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[O11-P84] 機器分析による粘土鉱物学的解析 ~”嵯峨野焼”の実現に向けて~
キーワード:森林土壌、粘土鉱物、X線回折分析、オートグラフ、侵食
1 序論
陶土はその土地で採取されたものを用いることが多い。しかし、京焼の陶芸家は“京都には土がない”という(谷口, 2015)。現状、工業的な需要にこたえる大量の陶土を採取できる場所はない。嵯峨野高等学校校有林(以下、校有林)は、陶芸家から「それ自体では扱いにくい」とされる赤い粘土質の土を持ち、過去に陶土を採取していた来歴がある(谷口ら,2024)。この校有林土を有効活用するため、本研究では校有林土の物理化学的性質を明らかにし、嵯峨野焼の可能性を探った。
粘土鉱物の同定にはX線回折、示差熱分析、赤外線吸収スペクトル分析など多くの方法が用いられる。大久保(2017)は、校有林土の粘土画分についてX線回折の結果を報告している。本研究では、校有林土のもつ物理化学的性質について、熱分析と精密万能試験機を用いて明らかにすることを第一目的とした。
また佐山(2020)は、市販の敷石が校有林の登山道整備に有効であることを報告するとともに、敷石を持ち込むことによる、校有林への影響を懸念している。そこで、嵯峨野焼を活用した敷石について検討することを第二の目的とした。
2 方法
熱重量示差熱分析DTG-60AH (株式会社島津製作所)を用いて、校有林土、赤土、白土の熱特性を評価した。比較物質は白金、空気雰囲気、窒素雰囲気、室温から1200℃まで毎分20℃で昇温した。
敷石には、斜面にとどまりやすい形状として、星型と正四面体を採用した。成形した校有林土と赤土について、卓上マッフル炉(株式会社ダイケン)を用いて、風乾、105、350、550、750、950、1150(℃)の熱処理を行った。圧縮強度試験は精密万能試験機オートグラフAGX-V2(株式会社島津製作所)を用いた。敷石として強度が十分かを確認するために行った。また、制作した敷石の有効性について、校有林内において侵食防止試験を実施した。
3 結果及び考察
校有林土の粘土画分を用いたX線回折結果から、校有林土は2:1型層状ケイ酸塩鉱物のVermiculite(Vt)やIllite(It)、1:1型層状ケイ酸塩であるKaolinite(Kt)、鉄水酸化物であるLepidocrocite(Lp)、およびQuartz(Qz)を含むことが明らかにされている(大久保,2017)。校有林土の熱分析では、90-100°C、270℃付近、500℃付近、580℃付近、910℃付近にピークが確認された。一般に、1:1型鉱物中のOHのほうが2:1型層OHの脱出のほうが低温で起こる(白水,1988)。校有林土において、脱水によるピークが比較的低温から始まっていることから、1:1型鉱物の割合が高いと考えられる。大久保(2017)が報告している鉱物種と本研究のDTAデータから、カオリナイトのピークがなだらかであること、かつ低温域から始まっていることから、粘土鉱物の結晶度が低く、他の鉱物の存在が想定される。
自作の敷石は、焼成温度に依存して強度が高まることを確認した。また、圧縮強度試験の結果から、敷石として十分な強度があることがわかった。さらに、侵食防止試験の結果、星型と三角錐型の敷石に流出に大きな差はなく、どちらも敷石としての効果が十分に期待できると考えられた。
4 結論
本研究により、校有林土の詳細な粘土鉱物学的な解析ができた。今後、赤外線吸収スペクトルによる分析や選択溶解処理を用いた実験を行うことが望まれる。また本研究により、嵯峨野焼の利活用として、敷石の可能性を見いだすことができた。今後、環境にやさしい利活用を考えるのならば、全ての工程を校有林で行うべきであり、校有林の焚火試験において、中心温度が550℃であることを確認していることから、校有林内での焼成試験を実施する予定である。
5 参考文献
1)大久保美鈴,2017.京都市内の里山における土壌の評価.スーパーサイエンスラボ研究報告書集2016, 京都府立嵯峨野高等学校. 4‐6.
2)谷口悟・渡邊海月・上本南美乃・中山拓海・山脇正資,2024. 赤土山の土壌物理性評価 ~“嵯峨野焼”の実現を目指して~. 京都地学教育研究会,京都地学41号
3) 白水晴雄,1988.粘土鉱物学-粘土科学の基礎-.朝倉書店.
4)J.B. Dixon and S.B. Weed ,1989. Minerals in Soil Environment Second Ed. Soil Science Society of America Madison, Wisconsin, USA.
5)佐山葉,2020. 森林研究活動に伴うヒューマンインパクトの把握とその回復.スーパーサイエンスラボ研究報告書集2019, 京都府立嵯峨野高等学校. 39‐41.
