13:45 〜 15:15
[O11-P34] 大災害を超え一万年以上住み続けた縄文の智慧とは : 三陸ジオパークの世界登録をめざして
キーワード:ジオパーク活動、縄文遺跡、防災・減災、津波
1 背景と目的
本クラブは2018年より三陸ジオパークの研究に取り組み、レジリエンス(災害への対応力)やサステナビリティ(持続可能性)を重視した、魅力的で意義あるジオパーク活動のあり方を探り提案してきた。2024年にはジオパーク内のジオ・文化サイトであり、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に含まれる是川石器時代遺跡(図1)を対象に研究を行った。
同遺跡はジオサイトであるが、地質・地形に触れる説明が不足している。加えて、三陸ジオパークの設立趣旨である防災・減災・震災の伝承についてほとんど触れられていない。これを解消し、世界ジオパーク登録をめざす上で、より魅力あるサイトとするために、「一万年以上住み続けた縄文の智慧」について検討した。
2 データおよび解析方法
最初に、縄文人にとっての「災害」とは何かを検討した。次に、生活様式が変化するような環境変化を、気候変動とそれに伴う海進・海退、地震と津波、洪水と土砂災害、十和田火山噴火、その他山林火災や感染症などについて文献によって調査した。さらに、移動やどの時期に住んでいたかを、遺跡の遺構や出土遺物の有無から検討した。その際に、住居遺構がなくても石器や土器片が出土していれば住んでいたと判断した。
特に、環境変化から逃れ住居移動をする際に重要と考えられる周辺の地形と水利については、地理院地図(電子国土WEB)陰影起伏図(図2)を利用して現地調査し、より詳細を検討した。
3 結果
気候変動と海進・海退、十和田火山噴火による降灰へは、漁労や陸上生物への依存度を変化させ、次第に貯蔵を重視することで適応していた。小規模な集落であったことも移動と適応に役立つと考えられた。これらの柔軟な対応は、災害や環境変化に対するレジリエンス(対応力・回復力)の高さを示している。
最も重要と考えたのは、周辺地形と水利であった。背後に緩い傾斜を持つ河岸段丘で、小さな沢筋に近い場所にある。上流部と下流部とも、渓谷と開口部に氾濫原をもっている。遡上する津波も、上流からの洪水や火山泥流も当遺跡周辺での影響は緩められたと考えた。また、近接する遺跡とは同じ時代と様式の出土物から密接な交流を示していて、一目で見渡せる潟野遺跡や楢館遺跡等をあわせて長く続いた一つと見ることができる。
4 考察と今後の課題
一万年以上続いた知恵として、①周辺の地形と水利を把握して生活場所を選択する、②環境変動に応じて移動し生活様式を変化させる、③土偶などを通じて共助の精神を育む、の3点が挙げられる。これらは、災害に強くしなやかな暮らし方、すなわち高いレジリエンスを支えた要素である。
また、単一の食品に偏らず食料資源の多様性を大切にする、小さな集落規模を保つ、漆製品に見られるような専門性と経験知を継承する姿勢などは、**持続可能な暮らし(サステナビリティ)**の視点からも注目できる。
以上から今後の課題として以下の提案をすることとした。①三陸ジオパークの是川石器時代遺跡の範囲を拡大・再定義する。風張(1)遺跡、風張(2)遺跡、潟野遺跡、新田遺跡、楢館遺跡を含める。特に国宝合掌土偶の出土した風張(1)遺跡を含める意義は大きい。②十和田火山テフラと遺跡の関係を強調する。具体例として、テフラと遺跡の関係を示す「剥ぎ取り」を展示する。是川石器時代遺跡のジオ要素を高めることで、世界への登録に役立つと考える。
謝 辞
本研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校をはじめ、多くの方々からご指導とご協力をいただいた。ここに記して深く感謝申し上げる。
参考文献
1)太田原潤(2000)旧石器時代,研究紀要第6号・20周年特集号,p7-12,青森県埋蔵文化財調査センター.
2)露崎史朗(2008)火山灰の下から発芽するタネ. https://hosho.ees.hokudai.ac.jp/tsuyu/top/misc/usu_08-j.html 参照2025.4.12.
3)八戸市史編纂委員会編(2009)新編八戸市史考古資料編,八戸市.
4)川幡穂高(2009)縄文時代の環境,その2-三内丸山遺跡周辺の環境変遷-,地質ニュース666号,p31-38,地質調査総合センター.
5)中村哲也(2013)八戸市南部における縄文遺跡の分布とその変遷,青森県立郷土館研究紀要 第37号,p1-12,青森県立郷土館.
6)八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館(2014)平成26年度秋季企画展図録 海と火山と縄文人,八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館.
7)八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館編(2016)史跡是川石器時代遺跡保存活用計画書,八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館.
8)十和田火山防災協議会(2018)十和田火山災害想定影響範囲図,青森県.
9)八戸市(2020)八戸市洪水ハザードマップ,八戸市.
