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[O11-P46] ついに観測に成功!幻の現象“不知火”の正体に迫る
キーワード:蜃気楼、屈折、観測、潮汐、シミュレーション、光学
[背景、目的] 私たちは不知火の研究を始め、今年で7年となる。不知火の実態に迫るため、過去6年間に23回もの観測を行ってきたが、一度も不知火は見られなかった。また、不知火の再現実験を行い世界初となる不知火の再現に成功した。今年度は不知火の観測に成功し、その全体像が明らかになってきた。そこで今年は以下の3つの疑問を元に研究を行った。1.不知火とはどのような現象?2.観測した不知火の原理は?3.不知火が見られた理由は?
[疑問1:現象] 不知火とは、八朔(旧暦の8月1日)の前夜に不知火海で見られる神秘の火のことであり、現代では不知火は蜃気楼の一種と考えられている。過去6年の観測で不知火が見られなかった理由を探るために、不知火に関する聞き込み調査を行った結果、昔不知火が見られていた時に漁火があったことが分かった。そこで、八朔の前夜(令和6年9月2~3日未明)、地元の漁協さんの協力により3つの河口沖に漁火を出し、不知火観測を行った。これまで同様に、宇城市不知火町永尾の永尾神社から八代市大島方面を観測した。夜通しの観測の結果NHKの方々の協力もあり、36年ぶりとなる不知火の観測に成功した。撮影した動画を確認してみると、今回撮影した不知火は1つであるはずの光源が2→3と分かれ、さらにつながるというものであった。また、光が分かれ、繋がる変化はそれぞれ30秒程度で起こり、横方向の光の変化は10分ほど続き、不知火の時間変化の間隔が明らかになった。
[疑問2:原理] 蜃気楼にはいくつか種類があり、よく知られているのは、下位蜃気楼と上位蜃気楼だ。側方蜃気楼はほとんど知られておらず、目撃例もかなり少ない。不知火現象は、この側方蜃気楼の一種だと考えられている。一般的な蜃気楼である下位蜃気楼は、上冷下暖の空気層であるときに見られ、対象の景色が下方向に反転する。上下方向の温度差によって発生する下位蜃気楼に対して、海と陸地の境界が直線的となり、左右で温度差ができた時に発生するのが側方蜃気楼である。不知火現象が見られる不知火海には、広大な干潟が分布している。干潟上には潮だまりという温かい海水が残っている場所が存在し、干潟上で温かい地点と冷たい地点が形成される。さらに、不知火海では微風が吹くため、干潟上はより複雑な温度構造となり、横方向に光が伸びたような見え方をする不知火が発生する。では、昨年成功した不知火の再現実験もこの条件を満たしているのだろうか。側方蜃気楼はヒーターを加熱し、左右で温度差ができた時に、不知火はさらに微風を吹かせ温度の分布が乱された時に見られたため、先ほどの原理で説明できる。
[疑問3:理由] 漁火は船の明かりであるため、街灯などの街明かりよりも海面に近い、低い位置にあるという特徴がある。そこで、光源の高さに着目し蜃気楼の光路シミュレーションを行うこととした。街灯の場合と漁火の場合を比較すると、光源が街灯の場合、観望所は蜃気楼が見える範囲に入っていないのに対し、漁火の場合は、蜃気楼が見える範囲に入っていることが分かる。これは、光源が低く、海面付近にある温度層(気温が変化する空気層)の影響を受けやすいためである。よって、今年不知火が見られたのは、光源が温度層の影響を受けやすい漁火であったためだと考えられる。
[まとめ、今後の展望] ①7年に及ぶ不知火観測:36年ぶりとなる不知火観測に成功。鮮明な動画撮影は世界で初。②蜃気楼の発生条件からの考察:不知火は、干潟と風による複雑な左右の温度分布により発生する。③シミュレーションによる考察:「漁火」は温度層の影響を受けやすく、蜃気楼が発生しやすい。今後はより明瞭な不知火の観測、なぜ八朔の晩に不知火が見られるのかの解明を行う。
