17:15 〜 19:15
[PAE18-P08] 表層降着による原始惑星系円盤と巨大ガス惑星の重元素濃縮

キーワード:重元素、原始惑星系円盤、表層降着、ガス惑星
太陽系や系外の惑星が原始惑星系円盤のどこで形成し、どのように現在の移動してきたのかは惑星形成論にける最も重要な問いの1 つである。ガス惑星の大気組成は、その惑星が円盤のどこでガスを集積したかを反映すると考えられる。ガス惑星の大気組成は天文観測から
制約できるため、ガス惑星は惑星の形成と移動を紐解く特に重要なターゲットである。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST) などによる系外の恒星近傍のガス惑星大気観測は、質量の小さい惑星ほど大気の重元素濃縮度が高い傾向を示しており、重元素濃度は中心星の100倍弱に及ぶ (e.g., Kempton & Knutson 2024)。
ガス惑星の大気形成に関するこれまでの理論研究は、重元素(水素・ヘリウム以外の元素)のキャリアであるダストの付着力が高いことを想定し、cmサイズまで成長したダストの中心星方向への素早い落下・昇華によって円盤内側領域のガスの重元素濃度の上昇を説明してきた (e.g., Booth et al. 2017; Schneider & Bitsch 2021)。しかし、近年の原始惑星系円盤の電波偏光観測 (e.g., Stephens et al. 2017, 2023)は、0.1–1 mmサイズのダストが円盤に多量に存在していることを示しており、上記のシナリオの仮定が成立しない可能性がある。
本研究では、円盤観測と整合的な付着力の低いダストを想定した、新しい円盤ガス重元素濃縮シナリオを提案する。従来の円盤モデルは、ガス降着流の速度が鉛直方向に一様であることを仮定してきた。しかし、近年の磁気流体シミュレーションは、ガス降着は電離度の高い円盤表層付近で集中して起こる可能性を明らかにしている。このような表層降着円盤では、ガスよりダストが円盤に長期に残留する傾向にある (Okuzumi 2025)。このことから、表層降着円盤の内側領域では、ダストの供給する重元素蒸気の濃度も上昇すると期待できる。 本研究では、この予想を検証するため、表層降着円盤における2成分のガス・ダストの輸送を計算可能なモデルを構築した。特に、主要な重元素の1つである酸素に着目し、酸素のキャリアである氷をまとったダストの合体・成長と動径方向の移流、昇華によって放出する水蒸気の移流・拡散を計算に考慮した。さらに、近年の円盤電波偏光観測の結果に基づき、ダストの付着力が低い(限界付着速度が0.3 m/s) ことを仮定した。
その結果、一様降着円盤ではスノーラインより内側の水蒸気濃度が2 wt% までしか上昇しなかったのに対し、表層降着円盤では最大で20 wt% に達することがわかった。これは、表層降着円盤では一様降着円盤と比べ、ダストの移流時間スケールが大きく、氷を運ぶダストが円盤内により長く残留するためである。さらに、水蒸気濃度が20 wt% に達した段階でも、巨大ガス惑星が形成されるのに十分な量のガスが円盤内に残りうることがわかった。また、表層降着円盤における円盤ガスの水蒸気濃度は、円盤質量が大きいうちは初期円盤の濃度を下回るのに対し、円盤質量が減少するにつれて上昇することがわかった。これは、ガスがダストより速く降着することによって水蒸気濃度が初期に低下するが、円盤ガスの減少とともにダストの供給する水蒸気の円盤内濃度が相対的に上昇するためである。このトレンドは、観測から示されている系外惑星の質量と大気重元素濃縮度の間の相関を定性的に説明する。
制約できるため、ガス惑星は惑星の形成と移動を紐解く特に重要なターゲットである。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST) などによる系外の恒星近傍のガス惑星大気観測は、質量の小さい惑星ほど大気の重元素濃縮度が高い傾向を示しており、重元素濃度は中心星の100倍弱に及ぶ (e.g., Kempton & Knutson 2024)。
ガス惑星の大気形成に関するこれまでの理論研究は、重元素(水素・ヘリウム以外の元素)のキャリアであるダストの付着力が高いことを想定し、cmサイズまで成長したダストの中心星方向への素早い落下・昇華によって円盤内側領域のガスの重元素濃度の上昇を説明してきた (e.g., Booth et al. 2017; Schneider & Bitsch 2021)。しかし、近年の原始惑星系円盤の電波偏光観測 (e.g., Stephens et al. 2017, 2023)は、0.1–1 mmサイズのダストが円盤に多量に存在していることを示しており、上記のシナリオの仮定が成立しない可能性がある。
本研究では、円盤観測と整合的な付着力の低いダストを想定した、新しい円盤ガス重元素濃縮シナリオを提案する。従来の円盤モデルは、ガス降着流の速度が鉛直方向に一様であることを仮定してきた。しかし、近年の磁気流体シミュレーションは、ガス降着は電離度の高い円盤表層付近で集中して起こる可能性を明らかにしている。このような表層降着円盤では、ガスよりダストが円盤に長期に残留する傾向にある (Okuzumi 2025)。このことから、表層降着円盤の内側領域では、ダストの供給する重元素蒸気の濃度も上昇すると期待できる。 本研究では、この予想を検証するため、表層降着円盤における2成分のガス・ダストの輸送を計算可能なモデルを構築した。特に、主要な重元素の1つである酸素に着目し、酸素のキャリアである氷をまとったダストの合体・成長と動径方向の移流、昇華によって放出する水蒸気の移流・拡散を計算に考慮した。さらに、近年の円盤電波偏光観測の結果に基づき、ダストの付着力が低い(限界付着速度が0.3 m/s) ことを仮定した。
その結果、一様降着円盤ではスノーラインより内側の水蒸気濃度が2 wt% までしか上昇しなかったのに対し、表層降着円盤では最大で20 wt% に達することがわかった。これは、表層降着円盤では一様降着円盤と比べ、ダストの移流時間スケールが大きく、氷を運ぶダストが円盤内により長く残留するためである。さらに、水蒸気濃度が20 wt% に達した段階でも、巨大ガス惑星が形成されるのに十分な量のガスが円盤内に残りうることがわかった。また、表層降着円盤における円盤ガスの水蒸気濃度は、円盤質量が大きいうちは初期円盤の濃度を下回るのに対し、円盤質量が減少するにつれて上昇することがわかった。これは、ガスがダストより速く降着することによって水蒸気濃度が初期に低下するが、円盤ガスの減少とともにダストの供給する水蒸気の円盤内濃度が相対的に上昇するためである。このトレンドは、観測から示されている系外惑星の質量と大気重元素濃縮度の間の相関を定性的に説明する。