6 謝辞
本研究における機器分析は、株式会社島津製作所と京都府教育委員会の連携事業により実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。本研究は、文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール支援事業の助成金により遂行しました。
陶土はその土地で採取されたものを用いることが多い。しかし、京焼の陶芸家は“京都には土がない”という(谷口, 2015)。現状、工業的な需要にこたえる大量の陶土を採取できる場所はない。嵯峨野高等学校校有林(以下、校有林)は、陶芸家から「それ自体では扱いにくい」とされる赤い粘土質の土を持ち、過去に陶土を採取していた来歴がある(谷口ら,2024)。この校有林土を有効活用するため、本研究では校有林土の物理化学的性質を明らかにし、嵯峨野焼の可能性を探った。
粘土鉱物の同定にはX線回折、示差熱分析、赤外線吸収スペクトル分析など多くの方法が用いられる。大久保(2017)は、校有林土の粘土画分についてX線回折の結果を報告している。本研究では、校有林土のもつ物理化学的性質について、熱分析と精密万能試験機を用いて明らかにすることを第一目的とした。
また佐山(2020)は、市販の敷石が校有林の登山道整備に有効であることを報告するとともに、敷石を持ち込むことによる、校有林への影響を懸念している。そこで、嵯峨野焼を活用した敷石について検討することを第二の目的とした。
2 方法
熱重量示差熱分析DTG-60AH (株式会社島津製作所)を用いて、校有林土、赤土、白土の熱特性を評価した。比較物質は白金、空気雰囲気、窒素雰囲気、室温から1200℃まで毎分20℃で昇温した。
敷石には、斜面にとどまりやすい形状として、星型と正四面体を採用した。成形した校有林土と赤土について、卓上マッフル炉(株式会社ダイケン)を用いて、風乾、105、350、550、750、950、1150(℃)の熱処理を行った。圧縮強度試験は精密万能試験機オートグラフAGX-V2(株式会社島津製作所)を用いた。敷石として強度が十分かを確認するために行った。また、制作した敷石の有効性について、校有林内において侵食防止試験を実施した。
3 結果及び考察
校有林土の粘土画分を用いたX線回折結果から、校有林土は2:1型層状ケイ酸塩鉱物のVermiculite(Vt)やIllite(It)、1:1型層状ケイ酸塩であるKaolinite(Kt)、鉄水酸化物であるLepidocrocite(Lp)、およびQuartz(Qz)を含むことが明らかにされている(大久保,2017)。校有林土の熱分析では、90-100°C、270℃付近、500℃付近、580℃付近、910℃付近にピークが確認された。一般に、1:1型鉱物中のOHのほうが2:1型層OHの脱出のほうが低温で起こる(白水,1988)。校有林土において、脱水によるピークが比較的低温から始まっていることから、1:1型鉱物の割合が高いと考えられる。大久保(2017)が報告している鉱物種と本研究のDTAデータから、カオリナイトのピークがなだらかであること、かつ低温域から始まっていることから、粘土鉱物の結晶度が低く、他の鉱物の存在が想定される。
自作の敷石は、焼成温度に依存して強度が高まることを確認した。また、圧縮強度試験の結果から、敷石として十分な強度があることがわかった。さらに、侵食防止試験の結果、星型と三角錐型の敷石に流出に大きな差はなく、どちらも敷石としての効果が十分に期待できると考えられた。
4 結論
本研究により、校有林土の詳細な粘土鉱物学的な解析ができた。今後、赤外線吸収スペクトルによる分析や選択溶解処理を用いた実験を行うことが望まれる。また本研究により、嵯峨野焼の利活用として、敷石の可能性を見いだすことができた。今後、環境にやさしい利活用を考えるのならば、全ての工程を校有林で行うべきであり、校有林の焚火試験において、中心温度が550℃であることを確認していることから、校有林内での焼成試験を実施する予定である。
5 参考文献
1)大久保美鈴,2017.京都市内の里山における土壌の評価.スーパーサイエンスラボ研究報告書集2016, 京都府立嵯峨野高等学校. 4‐6.
2)谷口悟・渡邊海月・上本南美乃・中山拓海・山脇正資,2024. 赤土山の土壌物理性評価 ~“嵯峨野焼”の実現を目指して~. 京都地学教育研究会,京都地学41号
3) 白水晴雄,1988.粘土鉱物学-粘土科学の基礎-.朝倉書店.
4)J.B. Dixon and S.B. Weed ,1989. Minerals in Soil Environment Second Ed. Soil Science Society of America Madison, Wisconsin, USA.
5)佐山葉,2020. 森林研究活動に伴うヒューマンインパクトの把握とその回復.スーパーサイエンスラボ研究報告書集2019, 京都府立嵯峨野高等学校. 39‐41.
6 謝辞
本研究における機器分析は、株式会社島津製作所と京都府教育委員会の連携事業により実施されました。この場をお借りして御礼申し上げます。本研究は、文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール支援事業の助成金により遂行しました。
