日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P40] 岐阜県美濃加茂市で産出したサイ類化石の同定

*内山 双葉1、*佐藤 愛子1、*加納 萌遥1 (1.岐阜県立加茂高等学校)

キーワード:サイ類、中新世、瑞浪層群

背景
 岐阜県東濃地方には、新生代新第三紀中新世の2200万年前から、1550万年前に形成された瑞浪層群の地層が分布しており、哺乳類や植物、貝類などの化石が産出する。2006年に美濃加茂市の瑞浪層群中村層から、サイ類の下顎と四肢骨が発見された。
 瑞浪層群から産出するサイ類は「カニサイ」と呼ばれ、Chilotherium属のC.pugnatorと、C.? sp.とされていたが、大型種のBrachypoterium ? pugnatorと小型種のPlesiaceratherium sp.に再同定された(Fukuchi&Kawai(2011))。それを受けて、岐阜県美濃加茂市で見つかったサイ類化石(以下、藤井標本とする)が、二種類の内どちらの種類なのかを特定することを目的として研究を行った。

方法
 サイ類の歯は、前臼歯がPからP、臼歯がMからMまである。サイ類の下顎の歯は、左右逆のLが二つ繋がったような見た目をしており、上顎の歯とは違って種の違いによる形の違いはあまり見られない。そのため形状からでは種の同定は困難である。そこで大型種と小型種という大きさの違いに基づいて、歯の大きさの比較によって種の同定を行った。測定は歯の近遠心長と頬舌幅についてノギスを用いて行った。藤井標本と博物館などの標本で、実測可能なものについては実測し、個人所有などで実測不可能なものについては、先行研究で公表されている値を用いて比較した。

結果
1,藤井標本に見られる特徴
 右下顎で、大きさは前後長261 mm、背腹高82 mm、頬舌幅40 mm、PからMまでの4本の歯が残されており、P、Pの歯冠高が7~12 mmと低く、著しく咬耗している。Mの咬耗が少なく、Mは欠けているが、破片は接合可能であり、エナメル質が完全に残っている。PからMまでの咬合面の高さは一定であるが、M2の歯冠の位置が13 mm程度低く、歯根がない。Pの下の下顎骨の中にエナメル質の物質が確認できる。
2,歯の大きさによる同定
 瑞浪市化石博物館所蔵のP. sp の2標本(MFM18154およびMFM18153)、可児市歴史郷土館所蔵のB. ? pugnator、(レプリカ)2標本とP. spの1標本について近遠心長及び、頬舌幅を測定した。その他の個人所蔵の標本については可児町教育委員会(1977)に示されたデータを使用した。藤井標本の他にP. spは5標本、B. ? pugnatorは4標本を比較対象とした。
近遠心長では、藤井標本のMは34.4 mmで、P. spの基準標本の37.5 mmと近似であり、B. ? pugnatorの43.9~51.9 mmよりも1㎝程度の短い。頬舌幅についても藤井標本のMは22.6 mmで、P. sp 基準標本の25.1 mmに近似であり、B. ? pugnatorの27.8~33.8 mmより一回り狭い。藤井標本の他の歯の近遠心長、頬舌幅ともP. sp とされる標本の測定値と調和的であり、B. ? pugnatorの標本の値とは異なっている。藤井標本とB. ? pugnatorのM、Mの咬合面の大きさとエナメル質の厚さを比較したところ、藤井標本よりもB. ? pugnatorは一回り大きく、エナメル質が厚いことが確認できた。
3,X線CT画像
 X線CTによる撮影おこなったところ、P、Pの下の下顎骨内部に2本の歯が確認できた。

考察
 藤井標本でP、Pとした歯は咬耗が著しく、X線CT画像で下顎骨中に2本の歯が確認されたことから、表面にある2本の歯はdPとdPで、下顎骨中の2本の歯がP、Pと考えられる。咬耗が少ないMは生えて間がなく、未咬耗のMはまだ未萌出であり、歯根の未形成であることから、藤井標本は、歯が生える段階の個体で幼獣であったと推定される。P. spとB. ? pugnatorの二種類の標本と藤井標本を比較した結果、藤井標本の値は近遠心長、頬舌幅がともに小型種のP. spの値と調和的であり、B. ? pugnatorの方が一回り大きいことから藤井標本は小型種のPlesiaceratherium sp.であると推定される。

結論
藤井標本は歯の咬耗状態などから幼獣であり、小型種のPlesiaceratherium sp.であると推定される。

謝辞
本研究にあたり、サイ類化石は日本ライン漁業協同組合の藤井秀男さんからお借りしました。サイ類の標本の測定に際しては瑞浪市化石博物館の安藤佑介さん、可児市歴史郷土館の大海崇代さんにお世話になりました。また滋賀県立琵琶湖博物館の半田直人さんにアドバイスを受けました。X線CTの撮影では福井県立大学の河部壮一郎さんにお世話になりました。ここに謝意を表します。 

文献
・可児町教育委員会(1977) 平牧の地層と化石 可児ニュータウン化石調査報告書
・川合康司(1996) 瑞浪層群中村累層より発見されたサイ化石について 岐阜県博物館調査研究報告第17号
・福地亮(2003) サイの歯冠上の構造に対する用語について,Okayama University Earth Science Report
・Fukuchi & Kawai(2011) Revision of fossil rhinoceroses from the Miocene Mizunami Group,Japan
Paleontological Research,Vol.15,no.4
・半田直人(2018) 日本の新第三紀中新世サイ科(哺乳綱、奇蹄目)化石:現状と課題 日本古生物学会年会講演予稿集