10)八戸市(2022)津波避難計画,八戸市.
3)国土交通省ハザードマップポータルサイト 参照2024年4月10日
本クラブは2018年より三陸ジオパークの研究に取り組み、レジリエンス(災害への対応力)やサステナビリティ(持続可能性)を重視した、魅力的で意義あるジオパーク活動のあり方を探り提案してきた。2024年にはジオパーク内のジオ・文化サイトであり、世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に含まれる是川石器時代遺跡(図1)を対象に研究を行った。
同遺跡はジオサイトであるが、地質・地形に触れる説明が不足している。加えて、三陸ジオパークの設立趣旨である防災・減災・震災の伝承についてほとんど触れられていない。これを解消し、世界ジオパーク登録をめざす上で、より魅力あるサイトとするために、「一万年以上住み続けた縄文の智慧」について検討した。
2 データおよび解析方法
最初に、縄文人にとっての「災害」とは何かを検討した。次に、生活様式が変化するような環境変化を、気候変動とそれに伴う海進・海退、地震と津波、洪水と土砂災害、十和田火山噴火、その他山林火災や感染症などについて文献によって調査した。さらに、移動やどの時期に住んでいたかを、遺跡の遺構や出土遺物の有無から検討した。その際に、住居遺構がなくても石器や土器片が出土していれば住んでいたと判断した。
特に、環境変化から逃れ住居移動をする際に重要と考えられる周辺の地形と水利については、地理院地図(電子国土WEB)陰影起伏図(図2)を利用して現地調査し、より詳細を検討した。
3 結果
気候変動と海進・海退、十和田火山噴火による降灰へは、漁労や陸上生物への依存度を変化させ、次第に貯蔵を重視することで適応していた。小規模な集落であったことも移動と適応に役立つと考えられた。これらの柔軟な対応は、災害や環境変化に対するレジリエンス(対応力・回復力)の高さを示している。
最も重要と考えたのは、周辺地形と水利であった。背後に緩い傾斜を持つ河岸段丘で、小さな沢筋に近い場所にある。上流部と下流部とも、渓谷と開口部に氾濫原をもっている。遡上する津波も、上流からの洪水や火山泥流も当遺跡周辺での影響は緩められたと考えた。また、近接する遺跡とは同じ時代と様式の出土物から密接な交流を示していて、一目で見渡せる潟野遺跡や楢館遺跡等をあわせて長く続いた一つと見ることができる。
4 考察と今後の課題
一万年以上続いた知恵として、①周辺の地形と水利を把握して生活場所を選択する、②環境変動に応じて移動し生活様式を変化させる、③土偶などを通じて共助の精神を育む、の3点が挙げられる。これらは、災害に強くしなやかな暮らし方、すなわち高いレジリエンスを支えた要素である。
また、単一の食品に偏らず食料資源の多様性を大切にする、小さな集落規模を保つ、漆製品に見られるような専門性と経験知を継承する姿勢などは、**持続可能な暮らし(サステナビリティ)**の視点からも注目できる。
以上から今後の課題として以下の提案をすることとした。①三陸ジオパークの是川石器時代遺跡の範囲を拡大・再定義する。風張(1)遺跡、風張(2)遺跡、潟野遺跡、新田遺跡、楢館遺跡を含める。特に国宝合掌土偶の出土した風張(1)遺跡を含める意義は大きい。②十和田火山テフラと遺跡の関係を強調する。具体例として、テフラと遺跡の関係を示す「剥ぎ取り」を展示する。是川石器時代遺跡のジオ要素を高めることで、世界への登録に役立つと考える。
謝 辞
本研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校をはじめ、多くの方々からご指導とご協力をいただいた。ここに記して深く感謝申し上げる。
参考文献
1)太田原潤(2000)旧石器時代,研究紀要第6号・20周年特集号,p7-12,青森県埋蔵文化財調査センター.
2)露崎史朗(2008)火山灰の下から発芽するタネ. https://hosho.ees.hokudai.ac.jp/tsuyu/top/misc/usu_08-j.html 参照2025.4.12.
3)八戸市史編纂委員会編(2009)新編八戸市史考古資料編,八戸市.
4)川幡穂高(2009)縄文時代の環境,その2-三内丸山遺跡周辺の環境変遷-,地質ニュース666号,p31-38,地質調査総合センター.
5)中村哲也(2013)八戸市南部における縄文遺跡の分布とその変遷,青森県立郷土館研究紀要 第37号,p1-12,青森県立郷土館.
6)八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館(2014)平成26年度秋季企画展図録 海と火山と縄文人,八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館.
7)八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館編(2016)史跡是川石器時代遺跡保存活用計画書,八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館.
8)十和田火山防災協議会(2018)十和田火山災害想定影響範囲図,青森県.
9)八戸市(2020)八戸市洪水ハザードマップ,八戸市.
10)八戸市(2022)津波避難計画,八戸市.
3)国土交通省ハザードマップポータルサイト 参照2024年4月10日
