13:45 〜 15:15
[O11-P71] 10万円で作成可能な二次元検出器「SAKURA」の開発及び性能評価
キーワード:宇宙線、ミュオグラフィー
1.序論
ミュオグラフィとは、ミュー粒子が物質を通過する際の透過率の変化を解析し、対象内部の構造を可視化する技術である。非破壊で内部構造を調査可能であることから、考古学・地球科学・産業応用など多様な分野で注目を集めている。ミュオグラフィを行うには、ミュー粒子の到来方向を判別できる位置検出器が必要である。こうした装置は高性能である一方、開発には数百万円がかかるため、中高生が用いるのは難しい。本研究では、中高生でも使用可能な10万円相当の小型二次元検出器「SAKURA」(図1)を開発し、KEK(高エネルギー加速器研究機構)のPF-AR(Photon Factory Advanced Ring)ビームラインを用いて、ビーム位置特定能力の検証を行った。また、SAKURAを用いた実験提案が、CERNが主催する高校生向けコンペティション「Beamline for Schools」に採択され、2024年9月にCERNのT10ビームラインにて、SAKURAの位置特定能力を定量的に測定した。
2.SAKURAの構成と仕組み
SAKURAは5×5に配列したCsI(ヨウ化セシウム)シンチレータ25個を用い、その四方にSiPM(シリコンフォトマルチプライヤー)を配置している。CsIシンチレータは、発光量が他の材料に比べて大きく、これにより高精度な位置特定が可能となる。放射線がSAKURAを通過すると、通過位置のシンチレータが発光する。光はシンチレータ間の空気層によって減衰しながら伝播し、最終的に4つのSiPM(シリコンフォトマルチプライヤ―)に到達するため、各SiPMに到達する光の強度は、放射線が通過した位置に応じて異なる。各SiPMの光強度から放射線の通過位置を特定するには式1を用いた。また、データ取得には約1kHzの信号処理が可能なRed Pitayaを用いた。
KEKでの予備実験
SAKURAの位置特定能力の定性的な検証を目的とし、KEKのPF-ARビームラインを用いた予備実験を実施した。2GeV、1kHzの電子ビームを水平幅1cm、垂直高さ5cmに整形し、ビームの照射位置を水平方向に1cmずつ移動させながら、計6か所に5分間ずつ照射した。解析の結果、信号の分布がビーム照射位置と定性的に一致していることが確認された(図2)。この結果により、SAKURAがビーム位置を適切に特定できる可能性があることが示された。
3.実験方法
SAKURAの定量的な分解能測定は、CERNのT10ビームラインで実験を行い評価した。5 GeV・2 kHzのミュオンビームを用いて、SAKURA検出器上の19点に照射、 各照射位置で500イベント分のデータを取得した。同ビームライン上に、SAKURAの他に200 μm〜 300 μm程度の高い位置分解能を持つDWC(Drift Wire Chamber)を2台配置し、比較を行った。ビームラインの様子は図3に示す。このとき、SAKURAのデータはRed Pitayaと同時にDWCと同じデータ処理システムにつないだオシロスコープでも記録し、DWCのデータとの粒子ごとの比較も行えるようにした。
4.CERNでの実験結果
得られたRedPitaya、Oscilloscope、そしてDWCのヒートマップは図5のとおりとなった。x軸とy軸それぞれについて、OscilloscopeとDWCの位置残差を調べて、照射位置ごとに図6のような残差のヒストグラムを作成して位置分解能の解析を行った。その結果、位置分解能とx軸方向の位置オフセットに関しては位置依存性は確認されなかったが、y軸に関しては位置オフセットに一定の位置依存が確認された(図?)。そのため、y軸方向においては位置の補正を行い、それぞれの方向のデータを統合して位置分解能を求めたところ、x軸方向では~cm、y軸方向では~cmの位置分解能が得られた。このようにx軸方向とy軸方向で差が生じたため、検出器の改良やより詳細な測定が必要である。また図7に示すとおり、Red Pitayaが定性的ではあるものの二次元的な分解能を持つことを示すことができた。今後は検出器の改良に加えて、J-PARCにて、分解能をより正確に評価するために統計量を確保し、追加実験を行なう予定である。
5.謝辞
本研究に際して、加速キッチン及びメンターの河野理夏子さんと貫輪美博さんに研究をサポートいただきました。CERNのBeamline for Schools、高エネルギー加速器研究機構のPF-ARテストビームラインにビーム実験機会をご提供いただきました。
