17:15 〜 19:15
[PCG19-P10] ハレアカラT60望遠鏡のファイバー面分光器を用いた水星Na外圏大気の時空間変動の観測
キーワード:水星、地上観測、昼間観測
水星はアルカリ金属を含む非常に希薄な外圏大気を有している。特に中性NaのD線(589.0nm, 589.6nm)による共鳴散乱発光は明るく、地上の中小口径望遠鏡でも観測可能である。地球磁気圏と比較して小さい水星磁気圏は、太陽風との相互作用により数分のオーダーで変動していると推定され、中性の外圏大気も同様の時間スケールで変動すると予想される。これまでの地上観測では、水星Na外圏大気に南北の両極にピークを示すダブルピーク(DP)発光が見られることがあり、南北輝度比は数十分のスケールで変化する。この時間スケールは、Na生成要因の1つが磁気圏由来のイオンスパッタリングによるとする場合のそれと一致しうる。
従来の地上望遠鏡観測では、スリット分光によって空間・時間変動が捉えられてきた。この手法で2次元空間分布を捉えるにはスリットの移動が必要で、水星全球の分光撮像観測には約1時間要する。従来観測されてきた数分オーダーの変動はスリット位置を固定した狭視野観測で得られたものであり、全球分布の変動観測には新たな手段が必要となる。
私たちは、東北大学60cm望遠鏡(T60)にファイバー面分光器と補償光学(Adaptive Optics)システムを結合させ、水星Na外圏大気の全球空間分布の変動を数分スケールで捉えることを目指した開発を進めてきた。2026年末のBepiColombo探査機の水星周回軌道投入後には、この探査機による外圏大気リモート観測および太陽風・磁気圏in-situ観測と協調した観測を行うことが目標である。
T60はハワイ・マウイ島ハレアカラ山頂(海抜3,040m)に位置する。この望遠鏡にはファイバー視野集積器と結合した波長分解能67,000の可視高分散分光器を備えており、遠隔操作で継続的観測が可能である。ファイバー視野集積器は1ファイバーあたり1.5”×1.5”の視野を持ち、90本のファイバーを2次元(10×9)に配列することで15”×13.5”の視野を分光する。本装置には昼間の荒れたシーイングを補正するためAOシステムを結合させている。このシステムは開発途上だが、2024年秋には昼間でもFWHM~2”程度の空間分解能を達成した。
本装置を用いて、2024年11月12日 03:34-08:02(HST)に水星Na外圏大気の試験観測を行った。太陽離角は22.2度、視直径は6.2”で、観測時間内に水星の高度は26度から88度(太陽の高度は47度から70度)へ変化した。観測の1サイクルは(1)視野中心に水星を捉えた4フレーム、(2)水星周辺の背景光(スカイ)4フレーム、(3)較正用白色光4フレームを(3)→(1)→(2)→(1)の順で構成した。1フレームあたりの積分時間を1分とし、それぞれ4フレームずつ連続して取得することで1データを取得する。また、1サイクルは約30分である。連続して10サイクル分の観測を行って得た(1)の20データのうち、失敗データを除いて17データを水星観測データとして取得した。
分光データの解析は、(a) 水星を捉えたスペクトルから背景となる地球大気の散乱光をその明るさの時間変化を考慮して除去した後、(b) 水星表面の反射スペクトル(連続光)から水星外圏大気のNa発光(NaD2, NaD1輝線)を分離し、(c) 水星表面反射光とNa大気発光それぞれの2次元分布を導出する。この結果、Na大気発光は水星表面反射光より広がって分布する様子が確認できた。2025年1月現在、水星輝度分布モデル(Hapkeモデル)を表面反射光と比較することで、絶対発光強度の校正およびディスク位置を決定する解析スキーム構築を進めている。本講演では、全球規模でのNa大気発光の面分布(特に南北比)と先行研究との比較に踏み込んだ報告を行うことを目指している。
なお、この試験観測では最小10分間隔で水星Na外圏大気観測を行った。今後の実観測では常に10分以下スケールでの観測を行うための観測シーケンスの改善を検討している。また、本試験観測で得られた知見を元に、ファイバー光学系の変更による空間分解能・視野範囲の改定を予定しており、その状況も併せて報告する。
従来の地上望遠鏡観測では、スリット分光によって空間・時間変動が捉えられてきた。この手法で2次元空間分布を捉えるにはスリットの移動が必要で、水星全球の分光撮像観測には約1時間要する。従来観測されてきた数分オーダーの変動はスリット位置を固定した狭視野観測で得られたものであり、全球分布の変動観測には新たな手段が必要となる。
私たちは、東北大学60cm望遠鏡(T60)にファイバー面分光器と補償光学(Adaptive Optics)システムを結合させ、水星Na外圏大気の全球空間分布の変動を数分スケールで捉えることを目指した開発を進めてきた。2026年末のBepiColombo探査機の水星周回軌道投入後には、この探査機による外圏大気リモート観測および太陽風・磁気圏in-situ観測と協調した観測を行うことが目標である。
T60はハワイ・マウイ島ハレアカラ山頂(海抜3,040m)に位置する。この望遠鏡にはファイバー視野集積器と結合した波長分解能67,000の可視高分散分光器を備えており、遠隔操作で継続的観測が可能である。ファイバー視野集積器は1ファイバーあたり1.5”×1.5”の視野を持ち、90本のファイバーを2次元(10×9)に配列することで15”×13.5”の視野を分光する。本装置には昼間の荒れたシーイングを補正するためAOシステムを結合させている。このシステムは開発途上だが、2024年秋には昼間でもFWHM~2”程度の空間分解能を達成した。
本装置を用いて、2024年11月12日 03:34-08:02(HST)に水星Na外圏大気の試験観測を行った。太陽離角は22.2度、視直径は6.2”で、観測時間内に水星の高度は26度から88度(太陽の高度は47度から70度)へ変化した。観測の1サイクルは(1)視野中心に水星を捉えた4フレーム、(2)水星周辺の背景光(スカイ)4フレーム、(3)較正用白色光4フレームを(3)→(1)→(2)→(1)の順で構成した。1フレームあたりの積分時間を1分とし、それぞれ4フレームずつ連続して取得することで1データを取得する。また、1サイクルは約30分である。連続して10サイクル分の観測を行って得た(1)の20データのうち、失敗データを除いて17データを水星観測データとして取得した。
分光データの解析は、(a) 水星を捉えたスペクトルから背景となる地球大気の散乱光をその明るさの時間変化を考慮して除去した後、(b) 水星表面の反射スペクトル(連続光)から水星外圏大気のNa発光(NaD2, NaD1輝線)を分離し、(c) 水星表面反射光とNa大気発光それぞれの2次元分布を導出する。この結果、Na大気発光は水星表面反射光より広がって分布する様子が確認できた。2025年1月現在、水星輝度分布モデル(Hapkeモデル)を表面反射光と比較することで、絶対発光強度の校正およびディスク位置を決定する解析スキーム構築を進めている。本講演では、全球規模でのNa大気発光の面分布(特に南北比)と先行研究との比較に踏み込んだ報告を行うことを目指している。
なお、この試験観測では最小10分間隔で水星Na外圏大気観測を行った。今後の実観測では常に10分以下スケールでの観測を行うための観測シーケンスの改善を検討している。また、本試験観測で得られた知見を元に、ファイバー光学系の変更による空間分解能・視野範囲の改定を予定しており、その状況も併せて報告する。