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[O11-P21] 西伊豆・南伊豆のオオシマザクラに含まれるクマリン含量について
キーワード:潮風害、オオシマザクラ、塩害
Ⅰ研究の背景と目的
松崎町や南伊豆町は桜葉の生産が盛んだ。この理由を探るため、昨年度は伊豆各地で桜葉を採取し、クマリン含量を計測した。
クマリンとはサクラの葉に含まれる芳香成分で、塩漬けにしたときに防御反応として生成される。クマリン含量が多いことで葉の香りが強くなり、桜葉産業が発展したと考え、クマリン含量が松崎町や南伊豆町の地域で多いのか検証した。
実験の結果、地域差に起因するのではなく、生育環境がクマリン含量に影響を与える可能性が考えられた。(図1) このことから、今年度はクマリン含量が増加する環境条件を解明することを目的とし、研究を行った。
また、現在高齢化や外国産桜葉の流入により、桜葉産業の存続が危ぶまれている面がある。本研究を通してより桜葉産業に注目してもらい、産業の活性化の一助となりたいと考えている。
Ⅱ実験方法
昨年度の研究により、城ケ崎海岸に自生する個体が最もクマリンを含んでいることが分かった。その城ヶ崎海岸の個体は、虫食いや、潮風等の激しい環境ストレスにさらされていたため、環境ストレスがクマリン含量に影響を与えている可能性があると考えた。そこで、松崎の気候と土壌成分や葉の傷害に焦点を当て、潮風に含まれる塩化ナトリウムや葉の傷害が桜葉へ与える影響ついて実験を行った。
1傷害と潮風害に関する実験
韮山時代劇場にあるオオシマザクラをサンプルとして、傷害実験では桜の葉をピンセットで傷をつけ、潮風害実験では海水を霧吹きで葉に吹きかけた。それぞれ特に覆いをせず、一週間放置して採取した後、桜葉漬けを作るための手順を踏み、沼津工業技術センター様にクマリン含量の検査を依頼した。また、松崎高校にも同様の手順で実験をお願いした。さらに、韮山高校にある挿し木のクマリン含量の検査も依頼した。
2土壌の塩害に関する実験
昨年度に採取した、城ケ崎海岸、松崎高校、松崎にある3つの桜畑、計5か所の土壌をそれぞれビーカーにわけ、pH・電気伝導度測定器を用いて測定した。実験1で使用した松崎高校、韮山時代劇場の土壌も測定した。
Ⅲ結果
1傷害と潮風害に関する実験の結果
傷害実験では、ともにクマリン含量が増加した。潮風害実験では、韮山では減少し、松崎では増加した。(表1) また、挿し木のクマリン含量は著しく低い値となった。(表1)
2土壌の塩害に関する実験の結果
電気伝導度については、クマリン含量の高い個体とその土壌の電気伝導度の高さに相関関係が見られた。(図2、表2) pHについては、クマリン含量が高い桜木の土壌はおおむね中性だった。(図3、表3)
Ⅳ考察と今後の課題
1傷害と潮風害に関する実験からの考察
結果より、葉への傷害はクマリン含量に影響すると考えられる。潮風害については、松崎高校ではクマリン含量の増加が見られたが、韮山高校では逆の結果となった。そのことについて実験期間中の天候に注目すると、実験期間中松崎は晴天だったのに対し、韮山では雨が降ったことで葉に吹きかけた塩水が流されてしまい、潮風害の効果が薄くなったと考えられる。(表4)
挿し木については、クマリン含量が著しく低くなった理由として、まだ発達途中であることや、鉢で育てていたことが考えられる。木の生育状態や、鉢の土壌の状態との関係についてさらに研究していきたい。
2土壌の塩害に関する実験からの考察
結果より、PHが中性付近を示しているサンプルは中性塩が溶けており、酸性を示すサンプルは畑で顕著に見られることから、肥料などの影響を受けていると考えられる。pHが中性のサンプルにおいても、電気伝導度の高さとクマリン含量の高さに相関がみられるため、土壌中の中性塩の量がクマリンの量に影響を及ぼしている可能性がある。しかし、この実験では中性塩が塩化ナトリウムと断定できないため、塩害が土壌にどれだけ影響しているかはわからない。
3全体の考察
今回行った実験から、クマリンの含量は松崎の地形に影響を受けている可能性があると考えられる。
3地点で葉の成長期である3月から収穫時期の7月の日照時間を比較すると、多くの月で松崎のほう
が長く、海陸風に着目すると西の海から風が吹くと考えられる。(表5)その風に乗って塩類が運ば
れる可能性があり、そのことがクマリン含量に影響している可能性がある。
Ⅴ謝辞
松崎桜葉商店小泉邦夫様、松崎の桜葉漬け歴史研究者古賀惠介様、国立遺伝学研究所樹木医梅原欣二
様、美しい伊豆創造センター主任研究員遠藤大介様、静岡大学助教江草智弘先生、沼津工業技術支援
センター鈴木雅博様に多大なご支援、ご協力をいただきました。ありがとうございました。
Ⅵ参考文献
・サクラの葉のクマリン成分の研究:髙石清和 et.al, vol 88(11),1467-1471(1968),薬学雑誌
・伊豆半島松崎町における桜葉畑景観の成立過程:七海絵里香 et al, vol 76(5),443-446(2013),
ランドスケープ研究
・視点・サクラの世界から:古賀惠介,vol 23,19-28(2006),龍城論叢
・伊豆の桜葉漬けとオオシマザクラの記憶:古賀惠介,vol 30,35-44(2013),龍城論叢
・松崎町役場.“桜葉の栽培”.松崎町.2019-1-17.
