09:30 〜 09:45
[PCG21-03] 粘性降着により時間進化する原始惑星系円盤におけるダストの化学進化
キーワード:原始惑星系円盤、原始太陽系円盤、ダスト、炭素枯渇
背景・目的: ダスト粒子は原始惑星系円盤内を移流・拡散により運動し、さまざまな物理化学プロセスを経験する。原始太陽系円盤におけるダストの化学進化の末、45.6億年前に地球を含む多様な太陽系天体が形成された。
Ishizaki et al. (2023) は定常降着円盤を運動するダスト粒子の化学反応進行を議論し、ダストの不可逆化学反応が進行する有効温度を予測する式を開発した。しかし実際には、現在の太陽系天体は時間進化する円盤で物理化学進化を経験したダスト粒子から形成されたはずである。そこで本研究では、時間進化する円盤において不可逆化学反応を経験するダスト粒子の空間分布の時間変化を調べるシミュレーションをおこなった。また、開発したモデルを太陽系内部の炭素枯渇問題に関する議論に適用した。
手法: 粘性降着によって時間進化する円盤において、不可逆化学反応を経験するダスト粒子の軌跡を追跡する3Dモンテカルロシミュレーションをおこなった。円盤面密度は自己相似解 (e.g., Armitage 2020) に従って進化するものとし、内側は粘性加熱、外側は照射加熱を熱源とする温度構造を与えた。105個のダスト粒子を106年間にわたり追跡するシミュレーションを10回おこなった。ダストの初期分布は円盤初期面密度分布に従う確率分布によって決定した。円盤物理パラメータとして、乱流粘性係数αは1.0×10–2, 3.0×10–3, 1.0×10–3、主星近傍の初期の質量降着率Mdotは10–7, 10–8 Msun/yr、初期円盤半径Rdiskは20, 50 auを採用した。
ダストの不可逆化学反応として難揮発性有機物の熱分解 (Li et al. 2021) を調べた。ダストの化学反応計算においては、アブラミ式で表されたケロジェンの熱分解の反応速度パラメーター (Chyba et al. 1990) を用いた。
結果・議論: 難揮発性有機物ダスト粒子が分解完了前に経験した最高温度は500-600 Kであり、ピークはα=1.0×10–2のとき540-550 K、α=1.0×10–3のとき570-590 Kであった。これは原始惑星系円盤において、難揮発性有機炭素が蒸発するsootlineが ~540-590 Kに位置することを示唆する。この温度推定は、Ishizaki et al. (2023) で開発された定常降着円盤における反応温度予測式に初期Mdotを適用した値とよく一致している。したがって、Ishizaki et al. (2023) の有効反応温度予測式は時間進化する粘性降着円盤における不可逆化学反応にも応用可能であると言える。
シミュレーション結果によると、𝛼=1.0×10−3のとき1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダスト粒子はすべて有機炭素を失っている。一方 𝛼=1.0×10−2 のときは、1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダスト粒子の70%が未反応である。初期ダスト粒子が難揮発性有機炭素をリュウグウと同程度のC/Si比 (Yokoyama et al. 2022) で保持していたと仮定すると、𝛼=1.0×10−2の場合、主星から1 auに位置する固体成分が炭素質コンドライトと同程度の有機炭素を含むことが示唆される。また、𝛼=3.0×10−3のとき1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダストのC/Si比はバルク地球に近い値 (Okamoto and Ida 2024) を再現する。
Ishizaki et al. (2023) は定常降着円盤を運動するダスト粒子の化学反応進行を議論し、ダストの不可逆化学反応が進行する有効温度を予測する式を開発した。しかし実際には、現在の太陽系天体は時間進化する円盤で物理化学進化を経験したダスト粒子から形成されたはずである。そこで本研究では、時間進化する円盤において不可逆化学反応を経験するダスト粒子の空間分布の時間変化を調べるシミュレーションをおこなった。また、開発したモデルを太陽系内部の炭素枯渇問題に関する議論に適用した。
手法: 粘性降着によって時間進化する円盤において、不可逆化学反応を経験するダスト粒子の軌跡を追跡する3Dモンテカルロシミュレーションをおこなった。円盤面密度は自己相似解 (e.g., Armitage 2020) に従って進化するものとし、内側は粘性加熱、外側は照射加熱を熱源とする温度構造を与えた。105個のダスト粒子を106年間にわたり追跡するシミュレーションを10回おこなった。ダストの初期分布は円盤初期面密度分布に従う確率分布によって決定した。円盤物理パラメータとして、乱流粘性係数αは1.0×10–2, 3.0×10–3, 1.0×10–3、主星近傍の初期の質量降着率Mdotは10–7, 10–8 Msun/yr、初期円盤半径Rdiskは20, 50 auを採用した。
ダストの不可逆化学反応として難揮発性有機物の熱分解 (Li et al. 2021) を調べた。ダストの化学反応計算においては、アブラミ式で表されたケロジェンの熱分解の反応速度パラメーター (Chyba et al. 1990) を用いた。
結果・議論: 難揮発性有機物ダスト粒子が分解完了前に経験した最高温度は500-600 Kであり、ピークはα=1.0×10–2のとき540-550 K、α=1.0×10–3のとき570-590 Kであった。これは原始惑星系円盤において、難揮発性有機炭素が蒸発するsootlineが ~540-590 Kに位置することを示唆する。この温度推定は、Ishizaki et al. (2023) で開発された定常降着円盤における反応温度予測式に初期Mdotを適用した値とよく一致している。したがって、Ishizaki et al. (2023) の有効反応温度予測式は時間進化する粘性降着円盤における不可逆化学反応にも応用可能であると言える。
シミュレーション結果によると、𝛼=1.0×10−3のとき1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダスト粒子はすべて有機炭素を失っている。一方 𝛼=1.0×10−2 のときは、1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダスト粒子の70%が未反応である。初期ダスト粒子が難揮発性有機炭素をリュウグウと同程度のC/Si比 (Yokoyama et al. 2022) で保持していたと仮定すると、𝛼=1.0×10−2の場合、主星から1 auに位置する固体成分が炭素質コンドライトと同程度の有機炭素を含むことが示唆される。また、𝛼=3.0×10−3のとき1 Myr経過後に主星から1 auに位置するダストのC/Si比はバルク地球に近い値 (Okamoto and Ida 2024) を再現する。