13:45 〜 15:15
[O11-P85] 大規模フレアをもたらす候補黒点群の探索
キーワード:太陽、フレア、黒点群、太陽活動領域、太陽磁場
1.目的
太陽活動を正確に予測することによって通信障害などの被害を抑えることができる。そこで、過去のデータを元に太陽活動のタイミングをより正確に予測することを目指し、光球面に現れる黒点群に着目した。黒点群に関して、コリオリ効果によって先行極が赤道方向に偏る、ジョイの法則が知られているが、統計的には分散を大きくする黒点群も多く存在している[1]。本研究ではこの分散に着目し、大規模フレアをもたらす候補黒点群をより明確に絞り込める観測量を見出してみたい。
2.方法
太陽活動第24周期にあたる、2008年1月から2017年10月までの期間、武蔵高等学校での口径10cm望遠鏡を用いた生徒による太陽表面白色光の黒点スケッチ記録のうち、形状なども明瞭に観測され磁場画像[2]を得ることができた延べ約250の黒点群について、磁場画像を目印にそのコリオリ効果などによる先行極の赤道方向への傾斜(軸傾斜角[3])を計測した。
この測定値のうち軸傾斜の決定誤差が大きくなる太陽像の東西縁にあるものを除き、黒点群別の軸傾斜角平均値を算出した(図1)。
次に、黒点群のマウントウィルソン分類、およびマッキントッシュ分類cパラメータにおける主要なタイプによって軸傾斜角に特徴が現れるかを調べた(図2)。なお、cパラメータがcのものはδ型黒点群を含んでいる。
3.結果
図1より、ジョイの法則[1]を確認でき、その回帰線は先行研究[4]のものとほぼ一致した。
図2a-2dより、単極の小規模な黒点群を除き、大きなスケールの黒点群においては各タイプごとにみれば軸傾斜角がある程度強い相関を以て2つの回帰線に従う傾向があることがわかった。
4.議論
4-1 ジョイの法則に関して
図1より得られた結果は、太陽磁場の強度が長期的なスケールでも一定であること[4]および、計測手法に大きな誤りはなかったことを表すと考えられる。
4-2 東西方向の広がりに関して
図2の結果について、これが黒点群の大きさによるものなのではないかと考えた。そこでこれらの固有差を議論するべく図1の回帰線の傾きから緯度による傾斜角の増大分を減算した軸傾斜角を算出した。この補正軸傾斜角とスケッチより計測した黒点群の広がりとの関係をグラフ化した(図3a)ものの、ここからは有意な相関が確認できなかった。
そこで、経験的にばらつきが大きな単極性の群及びデータ数の少ない群を除くと、東西方向の広がりが5-15度程度の範囲ではほとんどの黒点群について2つの回帰線に誤差の範囲で従っていることがわかった(図3b)。ここから、5-15度程度の広がりのスケールでは黒点群の大きさが軸傾斜角と正の相関をもつという可能性を示唆できた。
大きさのスケールが小さな群に関しては、上部での機構などでばらつきが生じていると考えられる。スケールが大きな群に関して、軸傾斜角が比較的小さくなる傾向がある群が多くみられた(図3b 赤)。
4-3 候補黒点群の探索
3次元的な広がりをもとにこれらを更に議論するため、Hα線による彩層上部の画像[2]を参照した。すると、軸傾斜角が小さく外れている大きなスケールの群(図3b 赤)に関して、その磁束管が3次元的には光球付近に薄く横たわっているものであり、傾斜角が大きく外れているものは、磁気浮力が大きく上部まで高く広がっているものである可能性があることがわかった。
以上より、軸傾斜角が光球面での構造に対して大きな黒点群(図3b 橙)は、密集した磁束管をもち、δ型黒点群と同様に大規模フレアの発生確率が高いものであるといえる。
5.結論
本校での黒点スケッチをもとにジョイの法則を確認し、軸傾斜角の分散に関する議論を深めることができた。また、その帰結として軸傾斜角が大規模フレアをもたらす候補黒点群の新たな選定手法となりうることを明らかにした。
今後は、図2,3において、多くで2つの回帰線によって表された2種類の形成の違いを深く考察し、また彩層部とのつながりをより慎重に検討し、まとまったデータを提示できるようにしたい。
主要参考文献(出典略)
[1]Hale G E et al, The Magnetic Polarity of Sun-Spots,1919.
[2]川口市立科学館太陽画像一覧, http://www.kawaguchi.science.museum.
[3]Robert F Howard,Axial tilt angle of sunspot groups, 1991.
