14:45 〜 15:00
[O12-05] 2025年ミャンマー中部の地震によるタイ・バンコク首都圏の超高層建物の地震応答と長周期地震動
★招待講演
キーワード:2025年ミャンマー地震、バンコク、超高層建物、長周期地震動、深部地盤、表面波
2025年ミャンマー地震では,震央距離が1000km以上も離れたタイ・バンコク首都圏において多くの超高層建物が大きく揺れ,一部には被害も生じた.とくに,建設途中の建物が崩壊し,犠牲者もでた.また,多くの超高層建物の屋上にあるプールから水が溢流した.こうした超高層建物の地震時の挙動は,多くの市民によって撮影され,その動画がYouTubeなどで公開されている.バンコク首都圏周辺では,規模の大きい歴史地震は発生しておらず,今回の超高層建物の被害は社会的にも大きな関心事となっている.この地域は,厚い堆積層から成る深部地盤が存在し,周期1秒以上の長周期地震動が増幅することが知られており(Poovarodom and Jirasakjamroonsri, 2015; Subedi et al., 2021; Ornthammarath et al., 2023),深部地盤で増幅した長周期地震動がバンコク首都圏の超高層建物の大きな地震応答に影響している可能性が非常に高いと考えられる.本研究では,バンコク首都圏の超高層建物の動画の分析から超高層建物の地震時の振動特性を推定し,超高層建物および地盤での微動観測を実施し,超高層建物の地震応答と長周期地震動の関係を検討した.
バンコク首都圏の超高層建物の地震時の挙動を理解するために,YouTubeなどで公開されている動画を収集した.建物の全体が動画に入っていることや水の溢流によって固有周期が同定可能であることなどを基準として,34棟の超高層建物の動画(8秒から60秒間)を得た.これらの建物は,バンコク首都圏中心部の広い範囲に分布しており,特定の地区に集中しているわけではない.また,上述の崩壊した建物は,建物全体が撮影された動画を入手できず,現在のところ,地震時の挙動に関する分析はできていない.得られた動画をAndaya et al. (2022)による2つの方法で分析した.それらは,建物の屋上にあるプールからの水の溢流の動画による固有周期の推定とビデオ画像のピクセルトラッキングによる建物変位波形の推定である.Andaya et al. (2022)では,マニラ首都圏での同様の超高層建物の動画分析にこの方法を適用しており,方法の妥当性は確認されている.水の溢流動画分析によって26棟の地震時の固有周期を得た.また,ピクセルトラッキング分析から,5棟の変位波形を推定し,そのスペクトルから固有周期を得た.なお,この4棟のうち,3棟では水溢流分析からも固有周期が推定されている.水溢流が生じた建物は,100~150mの高さが多く,推定固有周期は3~5秒であった.検討したなかで最も高い超高層建物は,高さ300m程度であり,その固有周期は6.5秒程度となった.これらの超高層建物の一部では,屋上のプールのガラス製のフェンスの落下や複数の建物を繋ぐ渡り廊下の損傷などの非構造部材での被害が認められた.
2025年5月上旬には,上記の超高層建物において微動観測を実施した.速度計を用いた地表面での単点微動観測を13棟の建物付近で実施した.長周期帯域の微動も十分に観測できるようにVSE-15L1(東京測振製)を用いた.また,5棟では,建物屋上(4地点)と地下室(1点)での微動観測も実施することができた.建物での微動観測では,屋上部にJU410(白山工業製)を,地下室にJEP6A3(ミツトヨ製)を設置した.地表面での微動観測データの水平上下スペクトル比には,多くの地点で周期7~10秒付近と2-3秒付近にピークが認められた.この特徴は,既往の調査研究でも指摘されており,長周期地震動を大きく増幅する深部地盤の特性を有していることがわかった.バンコク首都圏では,この地震による強震記録も得られており,周期6-8秒の長周期表面波と考えられる成分が卓越している(丸山,2025).震源からの表面波がバンコク首都圏の特有の深部地盤の影響で大きく増幅したことがこの地域において超高層建物が大きく揺れた原因であると考えられる.なお,建物での微動記録は現在分析中であり,詳しくは発表時に説明する.
