13:45 〜 15:15
[O11-P52] 藍鉄鉱の生成条件を探る
キーワード:藍鉄鉱、ゲル法、水質
1 動機
藍鉄鉱という鉱物が好きで、自分で採集、合成することでその成因に迫りたいと考えた。
2 先行研究
謎だらけの藍鉄鉱を追う!⑵(滋賀県立堅田高校理科部.2007)には、「藍鉄鉱はリン酸の供給源となる泥炭層付近に産する」、「藍鉄鉱は鉄分を供給する透水層付近に産する」とある。
3 目的
①自然界における藍鉄鉱の生成条件を探る
②藍鉄鉱の自形結晶を合成する
4 仮説
①藍鉄鉱は生物遺骸に伴って産出する
②ゲル法によって自形結晶の合成が可能である
5 方法
5-①-1.水質調査
器具:パックテスト、水温計、pH計、電気伝導度計
手順:バケツで採水し、リン酸、硝酸態窒素、鉄、COD、水温、pH、電気伝導度の値を測定した。
5-①-2.地質調査、堆積物の成分分析
器具:ハンマー、ねじりガマ、コアサンプラー、鍬 他
手順:古琵琶湖層の火山灰層上下の露頭で藍鉄鉱と堆積物を採取した。お濠の泥を鍬で採取した。さらに、滋賀県立大学の
ご協力で琵琶湖底3地点のボーリングコアを頂いた。堆積物は長浜バイオ大学のご協力で、トルオーグ法、走査型電子顕微鏡(以降「SEM」とする)で元素分析を行った。
5‐②.藍鉄鉱合成実験(詳細な条件は表1に記載)
5-②-1.ケイ酸ゲルの調製
0.86Mケイ酸ナトリウム水溶液にリン酸水素二アンモニウムを添加、攪拌して試験管に分注し、同量の1.0M塩酸で中和する。のち24時間静置する。
5-②-2.寒天、ゼラチンゲルの調製
粉末寒天あるいは粉末ゼラチンをパッケージに記載の通り計量し、記載分量の水とともに加熱する。沸騰したら液をビー
カーに移し、適量のリン酸水素二アンモニウムを加えて攪拌する。のち200mLビーカーに分注し、冷蔵庫で2時間以上冷却する。
5-②-3.硫酸鉄(Ⅱ)水溶液の注入
調製したゲルの上に、表1の濃度の硫酸鉄(Ⅱ)水溶液を駒込ピペットで注ぎ、パラフィルムで密封する。高圧5atmの実験では容器を炭酸飲料用ペットボトルに入れ、滋賀県立大学からお借りしたコンプレッサにつなぐ。濃度、温度、期間、圧力など条件を変えて実験した。
6 結果と考察
6-1.水質・地質調査地点
彦根城の濠10地点を含む県内26地点で採水し、藍鉄鉱の原料となるリン酸や電気伝導度など各値を測定した。詳細はポスターに示す。
6-2.地質調査結果
県内3地点で藍鉄鉱を採集することができた。
安曇川の本流と支流との合流地点付近3か所で産出した。支流の合流地点直下では数㎝以上のノジュールが産出し、合流地点の10m程度上流では数㎜大の結晶集合体が産出した。また、合流地点の10m程度下流では川上で産出した数㎜大の結晶集合体の塊が産出した。
県内18地点(加えてボーリングコア3地点分)の調査、計133試料の分析を行ったが、藍鉄鉱となりうる可給態リン酸と全リンは最大の地点でもリン酸:0.014㎎P₂O₅/100g、全リン:100㎎P/100gと非常に低い値となった。
6-3合成実験結果
①65回の実験で最大0.5㎜に達する結晶を得ることができた。
②寒天ゲルで得られた最大の結晶をSEMで元素マッピングしたところ、得られた結晶はリンと鉄を含むことがわかり、このことから藍鉄鉱であると確認した。
7.考察
①自然界における藍鉄鉱の生成条件
今回の研究では、琵琶湖及び滋賀県の河川の水(彦根城濠除く)は他地点に比べてリン酸に乏しく、古琵琶湖層を含む調査地点の堆積物は可給態リン酸、全リンともに乏しいということが分かった。なお、リンの多い小佐治については、試料に貝化石からリンが滲出したため高い数値が出たと考えられる。藍鉄鉱の産出した3地点のうち、安曇川町の2地点はそれぞれ「安曇川支流の合流地点」「扇状地の扇端部」に位置することから、藍鉄鉱が生成し大きく成長するには、堅田高校理科部の先行研究の条件以外に河川(伏流水)による継続的なリンの供給が関与している可能性がある。
②藍鉄鉱合成に最適なゲルと条件
計65回の実験から、大きな藍鉄鉱結晶の合成には、以下の4つの条件が最適であると考える。
1) 原料濃度は低いほどよい。 2) 高温下がよい。3) ケイ酸では高圧(5atm),寒天では大気圧がよい。
4) 硫酸鉄(Ⅱ)水溶液にアスコルビン酸を加える(アスコルビン酸添加は寒天でのみ実施)
5) ゲルの中では寒天が最適、合成期間も短く済む。
8.今後の課題・展望
・ 他の藍鉄鉱産地においても流水の関与が見られるか比較検討していきたい。
・ アスコルビン酸など添加物で結晶形態の制御ができないか検討していきたい。
9.謝辞
丸尾雅啓先生・後藤直成先生(滋賀県立大学)、奈良篤樹先生(長浜バイオ大学)他多くの先生方に御指導、御協力いただきました。
10.参考文献
・謎だらけの藍鉄鉱を追う!⑵(淡水泥層中に生成する鉱物について)滋賀県立堅田高校理科部
