日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:三谷 烈史(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、桑原 正輝(立教大学)、横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、長 勇一郎(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:長 勇一郎(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、三谷 烈史(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)


09:45 〜 10:00

[PCG20-04] 1.49 µm帯レーザーを用いたキャビティリングダウン分光法(CRDS)によるアンモニア同位体測定

*滿田 龍一1 山中 千博1橋爪 光2 (1.大阪大学宇宙地球科学専攻、2.茨城大学理学部)


キーワード:CRDS、NH3、同位体比

1. はじめに

 惑星探査において、水やアンモニア(NH3)などの揮発性物質の分布と起源の解明は重要な課題の一つである。特に近年、リモートセンシングの結果から、月の南極クレーター内部の永久影領域にはこれらの物質が長期間にわたり保存されている可能性が示唆されている。これらの物質は、将来の月探査における資源としても、科学目的としても重要であり、特に水やアンモニアの同位体比の測定は、月地球系の揮発性物質の起源に制約を与えることが期待される。開発している惑星探査用CRDS(キャビティリングダウン分光法)は、高反射率ミラー(R=99.995%以上)を組み合わせることで、5cmとコンパクトながら1km以上の有効光路長を実現し、15 cm³のセル内において1 ngレベルの水分子を検出可能な高感度測定を実現している。今後CRDSは、コンパクトかつ高感度な分光装置として惑星探査での応用が期待されている。
 本研究では、生命形成などの観点から重要な物質であるアンモニアに着目し、1.49µm帯レーザーを用いたCRDSによるNH₃の同位体測定性能を評価することを目的とする。特に、NH3の安定同位体(14NH315NH3、NDH2、ND2H、ND3)の分別性能及び同位体比測定精度を明らかにし、惑星探査におけるCRDSの適用可能性を検討する。


2. 実験方法

 本研究では、1.49 µm帯のレーザーを光源とするCRDS装置を用いて、純度99%以上の14NH3ガス、15NH3ガス、ND3ガス、および重水とアンモニア水の混合液の測定を行った。今回測定に使用したCRDS装置のキャビティ長は50 cmであり、高反射率ミラー(R=99.995%以上)を組み合わせることで10km以上の有効光路長を実現している。近赤外域におけるアンモニアの同位体に関するデータベース情報は限られており、特に本研究で用いる波長範囲においては既存のデータがほとんど存在しない。そのため、本研究では、まず各同位体のスペクトルピークを同定し、次に既知の同位体比を持つ試料を用いた測定を行い、CRDS装置の同位体比測定精度を評価した。


3. 結果および考察

 窒素同位体比(15N/14N)については、15NH3によるピークと14NH3によるピークが分別され、これを元にして同位体比を測定し、同位体比測定精度の較正線を作成した。これにより、CRDSの測定で地球の窒素同位体比(δ15N = 0‰)と太陽系外縁(彗星、カイパーベルト天体など)の窒素同位体比(δ15N ≈ 800‰)については容易に分別可能であることが示された。一方、重水素同位体については、重水とアンモニア水の混合液(アンモニア水:重水=1:0.2 〜1:3)を測定し、重水の濃度増大に伴って強度が増加するピークを発見し、これをアンモニアの重水素同位体のピークとして同定に成功した。一方で、どのピークがどの重水素同位体(NDH2、NH2D、ND3)であるかという各吸収線の帰属及び較正線の確立については未了であり、より広いスペクトル測定域を持つFTIRなどでの分析との比較研究を進めている。今後、測定精度を向上させるためにさらなる実験を実施し、較正線の確立を目指す。


4. 結論および今後の展望

 本研究では、1.49 µm帯レーザーを用いたCRDSによるアンモニア同位体測定の性能を評価し、窒素同位体の分別が高精度で可能であることを示した。一方、重水素同位体の測定については、吸収線の帰属及び較正線の確立が今後の課題として残されている。今後はこれらを目標に、CRDSを用いた重水素同位体比測定を進める予定である。