2025年ミャンマー地震では,震央から遠く離れたバンコク首都圏で長周期地震動が卓越し,超高層建物が大きく揺れた.こうした比較的遠い地震による超高層建物の揺れは,シンガポール(Megawati et al., 2003)やマニラ首都圏(Andaya et al., 2022)でも観測されており,アジアのメガシティに林立する超高層建物で共通の問題であると考えられる.今後,地震学と地震工学分野の研究者が共同して,長周期地震動評価や長大構造物の地震リスク評価・被害対策を考えることが期待される.
バンコク首都圏の超高層建物の地震時の挙動を理解するために,YouTubeなどで公開されている動画を収集した.建物の全体が動画に入っていることや水の溢流によって固有周期が同定可能であることなどを基準として,34棟の超高層建物の動画(8秒から60秒間)を得た.これらの建物は,バンコク首都圏中心部の広い範囲に分布しており,特定の地区に集中しているわけではない.また,上述の崩壊した建物は,建物全体が撮影された動画を入手できず,現在のところ,地震時の挙動に関する分析はできていない.得られた動画をAndaya et al. (2022)による2つの方法で分析した.それらは,建物の屋上にあるプールからの水の溢流の動画による固有周期の推定とビデオ画像のピクセルトラッキングによる建物変位波形の推定である.Andaya et al. (2022)では,マニラ首都圏での同様の超高層建物の動画分析にこの方法を適用しており,方法の妥当性は確認されている.水の溢流動画分析によって26棟の地震時の固有周期を得た.また,ピクセルトラッキング分析から,5棟の変位波形を推定し,そのスペクトルから固有周期を得た.なお,この4棟のうち,3棟では水溢流分析からも固有周期が推定されている.水溢流が生じた建物は,100~150mの高さが多く,推定固有周期は3~5秒であった.検討したなかで最も高い超高層建物は,高さ300m程度であり,その固有周期は6.5秒程度となった.これらの超高層建物の一部では,屋上のプールのガラス製のフェンスの落下や複数の建物を繋ぐ渡り廊下の損傷などの非構造部材での被害が認められた.
2025年5月上旬には,上記の超高層建物において微動観測を実施した.速度計を用いた地表面での単点微動観測を13棟の建物付近で実施した.長周期帯域の微動も十分に観測できるようにVSE-15L1(東京測振製)を用いた.また,5棟では,建物屋上(4地点)と地下室(1点)での微動観測も実施することができた.建物での微動観測では,屋上部にJU410(白山工業製)を,地下室にJEP6A3(ミツトヨ製)を設置した.地表面での微動観測データの水平上下スペクトル比には,多くの地点で周期7~10秒付近と2-3秒付近にピークが認められた.この特徴は,既往の調査研究でも指摘されており,長周期地震動を大きく増幅する深部地盤の特性を有していることがわかった.バンコク首都圏では,この地震による強震記録も得られており,周期6-8秒の長周期表面波と考えられる成分が卓越している(丸山,2025).震源からの表面波がバンコク首都圏の特有の深部地盤の影響で大きく増幅したことがこの地域において超高層建物が大きく揺れた原因であると考えられる.なお,建物での微動記録は現在分析中であり,詳しくは発表時に説明する.
2025年ミャンマー地震では,震央から遠く離れたバンコク首都圏で長周期地震動が卓越し,超高層建物が大きく揺れた.こうした比較的遠い地震による超高層建物の揺れは,シンガポール(Megawati et al., 2003)やマニラ首都圏(Andaya et al., 2022)でも観測されており,アジアのメガシティに林立する超高層建物で共通の問題であると考えられる.今後,地震学と地震工学分野の研究者が共同して,長周期地震動評価や長大構造物の地震リスク評価・被害対策を考えることが期待される.