[4]D‘Silva & Choudhuri,A theoretical model for tilts of bipolar magnetic regions, 1993.
太陽活動を正確に予測することによって通信障害などの被害を抑えることができる。そこで、過去のデータを元に太陽活動のタイミングをより正確に予測することを目指し、光球面に現れる黒点群に着目した。黒点群に関して、コリオリ効果によって先行極が赤道方向に偏る、ジョイの法則が知られているが、統計的には分散を大きくする黒点群も多く存在している[1]。本研究ではこの分散に着目し、大規模フレアをもたらす候補黒点群をより明確に絞り込める観測量を見出してみたい。
2.方法
太陽活動第24周期にあたる、2008年1月から2017年10月までの期間、武蔵高等学校での口径10cm望遠鏡を用いた生徒による太陽表面白色光の黒点スケッチ記録のうち、形状なども明瞭に観測され磁場画像[2]を得ることができた延べ約250の黒点群について、磁場画像を目印にそのコリオリ効果などによる先行極の赤道方向への傾斜(軸傾斜角[3])を計測した。
この測定値のうち軸傾斜の決定誤差が大きくなる太陽像の東西縁にあるものを除き、黒点群別の軸傾斜角平均値を算出した(図1)。
次に、黒点群のマウントウィルソン分類、およびマッキントッシュ分類cパラメータにおける主要なタイプによって軸傾斜角に特徴が現れるかを調べた(図2)。なお、cパラメータがcのものはδ型黒点群を含んでいる。
3.結果
図1より、ジョイの法則[1]を確認でき、その回帰線は先行研究[4]のものとほぼ一致した。
図2a-2dより、単極の小規模な黒点群を除き、大きなスケールの黒点群においては各タイプごとにみれば軸傾斜角がある程度強い相関を以て2つの回帰線に従う傾向があることがわかった。
4.議論
4-1 ジョイの法則に関して
図1より得られた結果は、太陽磁場の強度が長期的なスケールでも一定であること[4]および、計測手法に大きな誤りはなかったことを表すと考えられる。
4-2 東西方向の広がりに関して
図2の結果について、これが黒点群の大きさによるものなのではないかと考えた。そこでこれらの固有差を議論するべく図1の回帰線の傾きから緯度による傾斜角の増大分を減算した軸傾斜角を算出した。この補正軸傾斜角とスケッチより計測した黒点群の広がりとの関係をグラフ化した(図3a)ものの、ここからは有意な相関が確認できなかった。
そこで、経験的にばらつきが大きな単極性の群及びデータ数の少ない群を除くと、東西方向の広がりが5-15度程度の範囲ではほとんどの黒点群について2つの回帰線に誤差の範囲で従っていることがわかった(図3b)。ここから、5-15度程度の広がりのスケールでは黒点群の大きさが軸傾斜角と正の相関をもつという可能性を示唆できた。
大きさのスケールが小さな群に関しては、上部での機構などでばらつきが生じていると考えられる。スケールが大きな群に関して、軸傾斜角が比較的小さくなる傾向がある群が多くみられた(図3b 赤)。
4-3 候補黒点群の探索
3次元的な広がりをもとにこれらを更に議論するため、Hα線による彩層上部の画像[2]を参照した。すると、軸傾斜角が小さく外れている大きなスケールの群(図3b 赤)に関して、その磁束管が3次元的には光球付近に薄く横たわっているものであり、傾斜角が大きく外れているものは、磁気浮力が大きく上部まで高く広がっているものである可能性があることがわかった。
以上より、軸傾斜角が光球面での構造に対して大きな黒点群(図3b 橙)は、密集した磁束管をもち、δ型黒点群と同様に大規模フレアの発生確率が高いものであるといえる。
5.結論
本校での黒点スケッチをもとにジョイの法則を確認し、軸傾斜角の分散に関する議論を深めることができた。また、その帰結として軸傾斜角が大規模フレアをもたらす候補黒点群の新たな選定手法となりうることを明らかにした。
今後は、図2,3において、多くで2つの回帰線によって表された2種類の形成の違いを深く考察し、また彩層部とのつながりをより慎重に検討し、まとまったデータを提示できるようにしたい。
主要参考文献(出典略)
[1]Hale G E et al, The Magnetic Polarity of Sun-Spots,1919.
[2]川口市立科学館太陽画像一覧, http://www.kawaguchi.science.museum.
[3]Robert F Howard,Axial tilt angle of sunspot groups, 1991.
[4]D‘Silva & Choudhuri,A theoretical model for tilts of bipolar magnetic regions, 1993.