[参考文献]
川合秀明,北村裕二,柴田清孝.下位蜃気楼の光路計算-マダガスカルで見た蜃気楼-,2020
日本蜃気楼協議会.蜃気楼のすべて!.草思社,2016 気象庁
立石巌.不知火新考.築地書館,1994 山下太利.不知火の研究.葦書房,1994
地理院地図 NHK熊本WEB特集クマガジン 総合物理2.数研出版株式会社
[疑問1:現象] 不知火とは、八朔(旧暦の8月1日)の前夜に不知火海で見られる神秘の火のことであり、現代では不知火は蜃気楼の一種と考えられている。過去6年の観測で不知火が見られなかった理由を探るために、不知火に関する聞き込み調査を行った結果、昔不知火が見られていた時に漁火があったことが分かった。そこで、八朔の前夜(令和6年9月2~3日未明)、地元の漁協さんの協力により3つの河口沖に漁火を出し、不知火観測を行った。これまで同様に、宇城市不知火町永尾の永尾神社から八代市大島方面を観測した。夜通しの観測の結果NHKの方々の協力もあり、36年ぶりとなる不知火の観測に成功した。撮影した動画を確認してみると、今回撮影した不知火は1つであるはずの光源が2→3と分かれ、さらにつながるというものであった。また、光が分かれ、繋がる変化はそれぞれ30秒程度で起こり、横方向の光の変化は10分ほど続き、不知火の時間変化の間隔が明らかになった。
[疑問2:原理] 蜃気楼にはいくつか種類があり、よく知られているのは、下位蜃気楼と上位蜃気楼だ。側方蜃気楼はほとんど知られておらず、目撃例もかなり少ない。不知火現象は、この側方蜃気楼の一種だと考えられている。一般的な蜃気楼である下位蜃気楼は、上冷下暖の空気層であるときに見られ、対象の景色が下方向に反転する。上下方向の温度差によって発生する下位蜃気楼に対して、海と陸地の境界が直線的となり、左右で温度差ができた時に発生するのが側方蜃気楼である。不知火現象が見られる不知火海には、広大な干潟が分布している。干潟上には潮だまりという温かい海水が残っている場所が存在し、干潟上で温かい地点と冷たい地点が形成される。さらに、不知火海では微風が吹くため、干潟上はより複雑な温度構造となり、横方向に光が伸びたような見え方をする不知火が発生する。では、昨年成功した不知火の再現実験もこの条件を満たしているのだろうか。側方蜃気楼はヒーターを加熱し、左右で温度差ができた時に、不知火はさらに微風を吹かせ温度の分布が乱された時に見られたため、先ほどの原理で説明できる。
[疑問3:理由] 漁火は船の明かりであるため、街灯などの街明かりよりも海面に近い、低い位置にあるという特徴がある。そこで、光源の高さに着目し蜃気楼の光路シミュレーションを行うこととした。街灯の場合と漁火の場合を比較すると、光源が街灯の場合、観望所は蜃気楼が見える範囲に入っていないのに対し、漁火の場合は、蜃気楼が見える範囲に入っていることが分かる。これは、光源が低く、海面付近にある温度層(気温が変化する空気層)の影響を受けやすいためである。よって、今年不知火が見られたのは、光源が温度層の影響を受けやすい漁火であったためだと考えられる。
[まとめ、今後の展望] ①7年に及ぶ不知火観測:36年ぶりとなる不知火観測に成功。鮮明な動画撮影は世界で初。②蜃気楼の発生条件からの考察:不知火は、干潟と風による複雑な左右の温度分布により発生する。③シミュレーションによる考察:「漁火」は温度層の影響を受けやすく、蜃気楼が発生しやすい。今後はより明瞭な不知火の観測、なぜ八朔の晩に不知火が見られるのかの解明を行う。
[参考文献]
川合秀明,北村裕二,柴田清孝.下位蜃気楼の光路計算-マダガスカルで見た蜃気楼-,2020
日本蜃気楼協議会.蜃気楼のすべて!.草思社,2016 気象庁
立石巌.不知火新考.築地書館,1994 山下太利.不知火の研究.葦書房,1994
地理院地図 NHK熊本WEB特集クマガジン 総合物理2.数研出版株式会社
