日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P53] 静岡県立森林公園における持続可能な土砂管理のためのスリットダムの最適設計

*勝谷 恵伍1、宮野 智矢1 (1.浜松学芸高等学校)

キーワード:土砂管理、スリットダム

背景・目的
静岡県立森林公園では、流路上に豪雨にともなう滝状の段差の形成や表土のリル浸食が確認された。地盤の脆弱性と流水による急速な侵食によって、大量の土砂が下流の親水池へと流出し、親水池における生態系への影響が問題となっている。しかし、安易な構造物の設置による土砂流出問題の解決は困難である。これは、設置した構造物による過剰な土砂堆積が、流路の閉塞、洪水等のリスクの向上や、下流域への不適切な土砂供給・侵食進行等に繋がるためである。一方、土砂流出に対し有効な対策が取られない場合、従来通り過剰な土砂が下流へ流出してしまう。本研究の目的は、スリットダムという透過型砂防ダムに着目し、下流域への土砂流出と堆積のバランスを最適化し、親水池の自然環境の保全に貢献することである。
スリットダムは、土砂を適度に透過させる設計となっており、各種条件を微調整することで、上流から下流、そして最終的には海洋環境における土砂管理の持続可能性を高められると考えた。
2.実験方法
(1)現地調査
森林公園内において、段差の高低差や侵食状況さらに流速を計測した。本調査は2023年5月から段差が崩落した2024年9月まで実施した。
(2)模型実験1
作製した180 cm× 15 cmの水路模型内に、現地調査で得られた地形データをもとに、モルタルで県立森林公園内の段差周辺の流路を再現した。スリットダムを模した爪楊枝(太さ約2 mm)を間隔3 mm、高さ2.5 cmで並べた時の河床の侵食具合を計測し、スリットダムを設置しなかった場合の侵食具合と比較した。
(3)汎用土石流シミュレーションkanako
kanakoを用いて、スリットダムの高さ・設置位置・個数の3項目をそれぞれ変更した場合に、スリットダムが無い場合とで河床変動量の差である土砂流出防止効果を算出し、比較した。また、不透過型ダムを比較対象としてスリットダムの土砂流出量に対する特徴を抽出した。
(4)模型実験2
スリットダム1個の土砂流出率を検証するため、固定床水路とスリットダムを用いた模型実験を実施した。一般的に河川では開口部の形状が正方形または長方形のスリットダムが多く設置されている。本実験では、まず開口部の形状が正方形のとき、森林公園内の段差の地形条件での土砂流出率を検証した。その結果、ダムに過剰な土砂が堆積してしまったため流出率を高める必要があった。そこで、開口部を45°回転させ設置し、開口部がひし形になるようにした。これによりスリット面積は等しいが土砂の通過しやすさが増加するという仮説を立て検証した。実験ではあらかじめ設置した土砂に対してどの程度土砂がダムを通過したか測定した。実験は、開口部と土砂粒径の比率が1の前後の場合で実施し、設置土砂と流出土砂の割合を土砂流出率として算出し、比較した。
結果・考察
(1)現地調査
段差ははじめに深さ(鉛直)方向へ侵食が進み、次に幅(水平)方向へ侵食が進むことを確認した。また、調査開始時から約1年で段差は5m以上後退した。
(2)模型実験1
治山ダムを設置することで段差の後退および侵食速度を著しく低下させることが可能であった。
(3)汎用土石流シミュレータ
不透過型ダムの場合は、ダムの高さが高いほど土砂流出防止効果が高かった。一方で、ダムの設置個数が増加しても単純に土砂流出防止効果は増加しなかった。これはダム個数よりもダムの設置位置の影響が高かったためだと考えられる。また、ダムの設置位置は上流側に2個、下流側に1個設置した場合に最もダムの土砂流出防止効果が大きかった。スリットダムの場合は、ダムの高さ・個数ともに単純に土砂流出防止効果が比例せず、設置位置に関してもダムを上流下流側に設置するかで顕著な差はみられなかった。また、スリットダムの土砂流出防止効果は不透過型ダムに比べ低かった。
(4)模型実験2
土砂粒径と開口部の比が1より小さい場合、正方形開口部のほうがひし形開口部と比較して土砂流出率が高く、仮説とは異なる結果になった。一方で、土砂粒径と開口部の比が1より大きい場合は開口部形状に関わらず著しく土砂流出率が低かった。
考察・今後の展望
模型実験2から、スリットダムの形状を変更することで土砂流出率が変化することが明らかになった。この原因は実質的な粒径と開口部の変化に起因すると考え、粒径と開口部と土砂流出率の関係を調べたが、土砂粒径と開口部の比は直接的な原因ではなかった。そこで原因は流水とスリットのつなぎ目部分との衝突による水流の分散だと考えた。ダムの通過前後での流速差をPIVにより解析したところ、流速分布に差が確認できた。今後は、定量的に水流の影響を検証し、結果の差異の原因を究明する。また、複数のダムの相互作用による適切な土砂供給の実現可能性を検証し、効果的な土砂管理を目指す。さらに、上流から海洋までを統合的に管理することができる土砂循環モデルの確立を目指す。