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[PCG21-05] 量子古典混合法による水凝縮相における光学定数のシミュレーション計算

キーワード:星間物質、水、光学定数、スペクトルシミュレーション
水氷は星間空間に広く存在し、塵表面を覆う準安定なアモルファス氷の主成分となっている。ところが、その詳細な構造の完全な理解は得られておらず、それにより星間空間の化学進化に対する理解が制限されている。加えて、水に対するCOやCO2, NH3, CH4といった他の揮発性分子の相互作用は、複雑有機分子 (COMs) の形成に対し重要な役割を持つと考えられている。
James Webb Space Telescope (JWST) に代表される分子振動領域 (あるいは赤外領域) における観測技術の発達は、こういった星間空間の氷に関する多くの知見を与えている [1]。ところが、観測データを解釈するために必要な光学定数などの実験データは、実験上の制約から不十分なものに留まっている。より有用な情報を観測データから得るためには、こうした物理量の定量は急務である。
こうした課題に対処する方法として、凝縮相化学の領域で用いられている理論的アプローチを提案する。我々は、Skinnerらによって確立された量子古典混合法 (mixed quantum/classical approach) [2-4] を拡張することにより、液体や氷などの凝縮相において複素屈折率や吸収断面積を含む光学的性質を定量的に計算する手法を開発した。その性能の評価として、今回は298 Kの液体の水に対する計算値 (水モデル:TIP4P/2005、分子数:512、計算に必要なパラメータは文献 [3, 4] のものを使用) を実験データと比較し、実験値との違いが10 %程度に収まることを確認した。
本研究を氷に対して進展させることで、星間空間におけるアモルファス氷の構造を分子動力学シミュレーションを用いてより詳細に研究することが可能となる。加えて、本手法を星間氷を構成する水以外の分子に拡張することで、正確な実験の困難な物質に関する情報を獲得することが期待される。
[1] McClure, M. K., W. R. M. Rocha, K. M. Pontoppidan, N. Crouzet, L. E. U. Chu, E. Dartois, T. Lamberts, et al. 2023. "An Ice Age JWST Inventory of Dense Molecular Cloud Ices." Nature Astronomy 7 (4): 431–43.
[2] Auer, B. M., and J. L. Skinner. 2008. "IR and Raman Spectra of Liquid Water: Theory and Interpretation." The Journal of Chemical Physics 128 (22): 224511.
[3] Gruenbaum, S. M., C. J. Tainter, L. Shi, Y. Ni, and J. L. Skinner. 2013. “Robustness of Frequency, Transition Dipole, and Coupling Maps for Water Vibrational Spectroscopy.” Journal of Chemical Theory and Computation 9 (7): 3109–17.
[4] Kananenka, Alexei A., and J. L. Skinner. 2018. “Fermi Resonance in OH-Stretch Vibrational Spectroscopy of Liquid Water and the Water Hexamer.” The Journal of Chemical Physics 148 (24): 244107.
James Webb Space Telescope (JWST) に代表される分子振動領域 (あるいは赤外領域) における観測技術の発達は、こういった星間空間の氷に関する多くの知見を与えている [1]。ところが、観測データを解釈するために必要な光学定数などの実験データは、実験上の制約から不十分なものに留まっている。より有用な情報を観測データから得るためには、こうした物理量の定量は急務である。
こうした課題に対処する方法として、凝縮相化学の領域で用いられている理論的アプローチを提案する。我々は、Skinnerらによって確立された量子古典混合法 (mixed quantum/classical approach) [2-4] を拡張することにより、液体や氷などの凝縮相において複素屈折率や吸収断面積を含む光学的性質を定量的に計算する手法を開発した。その性能の評価として、今回は298 Kの液体の水に対する計算値 (水モデル:TIP4P/2005、分子数:512、計算に必要なパラメータは文献 [3, 4] のものを使用) を実験データと比較し、実験値との違いが10 %程度に収まることを確認した。
本研究を氷に対して進展させることで、星間空間におけるアモルファス氷の構造を分子動力学シミュレーションを用いてより詳細に研究することが可能となる。加えて、本手法を星間氷を構成する水以外の分子に拡張することで、正確な実験の困難な物質に関する情報を獲得することが期待される。
[1] McClure, M. K., W. R. M. Rocha, K. M. Pontoppidan, N. Crouzet, L. E. U. Chu, E. Dartois, T. Lamberts, et al. 2023. "An Ice Age JWST Inventory of Dense Molecular Cloud Ices." Nature Astronomy 7 (4): 431–43.
[2] Auer, B. M., and J. L. Skinner. 2008. "IR and Raman Spectra of Liquid Water: Theory and Interpretation." The Journal of Chemical Physics 128 (22): 224511.
[3] Gruenbaum, S. M., C. J. Tainter, L. Shi, Y. Ni, and J. L. Skinner. 2013. “Robustness of Frequency, Transition Dipole, and Coupling Maps for Water Vibrational Spectroscopy.” Journal of Chemical Theory and Computation 9 (7): 3109–17.
[4] Kananenka, Alexei A., and J. L. Skinner. 2018. “Fermi Resonance in OH-Stretch Vibrational Spectroscopy of Liquid Water and the Water Hexamer.” The Journal of Chemical Physics 148 (24): 244107.