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[PCG19-P11] 熱圏He観測に向けた近赤外レーザーヘテロダイン分光器の開発

キーワード:熱圏、ヘリウム、ヘテロダイン、分光器、開発、近赤外
地球の上部熱圏(高度300~500 km)は、宇宙空間と地球大気圏との境界に位置し、宇宙と下層大気、双方からの影響が複雑に絡み合う相互作用領域である。この領域は、宇宙へ消失する大気のリザーバであるため、熱圏変動と大気消失過程の理解は、惑星大気進化の解明に重要である。近年では、上部熱圏に分布する準安定Heの1083nm輝線の光学観測により、中規模の磁気嵐においても下層大気の影響が予想を上回る速度で熱圏に影響を及ぼし得ることが明らかになった(Nishiyama et al., 2024)。一方で、地上からの観測手段は依然として限られており、特に風速や温度場の継続的な観測は皆無である。
準安定Heは、電子衝突や太陽風粒子として降り込むHeイオンの再結合によって生成される。寿命が7800秒と長く、光化学反応も限られているため、熱圏のトレーサーとして有用である。1083nm輝線は、OH輝線と近接しているため従来の分光器では分離が困難であり、Heの定量的な観測には不十分であった。本研究の目的は、近赤外レーザーへテロダイン分光法を新たに開発することで、従来機に比べて波長分解能を3桁以上改善し、OH輝線と分離したHe観測を実現することである。また、超高波長分解能観測によりHe輝線プロファイルを完全分解することで、世界で初めてドップラーシフト・ドップラー幅の両方から直接的に風速・温度場を導出することを企図する。衛星観測(Dynamics Explorer 2など)によると、上部熱圏の垂直風速は最大で100 m/s、大部分が30 m/s以内と報告されており、風速観測には30 m/sの精度が必要である。
赤外レーザーヘテロダイン分光法は、観測対象からの赤外光と局発赤外光(LO)の光を重ね合わせ、その周波数の差となる中間周波数成分を信号として電波分光する手法であり、1083nmにおいて10⁷以上の分解能を得ることができる。本研究発表では、He輝線の観測に必要なレーザーの特性評価試を実施した結果と、今後行う予定であるヘテロダイン信号評価試験の結果を報告する。
レーザー特性評価試験では、観測波長を決定する半導体レーザーの波長可変範囲、波長分解能を決定する波長安定度を測定した。その結果、レーザーの波長可変範囲は1082.907~1083.806 nmであり、ターゲットとなるHe輝線(輝線位置:1082.908 nm, 1083.025 nm, 1083.034 nm)OH輝線(輝線位置:1082.918 nm, 1082.933 nm, 1083.123 nm, 1083.139 nm)を十分カバーできることが分かった。また、レーザーの波長安定度は、10分間の測定で標準偏差2.6×10⁻⁵ nm(95.45%が0.106 pm内)であることが分かった。装置の波長分解能は、レーザーの波長安定度で制約されるため、およそ10⁷に相当することがわかり、OH輝線との分離には十分な性能であることが実証された。期待される風速導出精度は、およそ40 m/sであり、これは先行衛星観測から期待される風速と同程度である。ガスセルを用いたフィードバックによるさらなる波長安定化などで改善が見込める。
本研究の成果により、OH輝線と分離したHe単独の観測に向けた見込みが立った。今後は、従来分光法と連携して地上からの継続的な観測を実現し、超高層大気の動態解明に貢献する。
準安定Heは、電子衝突や太陽風粒子として降り込むHeイオンの再結合によって生成される。寿命が7800秒と長く、光化学反応も限られているため、熱圏のトレーサーとして有用である。1083nm輝線は、OH輝線と近接しているため従来の分光器では分離が困難であり、Heの定量的な観測には不十分であった。本研究の目的は、近赤外レーザーへテロダイン分光法を新たに開発することで、従来機に比べて波長分解能を3桁以上改善し、OH輝線と分離したHe観測を実現することである。また、超高波長分解能観測によりHe輝線プロファイルを完全分解することで、世界で初めてドップラーシフト・ドップラー幅の両方から直接的に風速・温度場を導出することを企図する。衛星観測(Dynamics Explorer 2など)によると、上部熱圏の垂直風速は最大で100 m/s、大部分が30 m/s以内と報告されており、風速観測には30 m/sの精度が必要である。
赤外レーザーヘテロダイン分光法は、観測対象からの赤外光と局発赤外光(LO)の光を重ね合わせ、その周波数の差となる中間周波数成分を信号として電波分光する手法であり、1083nmにおいて10⁷以上の分解能を得ることができる。本研究発表では、He輝線の観測に必要なレーザーの特性評価試を実施した結果と、今後行う予定であるヘテロダイン信号評価試験の結果を報告する。
レーザー特性評価試験では、観測波長を決定する半導体レーザーの波長可変範囲、波長分解能を決定する波長安定度を測定した。その結果、レーザーの波長可変範囲は1082.907~1083.806 nmであり、ターゲットとなるHe輝線(輝線位置:1082.908 nm, 1083.025 nm, 1083.034 nm)OH輝線(輝線位置:1082.918 nm, 1082.933 nm, 1083.123 nm, 1083.139 nm)を十分カバーできることが分かった。また、レーザーの波長安定度は、10分間の測定で標準偏差2.6×10⁻⁵ nm(95.45%が0.106 pm内)であることが分かった。装置の波長分解能は、レーザーの波長安定度で制約されるため、およそ10⁷に相当することがわかり、OH輝線との分離には十分な性能であることが実証された。期待される風速導出精度は、およそ40 m/sであり、これは先行衛星観測から期待される風速と同程度である。ガスセルを用いたフィードバックによるさらなる波長安定化などで改善が見込める。
本研究の成果により、OH輝線と分離したHe単独の観測に向けた見込みが立った。今後は、従来分光法と連携して地上からの継続的な観測を実現し、超高層大気の動態解明に貢献する。