・ゲル中の結晶成長 日本結晶学会誌 可知祐次
藍鉄鉱という鉱物が好きで、自分で採集、合成することでその成因に迫りたいと考えた。
2 先行研究
謎だらけの藍鉄鉱を追う!⑵(滋賀県立堅田高校理科部.2007)には、「藍鉄鉱はリン酸の供給源となる泥炭層付近に産する」、「藍鉄鉱は鉄分を供給する透水層付近に産する」とある。
3 目的
①自然界における藍鉄鉱の生成条件を探る
②藍鉄鉱の自形結晶を合成する
4 仮説
①藍鉄鉱は生物遺骸に伴って産出する
②ゲル法によって自形結晶の合成が可能である
5 方法
5-①-1.水質調査
器具:パックテスト、水温計、pH計、電気伝導度計
手順:バケツで採水し、リン酸、硝酸態窒素、鉄、COD、水温、pH、電気伝導度の値を測定した。
5-①-2.地質調査、堆積物の成分分析
器具:ハンマー、ねじりガマ、コアサンプラー、鍬 他
手順:古琵琶湖層の火山灰層上下の露頭で藍鉄鉱と堆積物を採取した。お濠の泥を鍬で採取した。さらに、滋賀県立大学の
ご協力で琵琶湖底3地点のボーリングコアを頂いた。堆積物は長浜バイオ大学のご協力で、トルオーグ法、走査型電子顕微鏡(以降「SEM」とする)で元素分析を行った。
5‐②.藍鉄鉱合成実験(詳細な条件は表1に記載)
5-②-1.ケイ酸ゲルの調製
0.86Mケイ酸ナトリウム水溶液にリン酸水素二アンモニウムを添加、攪拌して試験管に分注し、同量の1.0M塩酸で中和する。のち24時間静置する。
5-②-2.寒天、ゼラチンゲルの調製
粉末寒天あるいは粉末ゼラチンをパッケージに記載の通り計量し、記載分量の水とともに加熱する。沸騰したら液をビー
カーに移し、適量のリン酸水素二アンモニウムを加えて攪拌する。のち200mLビーカーに分注し、冷蔵庫で2時間以上冷却する。
5-②-3.硫酸鉄(Ⅱ)水溶液の注入
調製したゲルの上に、表1の濃度の硫酸鉄(Ⅱ)水溶液を駒込ピペットで注ぎ、パラフィルムで密封する。高圧5atmの実験では容器を炭酸飲料用ペットボトルに入れ、滋賀県立大学からお借りしたコンプレッサにつなぐ。濃度、温度、期間、圧力など条件を変えて実験した。
6 結果と考察
6-1.水質・地質調査地点
彦根城の濠10地点を含む県内26地点で採水し、藍鉄鉱の原料となるリン酸や電気伝導度など各値を測定した。詳細はポスターに示す。
6-2.地質調査結果
県内3地点で藍鉄鉱を採集することができた。
安曇川の本流と支流との合流地点付近3か所で産出した。支流の合流地点直下では数㎝以上のノジュールが産出し、合流地点の10m程度上流では数㎜大の結晶集合体が産出した。また、合流地点の10m程度下流では川上で産出した数㎜大の結晶集合体の塊が産出した。
県内18地点(加えてボーリングコア3地点分)の調査、計133試料の分析を行ったが、藍鉄鉱となりうる可給態リン酸と全リンは最大の地点でもリン酸:0.014㎎P₂O₅/100g、全リン:100㎎P/100gと非常に低い値となった。
6-3合成実験結果
①65回の実験で最大0.5㎜に達する結晶を得ることができた。
②寒天ゲルで得られた最大の結晶をSEMで元素マッピングしたところ、得られた結晶はリンと鉄を含むことがわかり、このことから藍鉄鉱であると確認した。
7.考察
①自然界における藍鉄鉱の生成条件
今回の研究では、琵琶湖及び滋賀県の河川の水(彦根城濠除く)は他地点に比べてリン酸に乏しく、古琵琶湖層を含む調査地点の堆積物は可給態リン酸、全リンともに乏しいということが分かった。なお、リンの多い小佐治については、試料に貝化石からリンが滲出したため高い数値が出たと考えられる。藍鉄鉱の産出した3地点のうち、安曇川町の2地点はそれぞれ「安曇川支流の合流地点」「扇状地の扇端部」に位置することから、藍鉄鉱が生成し大きく成長するには、堅田高校理科部の先行研究の条件以外に河川(伏流水)による継続的なリンの供給が関与している可能性がある。
②藍鉄鉱合成に最適なゲルと条件
計65回の実験から、大きな藍鉄鉱結晶の合成には、以下の4つの条件が最適であると考える。
1) 原料濃度は低いほどよい。 2) 高温下がよい。3) ケイ酸では高圧(5atm),寒天では大気圧がよい。
4) 硫酸鉄(Ⅱ)水溶液にアスコルビン酸を加える(アスコルビン酸添加は寒天でのみ実施)
5) ゲルの中では寒天が最適、合成期間も短く済む。
8.今後の課題・展望
・ 他の藍鉄鉱産地においても流水の関与が見られるか比較検討していきたい。
・ アスコルビン酸など添加物で結晶形態の制御ができないか検討していきたい。
9.謝辞
丸尾雅啓先生・後藤直成先生(滋賀県立大学)、奈良篤樹先生(長浜バイオ大学)他多くの先生方に御指導、御協力いただきました。
10.参考文献
・謎だらけの藍鉄鉱を追う!⑵(淡水泥層中に生成する鉱物について)滋賀県立堅田高校理科部
・ゲル中の結晶成長 日本結晶学会誌 可知祐次
