14:45 〜 15:00
[PCG20-17] TOF型イオン分析器のLEF/ST両経路を併用したイオン種同定法の開発
キーワード:イオン、イオン分析器、宇宙探査、惑星大気
飛行時間(Time-of-Flight, TOF)型イオン分析器は、高い質量分解能を持つ質量分析手法の一つであり、宇宙探査におけるプラズマやイオンの観測に広く利用されている。しかし、宇宙機搭載用の分析器としては、小型化の必要性により質量分解能の低下が課題となる。単原子イオンの検出であれば低い質量分解能でも十分可能であるが、同じ質量数を持つ分子イオンを識別するには、Rosetta探査機に搭載されたROSINAのような高分解能かつ大型のイオン分析器が必要となる。本研究では、低質量分解能のTOF型イオン分析器において、線形電場(Linear Electric Field, LEF)経路と直進(Straight Through, ST)経路の両方式を併用することで、イオン種の同定精度を向上させる手法を開発した。
TOF型イオン分析器では、入射イオンがカーボンフォイルを通過する際にstart電子が発生し、これを開始信号としてイオン質量に応じて変化するイオンの飛行時間を計測する。また、カーボンフォイルでは入射イオンの分離と電荷交換が起こり、イオンの軌道が二通りになる。陽イオン化した場合はLEF経路を、電荷を失い中性粒子化した場合はST経路をたどる。このとき、LEF経路では線形電場の影響を受けた軌道をたどるイオンの飛行時間からイオン分離後の質量が求まる。一方、ST経路では分析器内を直進する飛行時間からイオン分離前の質量が求まる。これらのイオンの飛行時間を用いた質量分析では、測定する時間分解能が質量分解能に直結するため、分析器の小型化に伴い質量分解能が低下する傾向がある。
従来の研究では、これら二つの経路で得られたデータを個別に解析し、イオン種やイオン組成を推定していた。しかし、LEF経路で得られる情報だけでは、入射イオンに含まれるHやOなどの存在量が判明しても、それらが何の分子イオン由来なのかを特定することは難しい。また、ST経路で得られる情報だけでは、さらに質量分解能が低くなることに加え、例えばH2O+とNH4+など同じ質量数のイオンを判別できないという問題点もある。本研究ではLEF/ST両経路の情報を統合することで、元のイオン種を同定する精度を向上させる手法を提案する。
本研究の手法は、まず惑星大気イオンを仮定した異なるイオン数密度を持つ複数のイオン種の組を用意し、LEFとSTそれぞれで計測される質量電荷比(m/z)のカウント頻度分布を計算し推定マススペクトルを作成した。その際に、Comet Interceptorで使用するイオン分析器の質量分解能を用いてLEF(m/Δm~45)とST(m/Δm~5)に対してそれぞれ考慮した。このとき、模擬イオン数密度データから推定マススペクトルを導出する計算に用いる行列をAと定義した。
次に、得られた推定マススペクトルから元のイオン存在量比を再現するために、LEFやSTの各データに対し行列Aの逆行列や非負制約付き最小二乗法を用いることで、元のイオン存在量比を再推定した。さらに、再現の精度を評価するため、推定マススペクトルにランダムな誤差を与え、実際の計測でノイズが乗る状況を模擬し、再推定するイオン種ごとの数密度に生じる誤差への影響を分析した。
また、LEFおよびSTのどちらか一方でも誤差が小さいと判断できたイオン種についてはその値を採用し、この固定値を追加条件として再び推定マススペクトルに制約付き最小二乗法を適用することで、より精度の高いイオン存在量比を求めた。この工夫により、LEFおよびSTでそれぞれ精度良く求められるイオン種の優位性を確保しつつ、その他のイオン種についても前段階よりも精度良く存在量比を導出できるようになる。この手法を繰り返すことで、最終的に精度が向上した元のイオン存在量比の再現が可能となった。
本研究は数値計算による解析モデルの開発を主軸としているが、今後は惑星大気に含まれるような様々な分子イオン種についてカーボンフォイルでのイオン分離率や電荷交換率の計測実験を行い、さらなるモデルの精度向上を図る予定である。
TOF型イオン分析器では、入射イオンがカーボンフォイルを通過する際にstart電子が発生し、これを開始信号としてイオン質量に応じて変化するイオンの飛行時間を計測する。また、カーボンフォイルでは入射イオンの分離と電荷交換が起こり、イオンの軌道が二通りになる。陽イオン化した場合はLEF経路を、電荷を失い中性粒子化した場合はST経路をたどる。このとき、LEF経路では線形電場の影響を受けた軌道をたどるイオンの飛行時間からイオン分離後の質量が求まる。一方、ST経路では分析器内を直進する飛行時間からイオン分離前の質量が求まる。これらのイオンの飛行時間を用いた質量分析では、測定する時間分解能が質量分解能に直結するため、分析器の小型化に伴い質量分解能が低下する傾向がある。
従来の研究では、これら二つの経路で得られたデータを個別に解析し、イオン種やイオン組成を推定していた。しかし、LEF経路で得られる情報だけでは、入射イオンに含まれるHやOなどの存在量が判明しても、それらが何の分子イオン由来なのかを特定することは難しい。また、ST経路で得られる情報だけでは、さらに質量分解能が低くなることに加え、例えばH2O+とNH4+など同じ質量数のイオンを判別できないという問題点もある。本研究ではLEF/ST両経路の情報を統合することで、元のイオン種を同定する精度を向上させる手法を提案する。
本研究の手法は、まず惑星大気イオンを仮定した異なるイオン数密度を持つ複数のイオン種の組を用意し、LEFとSTそれぞれで計測される質量電荷比(m/z)のカウント頻度分布を計算し推定マススペクトルを作成した。その際に、Comet Interceptorで使用するイオン分析器の質量分解能を用いてLEF(m/Δm~45)とST(m/Δm~5)に対してそれぞれ考慮した。このとき、模擬イオン数密度データから推定マススペクトルを導出する計算に用いる行列をAと定義した。
次に、得られた推定マススペクトルから元のイオン存在量比を再現するために、LEFやSTの各データに対し行列Aの逆行列や非負制約付き最小二乗法を用いることで、元のイオン存在量比を再推定した。さらに、再現の精度を評価するため、推定マススペクトルにランダムな誤差を与え、実際の計測でノイズが乗る状況を模擬し、再推定するイオン種ごとの数密度に生じる誤差への影響を分析した。
また、LEFおよびSTのどちらか一方でも誤差が小さいと判断できたイオン種についてはその値を採用し、この固定値を追加条件として再び推定マススペクトルに制約付き最小二乗法を適用することで、より精度の高いイオン存在量比を求めた。この工夫により、LEFおよびSTでそれぞれ精度良く求められるイオン種の優位性を確保しつつ、その他のイオン種についても前段階よりも精度良く存在量比を導出できるようになる。この手法を繰り返すことで、最終的に精度が向上した元のイオン存在量比の再現が可能となった。
本研究は数値計算による解析モデルの開発を主軸としているが、今後は惑星大気に含まれるような様々な分子イオン種についてカーボンフォイルでのイオン分離率や電荷交換率の計測実験を行い、さらなるモデルの精度向上を図る予定である。
