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[O11-P74] 偏西風波動のモデル実験の簡易化〜サーモグラフィーの活用〜
キーワード:偏西風波動 、回転水槽実験、サーモグラフィー
Ⅰ研究背景・目的
偏西風波動は中緯度の気象に大きな影響を与えるため,その性質が活発に研究されている.南北の気温傾度が強くなると偏西風は大きく蛇行し南北流型となる.さらに大きく蛇行すると寒冷低気圧が南下し暖かい高気圧が北上して,偏西風から切り離される.これをブロッキング現象といい,低気圧や高気圧が長期に停滞し異常気象をもたらす(宮澤1991, 丸山1995).
偏西風波動のモデル実験として回転水槽実験がある.これは,図1のような三重構造の水槽のaに湯,bに水,cに氷水を入れ回転させるものである.このとき,bの水面では偏西風波動ができる原理と同様に波打つ.そのため,bの水面の様子を観察することで偏西風波動の解析が可能になる(小倉1984).
一般的に,bの水面の様子を観察にはアルミニウム粉末が用いる.だが,アルミニウム粉末は人体には有害であり,爆発する危険性もあるため扱いが難しい.本研究ではサーモグラフィーを活用することで,より簡明な実験が可能なことを示す.
Ⅱ実験方法
本研究では,図2のように北極上空から見た北半球を水槽で再現した.まず,図1のaに湯,bに水,cに氷水をいれた.aは赤道付近,bは中緯度付近,cは北極付近をそれぞれ見立てている.cを5℃,aを変化させて,aとcの温度差を(i)25℃,(ⅱ)35℃,(ⅲ)45℃,(ⅳ)55℃にしてそれぞれ1時間,水槽を反時計回りに回転させた(表1).aとcの温度は実験中に変化するため,常に温度計でそれぞれの温度を測り,変化したときには湯または氷を追加することで条件として設定した温度を保つようにした.そのときのbをサーモグラフィーで観察した.その他の条件は統一するため,(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ),(ⅳ)は全て水深40mm,回転速度5rpm,水路幅115mmとした.
Ⅲ結果
結果を図3に示す.回転開始から数分間は波動が安定しないため,記録はしていない.なお,(ⅲ),(ⅳ)のときの波動数4の波動は記録終了のときまで続いた.そのため,記録は実際に波動が続いた時間よりも短くなっていると考えられる.
Ⅳ考察
(ⅲ),(ⅳ)では波動数4がかなり安定したのに対し,(ⅰ),(ⅱ)ではそれが見られなかった.このことから,温度差が拡大するにつれて波動が安定すること,または回転開始から安定するまでの時間が早くなることが考えられる.
温度差が大きいときに,波動数は4で長時間安定することがわかる.波動数は温度差や回転速度・水深・装置のスケールにより変わることが既知であるので,本研究で4が安定した理由は考えない.
波動数4が安定する前は波動数5が形成されていたことが多い.そのため,波動は波動がない状態から波動数4へ変化しているわけではなく,波動数5の一部が変化して波動数4へとなったと考えられる.波動数5が安定することで,その後波動数4が安定するのだ.
Ⅴ結論・課題
サーモグラフィーを用いることで偏西風波動のモデル実験を円滑に進められる.また,水槽の中心部と最外層の温度差が大きいとき,波動数4の波動が安定することがわかる.さらに,波動数4の波動の安定の前には波動数5の波動が安定することがわかる.
本実験方法では,波動の速さや向きは観察できない.そこがアルミニウム粉末に劣る点である.アルミニウム粉末とサーモグラフィーにはそれぞれメリット・デメリットがある.そのため,研究の目的によってどちらを利用するかは選択すべきである.
Ⅵ引用文献
小倉義光(1984). 『一般気象学』. 東京大学出版会.
宮澤清治(1991). 『天気図と気象の本』. 国際地学協会.
丸山健人ほか(1995). 『大気とその運動』. 東海大学出版会.
