日本地球惑星科学連合2025年大会

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[O-11] 高校生ポスター発表

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)、鈴木 智恵子(海洋研究開発機構)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)


13:45 〜 15:15

[O11-P73] 彩雲のモデル実験における定量化~光源と雲生成条件の変化~

*井上 怜1 (1.中央大学附属高等学校)

キーワード:彩雲、再現実験、定量化

1 研究背景・目的
 彩雲は,巻積雲・高積雲などの輪郭に当たった太陽光が雲粒によって回折・干渉することで雲に色がついて見える現象である.彩雲の色や色幅は雲形に依存する特徴がある.彩雲の再現実験は大気光学現象の理解の導入として取り上げられることが多いが,雲や光源の条件を定量的に扱った例はほぼ無い.
 先行研究として,ゴム風船がしぼむ時の減圧を利用してフラスコ内に雲を作り,光を照射して彩雲を作る報告(山下,2004)がある.減圧は正確だが,光源や気圧以外の雲生成における条件は変えていない.ペットボトルを用いた例として札幌啓成高校(2023)がある.この報告では彩雲を観察する角度と色の関係は数値化したが,雲の条件に関して定量的ではない.本研究の予備実験ではペットボトルの気圧差を利用して雲の粒子サイズと彩色の関係を知ることを試みたが,正確な計測や分析が困難であった.
 そこで本研究では,デシケーターを用いて減圧し,気圧差・水蒸気量・雲の体積をそれぞれ3段階ずつ変化させ,太陽光と白色LED光源を用いて比較し,彩度が高く持続性のある彩雲を作るための条件を見出すことを目的とした.
2研究方法・結果
2-1雲生成条件,光源を変化させた実験と結果
(1)アクリルケースの中に濡らした雑巾を入れ密閉する.
(2)デシケーターの中に気圧計とアクリルケースを入れ,雲核に模した線香の煙を3秒間加える.
(3)真空ポンプを用いて減圧し,雲を生成する.
(4)光源を照射し,光源・雲・観察者を一直線上にして観察する.(図1)
 上記の手順において,雑巾を濡らす水量を10,50,100mL,アクリルケースの枚数を1,2,3枚,減圧度合を100,200,300hPa,それぞれ変化させる.なお,水量は大気中の水蒸気量(mL),アクリルケースの枚数は生成可能な雲の体積(1158,2316,3474cm),減圧度合は大気と地上との気圧差(hPa)を表す.
(4)の光源の変化においては,比較的鮮やかな彩雲ができた水量50mL・体積2316cm・気圧差200hPaの条件下で生成した雲に太陽光とLEDの2種類の光源を照射し比較した.他の条件で生成した雲にはLEDのみ当て,雲生成の条件に焦点をあてて比較した.
 結果として,表1のようになった.光源を変化させた場合,観察された色に大きな違いは無かった.
2-2光源と気圧差を変化させた実験と結果
 気圧差を2-1より細かく設定し,色幅の変化や2種類の光源を照射することで,回折による色の変化の違いを分析することを目的とした.
(1)デシケーターに気圧計と50mLの水で濡らした雑巾を入れ,雲核に模した線香の煙を3秒間加える.
(2)真空ポンプにより6段階減圧し(50,100,150,200,250,300hPa)雲を生成する.
(3)光源2種類(太陽光,LEDライト)を照射し,光源・雲・観察者を一直線上にして観察する.
 光源に着目すると,太陽光では全色のスペクトルが見られたが,LEDを光源とした場合は緑,紫,マゼンダ,橙色に色が偏った.また気圧差に着目すると,どちらの光源においても気圧差を大きくするにつれて色幅が狭くなった(図2).
3考察
 本研究の方法で,適切な水蒸気量を用いて減圧すれば確実に彩雲を生成できる.従来の方法よりも安定して彩雲が生成できるのは,彩雲ができる範囲が広いことで観察が容易であるためと考える.体積を大きくすると雲量が増える.よって水蒸気量や気圧差が小さいときは1枚あたりに生じる雲量が少ないため体積を大きくした方が彩雲は観察しやすい.逆に水蒸気量や気圧差が大きいときは,1枚当たりの雲量が多いうえに雲を重ねてしまうことでミー散乱が生じ彩色しなかったのだと考える.また,回折は波長と粒子サイズに依存する.気圧差が大きいほど色の幅が狭くなったのは,気圧差が大きいほど雲の粒子サイズが小さくなったからだと考える.
 光源によって彩雲の色が変化するのは,光源のスペクトルが異なる(図3)からだと考える.太陽光のスペクトルは比較的均一であるため彩雲もすべてのスペクトルが観察でき,白色LEDは青,緑のスペクトルが極端に多いため彩雲も色が偏ったのだと推察する.
4今後の課題および展望
 本研究では彩雲に加え光環も再現された.彩雲と光環がどの条件で変化するのかを見つけ,意図して彩雲を再現できるようにする.
 実際の雲によってできる彩雲と再現実験によってできた彩雲を照らし合わせ,再現の妥当性を確認する.
5参考文献
山下晃.2004:フラスコ内に作る彩雲と光環.天気51.5.361-362.
北海道札幌啓成高等学校.2023:彩雲の見方による色の変化.
6謝辞
 本研究を進めるにあたり,田島丈年先生・三輪貴信先生(中央大学附属中学校高等学校教員)に終始多大なご指導を賜った.ここに深謝する.