ミュオグラフィとは、ミュー粒子が物質を通過する際の透過率の変化を解析し、対象内部の構造を可視化する技術である。非破壊で内部構造を調査可能であることから、考古学・地球科学・産業応用など多様な分野で注目を集めている。ミュオグラフィを行うには、ミュー粒子の到来方向を判別できる位置検出器が必要である。こうした装置は高性能である一方、開発には数百万円がかかるため、中高生が用いるのは難しい。本研究では、中高生でも使用可能な10万円相当の小型二次元検出器「SAKURA」(図1)を開発し、KEK(高エネルギー加速器研究機構)のPF-AR(Photon Factory Advanced Ring)ビームラインを用いて、ビーム位置特定能力の検証を行った。また、SAKURAを用いた実験提案が、CERNが主催する高校生向けコンペティション「Beamline for Schools」に採択され、2024年9月にCERNのT10ビームラインにて、SAKURAの位置特定能力を定量的に測定した。
2.SAKURAの構成と仕組み
SAKURAは5×5に配列したCsI(ヨウ化セシウム)シンチレータ25個を用い、その四方にSiPM(シリコンフォトマルチプライヤー)を配置している。CsIシンチレータは、発光量が他の材料に比べて大きく、これにより高精度な位置特定が可能となる。放射線がSAKURAを通過すると、通過位置のシンチレータが発光する。光はシンチレータ間の空気層によって減衰しながら伝播し、最終的に4つのSiPM(シリコンフォトマルチプライヤ―)に到達するため、各SiPMに到達する光の強度は、放射線が通過した位置に応じて異なる。各SiPMの光強度から放射線の通過位置を特定するには式1を用いた。また、データ取得には約1kHzの信号処理が可能なRed Pitayaを用いた。
KEKでの予備実験
SAKURAの位置特定能力の定性的な検証を目的とし、KEKのPF-ARビームラインを用いた予備実験を実施した。2GeV、1kHzの電子ビームを水平幅1cm、垂直高さ5cmに整形し、ビームの照射位置を水平方向に1cmずつ移動させながら、計6か所に5分間ずつ照射した。解析の結果、信号の分布がビーム照射位置と定性的に一致していることが確認された(図2)。この結果により、SAKURAがビーム位置を適切に特定できる可能性があることが示された。
3.実験方法
SAKURAの定量的な分解能測定は、CERNのT10ビームラインで実験を行い評価した。5 GeV・2 kHzのミュオンビームを用いて、SAKURA検出器上の19点に照射、 各照射位置で500イベント分のデータを取得した。同ビームライン上に、SAKURAの他に200 μm〜 300 μm程度の高い位置分解能を持つDWC(Drift Wire Chamber)を2台配置し、比較を行った。ビームラインの様子は図3に示す。このとき、SAKURAのデータはRed Pitayaと同時にDWCと同じデータ処理システムにつないだオシロスコープでも記録し、DWCのデータとの粒子ごとの比較も行えるようにした。
4.CERNでの実験結果
得られたRedPitaya、Oscilloscope、そしてDWCのヒートマップは図5のとおりとなった。x軸とy軸それぞれについて、OscilloscopeとDWCの位置残差を調べて、照射位置ごとに図6のような残差のヒストグラムを作成して位置分解能の解析を行った。その結果、位置分解能とx軸方向の位置オフセットに関しては位置依存性は確認されなかったが、y軸に関しては位置オフセットに一定の位置依存が確認された(図?)。そのため、y軸方向においては位置の補正を行い、それぞれの方向のデータを統合して位置分解能を求めたところ、x軸方向では~cm、y軸方向では~cmの位置分解能が得られた。このようにx軸方向とy軸方向で差が生じたため、検出器の改良やより詳細な測定が必要である。また図7に示すとおり、Red Pitayaが定性的ではあるものの二次元的な分解能を持つことを示すことができた。今後は検出器の改良に加えて、J-PARCにて、分解能をより正確に評価するために統計量を確保し、追加実験を行なう予定である。
5.謝辞
本研究に際して、加速キッチン及びメンターの河野理夏子さんと貫輪美博さんに研究をサポートいただきました。CERNのBeamline for Schools、高エネルギー加速器研究機構のPF-ARテストビームラインにビーム実験機会をご提供いただきました。
