日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG20] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

2025年5月29日(木) 10:45 〜 12:15 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:三谷 烈史(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、桑原 正輝(立教大学)、横田 勝一郎(大阪大学・理学研究科)、長 勇一郎(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:桑原 正輝(立教大学)、三谷 烈史(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)


11:45 〜 12:00

[PCG20-11] 彗星探査機Comet Interceptorにおける磁力計センサアライメント推定手法の検討:リアクションホイールのノイズを利用したアプローチ

*久連松 良温1松岡 彩子1、村田 直史2原田 裕己1笠原 慧3、佐藤 泰貴2、宮崎 康行2、白鳥 弘英2、中島 晋太郎2、船瀬 龍2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.宇宙航空研究開発機構、3.東京⼤学理学系研究科)

キーワード:彗星、コメット・インターセプター、磁力計センサ、校正

彗星は太陽系の形成初期における微小天体のサンプルであり、太陽系の起源や進化を理解するための重要な手がかりである。これまでの探査ミッションでは、周期が200年未満の短周期彗星がターゲットであったが、それらは太陽に何度も接近しているため、表面の特徴が元々のものか、太陽に接近する過程で変化したものかを見分けるのが難しいという問題がある。このため、ESAとJAXAにより、史上初めて長周期彗星の探査を目指すComet Interceptorミッションが計画されている。このミッションでは、3機の衛星を用いて彗星を同時に観測することにより、太陽系の形成や進化、太陽から吹き出す荷電粒子である太陽風と彗星との相互作用について、新しい知見が得られることが期待されている。衛星は2029年に打ち上げ予定であり、ESAが親機(A衛星)と子機の一つ(B2衛星)を、JAXAが残りの子機一つ(B1衛星)を提供する予定である。

JAXAが担当するB1衛星では、探査機本体が発する人工的な磁場ノイズが自然界の磁場の観測に影響を与えることを防ぐため、長さ1.5mの「ブーム」と呼ばれる棒状の伸展物の先に磁力計のセンサが設置される。打ち上げ時にはブームは小さく収納されているが、打ち上げ後にセンサが衛星本体から離れる方向に伸ばされる。しかし、保管時のブームの経時特性変化や機構部ガタ、熱変形などに起因した不確定性によりセンサの方向(アライメント)が変化することが懸念されており、そのアライメント誤差が磁場データの誤差に直結するため、重要な課題となっている。従来の磁力計を搭載した探査ミッションのうち、月周回衛星「かぐや」や木星氷衛星探査衛星「JUICE」などでは、アライメントを正確に推定するために、衛星本体内部に既知の磁場を発生させるコイルを装備し、その磁場をセンサで計測することでアライメントのずれを検証していた。しかし、今回のミッションでは探査機の小型化の優先度が高いため、アライメント較正磁場を生成するコイルを搭載することができず、新たな較正手法の開発が求められている。そこで本研究では、探査機内部の機器が発生する磁場ノイズを逆に利用し、ブーム伸展後の磁力計センサのアライメントを推定する手法の開発を目指す。

今回の較正に用いるノイズ源として、衛星の姿勢制御に使用される3つのホイール(リアクションホイール)を候補としており、回転しているホイールが発する磁場をセンサで計測することでアライメントのずれを検証する手法を検討している。衛星に搭載されるホイールと同等のホイールが発する磁場を測定する実験を、JAXA宇宙科学研究所の磁気シールドルームで実施した。現時点では、その実験で得られたデータの解析結果をもとにアライメント推定の可能性を検討し、大まかな手法を決定できている。今回の発表では、この手法を紹介するとともに、太陽風の磁場変動などの外部ノイズが存在する場合における手法の有効性についても言及する予定である。しかし、この方法はホイールに対する磁力計センサの位置が設計値に固定されているという仮定に基づいている。実際には、アライメントだけでなくホイールに対するセンサ位置が設計からずれ、想定位置とはホイールが発する磁場の方向が異なり、アライメントの推定に誤差が生じる可能性がある。そこで現在、センサの位置がずれた場合の磁場の変化を予測するため、ホイールが任意の場所に作る磁場をモデル化する手法を検討している。具体的には、ホイールが発する磁場のポテンシャルを四重極子成分までの球面調和関数展開で表し、そのガウス係数がホイールの回転数に対応した周期的な正弦波として記述できると仮定したモデルを構築している。このような時間変化するガウス係数を実験データから最小二乗法を用いて決定することを目指している。その結果について報告し、較正精度の向上への有効性を議論する。