13:45 〜 15:15
[O11-P47] 馬門石(まかどいし)の赤色の原因はヘマタイトか?2
キーワード:馬門石、Aso-4、溶結凝灰岩、Fe₂O₃(ヘマタイト)
【研究の動機・目的、仮説】
熊本県宇土市網津町馬門で産出される馬門石(まかどいし)は、約9万年前のAso-4火砕流堆積物の一種とされている。特徴的な赤色をしているが、その理由は不明である。そのため、赤色の原因を探ることにした。過去の文献[1]から赤色の原因は鉄の酸化、中でも火山の付近で見られるFe₂O₃(ヘマタイト)ではないかと仮説を立て研究を始めた。本研究では、Aso-4火砕流堆積物のうち黒い一般的なものをAso—4、赤いものを馬門石とよぶこととする。
【研究内容】
今回は①:文献調査・実験、②成分分析・焼成試験、③現地調査、④薄片の製作・観察の4点から研究を行った。 文献調査・実験 馬門石とAso-4の相違点について実験や野外調査、文献調査で調べた。
・黒曜石や礫を含むなどの岩相的特徴、密度や磁性に大きな違いはなく、違うのは色と硬さ
だけである。
・赤色の鉄の酸化物は、Fe₂O₃、FeO(OH)がある[2][3][4]。Fe₂O₃は鉄の最も酸化している状態で
あり、非常に高温での酸化が必要で、FeO(OH)は水と酸素があれば容易に生成される。
・鉄クギを用いて生成実験を行うと、Fe₂O₃はガスバーナーでいくら加熱しても変化がなかっ
たのに対しFeO(OH)は水に浸けておけば半日ほどでオレンジ色のサビが生成され、Fe₂O₃の
生成にはさらなる高温が必要であるとわかった。
・Aso-4、磁鉄鉱、角閃石を水に浸け、空気にさらし経過観察した。数ヶ月経過しても何ら変
化がなかったため、赤色の原因はFeO(OH)ではないと考えた。 成分分析・焼成試験 ①熊本県産業技術センターの協力の下、馬門石、黒や茶、橙色のAso-4の蛍光X線分析とX線
回折を行った。
・蛍光X線分析: どの試料も成分組成はほとんど同一で、鉄を約10%含んでいた。
・X線回折: どの試料からもFe₂O₃の存在をはっきりと確認することができなかった。
②電気炉を用いて馬門石とAso-4を300℃、1,000℃と異なる温度で24時間十分に加熱した。
焼成実験:1,000℃での加熱したものは、どちらの試料も馬門石によく似た赤色に変化。
これは岩石中の鉄が高温酸化によりFe₂O₃に変化したためと考えられ[5][6]、やはり馬門石の色の要因は、岩石中の鉄であると考えた。 現地調査 高温酸化により形成されるFe₂O₃は、熱がこもる中央部に集中した分布、水による酸化でできるFeO(OH)の場合は、水に触れる表層付近に散在した分布になるのではないかと考え、馬門石の分布により、赤い色の成因を考えることにした[7][8]。
今回、道路工事により大規模な露頭が存在し、馬門石の分布を立体的に捉えられた。野外調査の結果、複数地点で馬門石とAso-4の境界を確認できた。境界の傾斜は場所によって水平や斜め、縦などと様々だった。分布は水平、鉛直方向のどちら不連続に散在していた。また、馬門石の中にAso-4が塊状に分布する境界面が見られた。場所によっては、赤い部分と黒い部分が複雑に散在していた。さらに、馬門石と周囲のAso-4の岩相は黒曜石レンズを含む点など全く同じで、異なるのは色だけであった。 薄片の製作・観察 御船町恐竜博物館の協力の下、岩石薄片の製作と偏光顕微鏡観察を行った。その結果、馬門石とAso-4いずれも凝灰岩の特徴である火山ガラスや多孔質の空隙が見られた。 馬門石の形成 これらの結果から、馬門石の形成を総合的に考察する。馬門石の赤色の原因はFe₂O₃で、火砕流として堆積した直後の高温下で、多孔質によって火山ガスと入れ替わり流入してきた酸素と触れた部分が、高温酸化でFe₂O₃を生じて赤い馬門石になったと考えた。十分な酸素を得られなかった部分は、高温であっても黒いAso-4のままであり、赤い部分と黒い部分が複雑に散在するのではないか。
【研究のまとめ】
・馬門石の赤色の原因は鉄で、Fe₂O₃(ヘマタイト)である。
・元々は黒い阿蘇火砕流堆積物が、堆積直後の高温下で、多孔質により火山ガスと入れ替わ
りに空気が流入し、その空気中の酸素を十分に得られた一部のAso-4が高温酸化を起こ
し、内部の鉄がFe₂O₃となり、赤い馬門石が形成された。
・現在の馬門石とAso-4は、高温酸化に十分な酸素を得られたかどうかで分かれた。
【今後の課題】
・なぜ馬門地区などの一部だけでしか馬門石は見られないのか。
・馬門石以外に赤いAso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩はないのか。
・成分分析でFe₂O₃をみる方法はないのか。
【参考文献】
[1]「馬門石 噴火の軌跡に触れる」熊本日日新聞朝刊(2021年6月13日)
[2]高田利夫(1969) 酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性
[3]三沢俊平(1983) 鉄サビ生成の現状と未解明点
[4]鈴木茂(2008)鉄さびの形成過程と構造変化
[5]椙山正孝(1959) 金属材料の高温酸化とその対策
