには気圧、風向、風速などが関係している可能性もある。今回実施したのは試験観測であり、今後場所や季節を変えてより多くのデータを使用した分析が必要であると考えた。他の環境要因にも着目して研究を行いたい。
本研究で開発したプログラムは昼夜を問わず使用可能である。今後は夜間の観測にも活用するなど、昼間に限らずシーイングの測定を行っていきたい。
また、天体観測にとどまらず精度の高い研究には対象を可能な限り鮮明にとらえることが必要であり、今回の研究結果は他分野への応用も大いに期待できる内容であると考えられる。

7.参考文献
[1]宮良碧ら他,太陽像によるシーイングサイズの測定手法の開発, 天文学に関する技術シンポジウム集録,第37巻,2017
[2]天文学辞典 日本天文学会 https://astro-dic.jp/
[3]H.Socas-Navarro et al., Solar Site Survey for the Advanced Technology Solar Telescope. I.Analysis of the Seeing Data, Publications of the Astronomical Society of the Pacific,117, 837, pp.1296-1305,2005