Ⅶ謝辞
本研究を進めるにあたり,田島丈年先生・三輪貴信先生(中央大学附属中学校高等学校教員)に終始多大なご指導を賜った.ここに深謝する.
偏西風波動は中緯度の気象に大きな影響を与えるため,その性質が活発に研究されている.南北の気温傾度が強くなると偏西風は大きく蛇行し南北流型となる.さらに大きく蛇行すると寒冷低気圧が南下し暖かい高気圧が北上して,偏西風から切り離される.これをブロッキング現象といい,低気圧や高気圧が長期に停滞し異常気象をもたらす(宮澤1991, 丸山1995).
偏西風波動のモデル実験として回転水槽実験がある.これは,図1のような三重構造の水槽のaに湯,bに水,cに氷水を入れ回転させるものである.このとき,bの水面では偏西風波動ができる原理と同様に波打つ.そのため,bの水面の様子を観察することで偏西風波動の解析が可能になる(小倉1984).
一般的に,bの水面の様子を観察にはアルミニウム粉末が用いる.だが,アルミニウム粉末は人体には有害であり,爆発する危険性もあるため扱いが難しい.本研究ではサーモグラフィーを活用することで,より簡明な実験が可能なことを示す.
Ⅱ実験方法
本研究では,図2のように北極上空から見た北半球を水槽で再現した.まず,図1のaに湯,bに水,cに氷水をいれた.aは赤道付近,bは中緯度付近,cは北極付近をそれぞれ見立てている.cを5℃,aを変化させて,aとcの温度差を(i)25℃,(ⅱ)35℃,(ⅲ)45℃,(ⅳ)55℃にしてそれぞれ1時間,水槽を反時計回りに回転させた(表1).aとcの温度は実験中に変化するため,常に温度計でそれぞれの温度を測り,変化したときには湯または氷を追加することで条件として設定した温度を保つようにした.そのときのbをサーモグラフィーで観察した.その他の条件は統一するため,(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ),(ⅳ)は全て水深40mm,回転速度5rpm,水路幅115mmとした.
Ⅲ結果
結果を図3に示す.回転開始から数分間は波動が安定しないため,記録はしていない.なお,(ⅲ),(ⅳ)のときの波動数4の波動は記録終了のときまで続いた.そのため,記録は実際に波動が続いた時間よりも短くなっていると考えられる.
Ⅳ考察
(ⅲ),(ⅳ)では波動数4がかなり安定したのに対し,(ⅰ),(ⅱ)ではそれが見られなかった.このことから,温度差が拡大するにつれて波動が安定すること,または回転開始から安定するまでの時間が早くなることが考えられる.
温度差が大きいときに,波動数は4で長時間安定することがわかる.波動数は温度差や回転速度・水深・装置のスケールにより変わることが既知であるので,本研究で4が安定した理由は考えない.
波動数4が安定する前は波動数5が形成されていたことが多い.そのため,波動は波動がない状態から波動数4へ変化しているわけではなく,波動数5の一部が変化して波動数4へとなったと考えられる.波動数5が安定することで,その後波動数4が安定するのだ.
Ⅴ結論・課題
サーモグラフィーを用いることで偏西風波動のモデル実験を円滑に進められる.また,水槽の中心部と最外層の温度差が大きいとき,波動数4の波動が安定することがわかる.さらに,波動数4の波動の安定の前には波動数5の波動が安定することがわかる.
本実験方法では,波動の速さや向きは観察できない.そこがアルミニウム粉末に劣る点である.アルミニウム粉末とサーモグラフィーにはそれぞれメリット・デメリットがある.そのため,研究の目的によってどちらを利用するかは選択すべきである.
Ⅵ引用文献
小倉義光(1984). 『一般気象学』. 東京大学出版会.
宮澤清治(1991). 『天気図と気象の本』. 国際地学協会.
丸山健人ほか(1995). 『大気とその運動』. 東海大学出版会.
Ⅶ謝辞
本研究を進めるにあたり,田島丈年先生・三輪貴信先生(中央大学附属中学校高等学校教員)に終始多大なご指導を賜った.ここに深謝する.
