13:45 〜 15:15
[O11-P45] えっ、島が浮いている!? Ⅱ ~浮島現象の発生・観測条件と科学的原理~
キーワード:下位蜃気楼、再現実験、潮位
1 背景・目的
蜃気楼の一種とされる不知火現象の研究を進める中で、浮島現象も蜃気楼であることを知った。[1][2]そこでよく浮いて見える浮島現象の発生・観測条件を明らかにするため研究を始めた。昨年度までの研究から、よく浮いた浮島を見る条件は、①気温と海水温の温度差が大きい、12~1月の良く晴れた日の早朝②高さの低い観測点③観測対象までの適切な距離、約10㎞であると分かっている。よって今回は、以下の三つを目的とする。Aこれまでに分かった浮島の発生・観測条件を元に、よく浮いた浮島現象を観測し、条件を確認するB視程が良い時期を明らかにし、蜃気楼の観測に最適な時期を探るC再現実験から光の屈折に必要な温度層の位置を調べる
2 研究内容
A 野外観測
宇城市不知火町永尾の海岸から大島を対象に2024年11月下旬から2025年2月上旬までの4ヶ月間に計14回の観測を行った。観測では、過去の研究からわかっていた観測条件である温度差や観測点の高さ、対象までの距離も同じであるにもかかわらず、浮き具合に大きな差がある浮島現象が観測された(図2,3)。そこで、観測時の不知火海の様子に注目したところ、約2mの大きな潮位差が生じていた。このことから、この潮位が浮島の観測に大きく影響しており、潮位が高いほどより浮いた浮島が観測可能であり、潮位の高い満潮時の中でも潮位が高くなっているタイミングが最適であると考えた。これは、潮位が低下すると海水面を基準としたときの観測点の高さが高くなってしまい、観測条件である「観測点の高さが低い」を満たさなくなるためだと考えられる。また、過去の研究から浮島の発生には、温度差が大きくなる早朝(冬ならば朝7時頃)が適していることが分かっているため、不知火海での蜃気楼の観測には、早朝と潮位が最も高くなる満潮時刻が重なるタイミングである「満月、新月の日の2~3日前」が最適であることが分かった。[3][4]このことから、潮位変化の大きい不知火海では、この潮位変化を大いに考慮する必要があることが分かった。
B 視程による影響
野外観測の際、視程が良い日と悪い日があり、視程、見通しのよさが浮島の観測に大きな影響を与えていることが分かった。そこで、視程が良い時期を明らかにすることで、蜃気楼の観測に最適な時期を探ることを目的とした。観測は、宇土高校から熊本市方向(北方向)に存在する距離の違う3つの対象(図4)に対して、毎日、朝8時に定点で写真撮影を行い、撮影した写真の視程はどの対象まで見えたかをもとに1,2、3のどれかに分類し、月ごとのその平均値の比較を行った。また、視程に影響されると考えられる黄砂やpm2.5、水蒸気量などの大気中の微粒子のデータを収集し、視程への影響を調べた(図5)。[6]結果、視程が比較的良かった時期も、大気中の微粒子が少なかった時期も、夏から秋であったことから、視程が良く、浮島観測に適する時期が夏から秋であることが分かった。
C 光の屈折に必要な温度層の位置
浮島の発生に必要な温度層の位置を調べるために、ヒーターを用いた浮島の再現実験を行った。実験はヒーターを対象側から8枚並べ(図6)、観測点の高さを0㎜、5㎜に変えてそれぞれ一枚ずつずらす場合と一枚以外ずらす場合で行った。結果、②③付近で浮き具合が変化したことから、高さを高くするとその変化が生じた位置が対象側に近づいたことから①下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であること、②観測点の高さが高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくということが分かった。また、この結果を独自のシミュレーションに当てはめたところ同様のことが確認できた(図7)。
3 まとめ
野外観測から、潮位変化の大きい不知火海における浮島現象の観測には、潮位が高くなる満月・新月の2~3日前であることが必要であることが分かった。視程観測から、視程がよく、浮島観測に適する時期は夏から秋であることが分かった。また、再現実験・シミュレーションから、下位蜃気楼の発生には、①対象付近の温度差が重要であること、②観測点が高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくことが確認できた。
不知火海での浮島の観測条件(浮島の観測と今回のモデル実験より):①気温と海水温の温度差がある…12~1月の早朝、②観測点の高さが低い…満潮時の海岸、③適当な距離がある…10km程度
④潮位が高く、満潮時刻が日の出時刻に近い・・・満月・新月の2~3日前
⑤視程がよい…夏から秋、⑥対象付近の温度差がある
[主な参考文献]
[1]川合秀明、北村裕二,柴田清孝.下位蜃気楼の光路計算-マダガスカルで見た蜃気楼-,2020