[6]井上勝也(1983) 鉄酸化物の種々相
[7]熊本県地質図(10万分の1) 熊本県地質図編纂委員会(2008)
[8]地理院地図
熊本県宇土市網津町馬門で産出される馬門石(まかどいし)は、約9万年前のAso-4火砕流堆積物の一種とされている。特徴的な赤色をしているが、その理由は不明である。そのため、赤色の原因を探ることにした。過去の文献[1]から赤色の原因は鉄の酸化、中でも火山の付近で見られるFe₂O₃(ヘマタイト)ではないかと仮説を立て研究を始めた。本研究では、Aso-4火砕流堆積物のうち黒い一般的なものをAso—4、赤いものを馬門石とよぶこととする。
【研究内容】
今回は①:文献調査・実験、②成分分析・焼成試験、③現地調査、④薄片の製作・観察の4点から研究を行った。 文献調査・実験 馬門石とAso-4の相違点について実験や野外調査、文献調査で調べた。
・黒曜石や礫を含むなどの岩相的特徴、密度や磁性に大きな違いはなく、違うのは色と硬さ
だけである。
・赤色の鉄の酸化物は、Fe₂O₃、FeO(OH)がある[2][3][4]。Fe₂O₃は鉄の最も酸化している状態で
あり、非常に高温での酸化が必要で、FeO(OH)は水と酸素があれば容易に生成される。
・鉄クギを用いて生成実験を行うと、Fe₂O₃はガスバーナーでいくら加熱しても変化がなかっ
たのに対しFeO(OH)は水に浸けておけば半日ほどでオレンジ色のサビが生成され、Fe₂O₃の
生成にはさらなる高温が必要であるとわかった。
・Aso-4、磁鉄鉱、角閃石を水に浸け、空気にさらし経過観察した。数ヶ月経過しても何ら変
化がなかったため、赤色の原因はFeO(OH)ではないと考えた。 成分分析・焼成試験 ①熊本県産業技術センターの協力の下、馬門石、黒や茶、橙色のAso-4の蛍光X線分析とX線
回折を行った。
・蛍光X線分析: どの試料も成分組成はほとんど同一で、鉄を約10%含んでいた。
・X線回折: どの試料からもFe₂O₃の存在をはっきりと確認することができなかった。
②電気炉を用いて馬門石とAso-4を300℃、1,000℃と異なる温度で24時間十分に加熱した。
焼成実験:1,000℃での加熱したものは、どちらの試料も馬門石によく似た赤色に変化。
これは岩石中の鉄が高温酸化によりFe₂O₃に変化したためと考えられ[5][6]、やはり馬門石の色の要因は、岩石中の鉄であると考えた。 現地調査 高温酸化により形成されるFe₂O₃は、熱がこもる中央部に集中した分布、水による酸化でできるFeO(OH)の場合は、水に触れる表層付近に散在した分布になるのではないかと考え、馬門石の分布により、赤い色の成因を考えることにした[7][8]。
今回、道路工事により大規模な露頭が存在し、馬門石の分布を立体的に捉えられた。野外調査の結果、複数地点で馬門石とAso-4の境界を確認できた。境界の傾斜は場所によって水平や斜め、縦などと様々だった。分布は水平、鉛直方向のどちら不連続に散在していた。また、馬門石の中にAso-4が塊状に分布する境界面が見られた。場所によっては、赤い部分と黒い部分が複雑に散在していた。さらに、馬門石と周囲のAso-4の岩相は黒曜石レンズを含む点など全く同じで、異なるのは色だけであった。 薄片の製作・観察 御船町恐竜博物館の協力の下、岩石薄片の製作と偏光顕微鏡観察を行った。その結果、馬門石とAso-4いずれも凝灰岩の特徴である火山ガラスや多孔質の空隙が見られた。 馬門石の形成 これらの結果から、馬門石の形成を総合的に考察する。馬門石の赤色の原因はFe₂O₃で、火砕流として堆積した直後の高温下で、多孔質によって火山ガスと入れ替わり流入してきた酸素と触れた部分が、高温酸化でFe₂O₃を生じて赤い馬門石になったと考えた。十分な酸素を得られなかった部分は、高温であっても黒いAso-4のままであり、赤い部分と黒い部分が複雑に散在するのではないか。
【研究のまとめ】
・馬門石の赤色の原因は鉄で、Fe₂O₃(ヘマタイト)である。
・元々は黒い阿蘇火砕流堆積物が、堆積直後の高温下で、多孔質により火山ガスと入れ替わ
りに空気が流入し、その空気中の酸素を十分に得られた一部のAso-4が高温酸化を起こ
し、内部の鉄がFe₂O₃となり、赤い馬門石が形成された。
・現在の馬門石とAso-4は、高温酸化に十分な酸素を得られたかどうかで分かれた。
【今後の課題】
・なぜ馬門地区などの一部だけでしか馬門石は見られないのか。
・馬門石以外に赤いAso-4火砕流堆積物の阿蘇溶結凝灰岩はないのか。
・成分分析でFe₂O₃をみる方法はないのか。
【参考文献】
[1]「馬門石 噴火の軌跡に触れる」熊本日日新聞朝刊(2021年6月13日)
[2]高田利夫(1969) 酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性
[3]三沢俊平(1983) 鉄サビ生成の現状と未解明点
[4]鈴木茂(2008)鉄さびの形成過程と構造変化
[5]椙山正孝(1959) 金属材料の高温酸化とその対策
[6]井上勝也(1983) 鉄酸化物の種々相
[7]熊本県地質図(10万分の1) 熊本県地質図編纂委員会(2008)
[8]地理院地図