https://www.town.matsuzaki.shizuoka.jp/docs/2019011700029/ (参照 2024-3-17)
松崎町や南伊豆町は桜葉の生産が盛んだ。この理由を探るため、昨年度は伊豆各地で桜葉を採取し、クマリン含量を計測した。
クマリンとはサクラの葉に含まれる芳香成分で、塩漬けにしたときに防御反応として生成される。クマリン含量が多いことで葉の香りが強くなり、桜葉産業が発展したと考え、クマリン含量が松崎町や南伊豆町の地域で多いのか検証した。
実験の結果、地域差に起因するのではなく、生育環境がクマリン含量に影響を与える可能性が考えられた。(図1) このことから、今年度はクマリン含量が増加する環境条件を解明することを目的とし、研究を行った。
また、現在高齢化や外国産桜葉の流入により、桜葉産業の存続が危ぶまれている面がある。本研究を通してより桜葉産業に注目してもらい、産業の活性化の一助となりたいと考えている。
Ⅱ実験方法
昨年度の研究により、城ケ崎海岸に自生する個体が最もクマリンを含んでいることが分かった。その城ヶ崎海岸の個体は、虫食いや、潮風等の激しい環境ストレスにさらされていたため、環境ストレスがクマリン含量に影響を与えている可能性があると考えた。そこで、松崎の気候と土壌成分や葉の傷害に焦点を当て、潮風に含まれる塩化ナトリウムや葉の傷害が桜葉へ与える影響ついて実験を行った。
1傷害と潮風害に関する実験
韮山時代劇場にあるオオシマザクラをサンプルとして、傷害実験では桜の葉をピンセットで傷をつけ、潮風害実験では海水を霧吹きで葉に吹きかけた。それぞれ特に覆いをせず、一週間放置して採取した後、桜葉漬けを作るための手順を踏み、沼津工業技術センター様にクマリン含量の検査を依頼した。また、松崎高校にも同様の手順で実験をお願いした。さらに、韮山高校にある挿し木のクマリン含量の検査も依頼した。
2土壌の塩害に関する実験
昨年度に採取した、城ケ崎海岸、松崎高校、松崎にある3つの桜畑、計5か所の土壌をそれぞれビーカーにわけ、pH・電気伝導度測定器を用いて測定した。実験1で使用した松崎高校、韮山時代劇場の土壌も測定した。
Ⅲ結果
1傷害と潮風害に関する実験の結果
傷害実験では、ともにクマリン含量が増加した。潮風害実験では、韮山では減少し、松崎では増加した。(表1) また、挿し木のクマリン含量は著しく低い値となった。(表1)
2土壌の塩害に関する実験の結果
電気伝導度については、クマリン含量の高い個体とその土壌の電気伝導度の高さに相関関係が見られた。(図2、表2) pHについては、クマリン含量が高い桜木の土壌はおおむね中性だった。(図3、表3)
Ⅳ考察と今後の課題
1傷害と潮風害に関する実験からの考察
結果より、葉への傷害はクマリン含量に影響すると考えられる。潮風害については、松崎高校ではクマリン含量の増加が見られたが、韮山高校では逆の結果となった。そのことについて実験期間中の天候に注目すると、実験期間中松崎は晴天だったのに対し、韮山では雨が降ったことで葉に吹きかけた塩水が流されてしまい、潮風害の効果が薄くなったと考えられる。(表4)
挿し木については、クマリン含量が著しく低くなった理由として、まだ発達途中であることや、鉢で育てていたことが考えられる。木の生育状態や、鉢の土壌の状態との関係についてさらに研究していきたい。
2土壌の塩害に関する実験からの考察
結果より、PHが中性付近を示しているサンプルは中性塩が溶けており、酸性を示すサンプルは畑で顕著に見られることから、肥料などの影響を受けていると考えられる。pHが中性のサンプルにおいても、電気伝導度の高さとクマリン含量の高さに相関がみられるため、土壌中の中性塩の量がクマリンの量に影響を及ぼしている可能性がある。しかし、この実験では中性塩が塩化ナトリウムと断定できないため、塩害が土壌にどれだけ影響しているかはわからない。
3全体の考察
今回行った実験から、クマリンの含量は松崎の地形に影響を受けている可能性があると考えられる。
3地点で葉の成長期である3月から収穫時期の7月の日照時間を比較すると、多くの月で松崎のほう
が長く、海陸風に着目すると西の海から風が吹くと考えられる。(表5)その風に乗って塩類が運ば
れる可能性があり、そのことがクマリン含量に影響している可能性がある。
Ⅴ謝辞
松崎桜葉商店小泉邦夫様、松崎の桜葉漬け歴史研究者古賀惠介様、国立遺伝学研究所樹木医梅原欣二
様、美しい伊豆創造センター主任研究員遠藤大介様、静岡大学助教江草智弘先生、沼津工業技術支援
センター鈴木雅博様に多大なご支援、ご協力をいただきました。ありがとうございました。
Ⅵ参考文献
・サクラの葉のクマリン成分の研究:髙石清和 et.al, vol 88(11),1467-1471(1968),薬学雑誌
・伊豆半島松崎町における桜葉畑景観の成立過程:七海絵里香 et al, vol 76(5),443-446(2013),
ランドスケープ研究
・視点・サクラの世界から:古賀惠介,vol 23,19-28(2006),龍城論叢
・伊豆の桜葉漬けとオオシマザクラの記憶:古賀惠介,vol 30,35-44(2013),龍城論叢
・松崎町役場.“桜葉の栽培”.松崎町.2019-1-17.
https://www.town.matsuzaki.shizuoka.jp/docs/2019011700029/ (参照 2024-3-17)