[2]日本蜃気楼協議会 蜃気楼のすべて! 草思社, 2016
[3]気象庁 [4]国立天文台 [5]国土地理院 [6]熊本県水産研究センター
蜃気楼の一種とされる不知火現象の研究を進める中で、浮島現象も蜃気楼であることを知った。[1][2]そこでよく浮いて見える浮島現象の発生・観測条件を明らかにするため研究を始めた。昨年度までの研究から、よく浮いた浮島を見る条件は、①気温と海水温の温度差が大きい、12~1月の良く晴れた日の早朝②高さの低い観測点③観測対象までの適切な距離、約10㎞であると分かっている。よって今回は、以下の三つを目的とする。Aこれまでに分かった浮島の発生・観測条件を元に、よく浮いた浮島現象を観測し、条件を確認するB視程が良い時期を明らかにし、蜃気楼の観測に最適な時期を探るC再現実験から光の屈折に必要な温度層の位置を調べる
2 研究内容
A 野外観測
宇城市不知火町永尾の海岸から大島を対象に2024年11月下旬から2025年2月上旬までの4ヶ月間に計14回の観測を行った。観測では、過去の研究からわかっていた観測条件である温度差や観測点の高さ、対象までの距離も同じであるにもかかわらず、浮き具合に大きな差がある浮島現象が観測された(図2,3)。そこで、観測時の不知火海の様子に注目したところ、約2mの大きな潮位差が生じていた。このことから、この潮位が浮島の観測に大きく影響しており、潮位が高いほどより浮いた浮島が観測可能であり、潮位の高い満潮時の中でも潮位が高くなっているタイミングが最適であると考えた。これは、潮位が低下すると海水面を基準としたときの観測点の高さが高くなってしまい、観測条件である「観測点の高さが低い」を満たさなくなるためだと考えられる。また、過去の研究から浮島の発生には、温度差が大きくなる早朝(冬ならば朝7時頃)が適していることが分かっているため、不知火海での蜃気楼の観測には、早朝と潮位が最も高くなる満潮時刻が重なるタイミングである「満月、新月の日の2~3日前」が最適であることが分かった。[3][4]このことから、潮位変化の大きい不知火海では、この潮位変化を大いに考慮する必要があることが分かった。
B 視程による影響
野外観測の際、視程が良い日と悪い日があり、視程、見通しのよさが浮島の観測に大きな影響を与えていることが分かった。そこで、視程が良い時期を明らかにすることで、蜃気楼の観測に最適な時期を探ることを目的とした。観測は、宇土高校から熊本市方向(北方向)に存在する距離の違う3つの対象(図4)に対して、毎日、朝8時に定点で写真撮影を行い、撮影した写真の視程はどの対象まで見えたかをもとに1,2、3のどれかに分類し、月ごとのその平均値の比較を行った。また、視程に影響されると考えられる黄砂やpm2.5、水蒸気量などの大気中の微粒子のデータを収集し、視程への影響を調べた(図5)。[6]結果、視程が比較的良かった時期も、大気中の微粒子が少なかった時期も、夏から秋であったことから、視程が良く、浮島観測に適する時期が夏から秋であることが分かった。
C 光の屈折に必要な温度層の位置
浮島の発生に必要な温度層の位置を調べるために、ヒーターを用いた浮島の再現実験を行った。実験はヒーターを対象側から8枚並べ(図6)、観測点の高さを0㎜、5㎜に変えてそれぞれ一枚ずつずらす場合と一枚以外ずらす場合で行った。結果、②③付近で浮き具合が変化したことから、高さを高くするとその変化が生じた位置が対象側に近づいたことから①下位蜃気楼の観測には対象付近の気温差が重要であること、②観測点の高さが高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくということが分かった。また、この結果を独自のシミュレーションに当てはめたところ同様のことが確認できた(図7)。
3 まとめ
野外観測から、潮位変化の大きい不知火海における浮島現象の観測には、潮位が高くなる満月・新月の2~3日前であることが必要であることが分かった。視程観測から、視程がよく、浮島観測に適する時期は夏から秋であることが分かった。また、再現実験・シミュレーションから、下位蜃気楼の発生には、①対象付近の温度差が重要であること、②観測点が高くなると光が屈折する場所が対象側に近づくことが確認できた。
不知火海での浮島の観測条件(浮島の観測と今回のモデル実験より):①気温と海水温の温度差がある…12~1月の早朝、②観測点の高さが低い…満潮時の海岸、③適当な距離がある…10km程度
④潮位が高く、満潮時刻が日の出時刻に近い・・・満月・新月の2~3日前
⑤視程がよい…夏から秋、⑥対象付近の温度差がある
[主な参考文献]
[1]川合秀明、北村裕二,柴田清孝.下位蜃気楼の光路計算-マダガスカルで見た蜃気楼-,2020
[2]日本蜃気楼協議会 蜃気楼のすべて! 草思社, 2016
[3]気象庁 [4]国立天文台 [5]国土地理院 [6]熊本県水産研究センター
