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[PCG21-P07] Mass spectroscopy of thermal decomposition of macromolecular organic matter under low gas pressure environment
有機物は主に元素C、H、N、Oから構成されており、これらは宇宙において存在度の高い重要な元素である。また揮発性も高く、現在得られている隕石・小惑星のリターンサンプル試料では、これらの元素は太陽存在度に比べて減少している [e.g., 1-4] ことがわかっており、この不足の一因として、微惑星形成に先立つ原始惑星系円盤中での “soot line” (すす線) における有機物質の不可逆的な熱分解が起きていることが考えられる。
これまでにいくつかの研究 [e.g., 5,6] によってこの soot line の温度は評価されており、例えばArガス流下でのケロジェンの熱分解実験 [7,8] や真空下での模擬分子雲有機物質の熱分解実験 [6] などがおこなわれている。だが、様々な高分子有機物についてより妥当な条件下における体系的な実験はおこなわれていないのが現状である。よって、原始惑星系円盤条件下における高分子有機物の熱分解への挙動を調べるため、真空下でのマーチソン炭素質コンドライト (CM2) から得た不溶性有機物 (IOM) および模擬分子雲有機物質の熱分解実験をおこなった。
IOMは九州大学にてマーチソン (CM2) コンドライト隕石から精製されたものを使用した。模擬分子雲有機物質は、窒素で満たしたグローブボックス内にて、[6] と同じ組成のものを、化学試薬を混合することにより作成する。予備実験では、IOMをゴールドミラー真空炉 [e.g., 9] にて加熱し、四重極質量分析計 (MKS microvision 2; m/z 1-100) を用いて放出されるガスのモニタリングをおこなった。試料本体から出たガスを調べるために、各QMSデータはブランク実験のデータと比較し、また試料重量での正規化もおこなう。
マーチソンのIOMを1000℃まで、20 K/minで昇温した加熱実験では、H2O (m/z 18)、CO (m/z 28)、CO2 (m/z 44) が主要な放出ガスとして観察された。またガスの放出パターンには大きく二つの温度帯、約220℃と約430℃にピークがみられ、H2O、CO、CO2もここで顕著に放出された。600℃以上の高温では、H2 (m/z 2) とHCN/C2H3 (m/z 27) の放出が支配的となった。また、1000℃までの20 K/minでの昇温加熱実験後には、初期質量の約64%が固体として残存し、これはマーチソンのIOMを10 K/minでHeガス流下にて加熱した [10] における観察と一致する。本発表では、模擬分子雲有機物質からのガス放出パターンについても議論をおこなう。
References: [1] Yokoyama T. et al. (2023) Science 379, eabn7850. [2] Lauretta D. S., Connolly H. C., Jr. et al. (2024) MaPS. 59(9), 2453. [3] Naraoka H. et al. (2023) Science 379, eabn9033. [4] Oba Y. et al. (2023) Nat. Commun. 14, 1. [5] Li J. et al. (2021) Sci. Adv. 7, eabd3632. [6] Nakano H. et al. (2003) ApJ. 592, 1252. [7] Burnham A. K. et al. (1987) Energy Fuels 1, 452. [8] Chyba C. F. et al. (1990) Science 249(4967), 366. [9] Yamamoto D. and Tachibana S. (2018) ACS Earth Space. Chem. 2(8), 778. [10] Komiya M. and Shimoyama A. (1996) Bul. Chem. Soc. Jpn. 69, 53.
これまでにいくつかの研究 [e.g., 5,6] によってこの soot line の温度は評価されており、例えばArガス流下でのケロジェンの熱分解実験 [7,8] や真空下での模擬分子雲有機物質の熱分解実験 [6] などがおこなわれている。だが、様々な高分子有機物についてより妥当な条件下における体系的な実験はおこなわれていないのが現状である。よって、原始惑星系円盤条件下における高分子有機物の熱分解への挙動を調べるため、真空下でのマーチソン炭素質コンドライト (CM2) から得た不溶性有機物 (IOM) および模擬分子雲有機物質の熱分解実験をおこなった。
IOMは九州大学にてマーチソン (CM2) コンドライト隕石から精製されたものを使用した。模擬分子雲有機物質は、窒素で満たしたグローブボックス内にて、[6] と同じ組成のものを、化学試薬を混合することにより作成する。予備実験では、IOMをゴールドミラー真空炉 [e.g., 9] にて加熱し、四重極質量分析計 (MKS microvision 2; m/z 1-100) を用いて放出されるガスのモニタリングをおこなった。試料本体から出たガスを調べるために、各QMSデータはブランク実験のデータと比較し、また試料重量での正規化もおこなう。
マーチソンのIOMを1000℃まで、20 K/minで昇温した加熱実験では、H2O (m/z 18)、CO (m/z 28)、CO2 (m/z 44) が主要な放出ガスとして観察された。またガスの放出パターンには大きく二つの温度帯、約220℃と約430℃にピークがみられ、H2O、CO、CO2もここで顕著に放出された。600℃以上の高温では、H2 (m/z 2) とHCN/C2H3 (m/z 27) の放出が支配的となった。また、1000℃までの20 K/minでの昇温加熱実験後には、初期質量の約64%が固体として残存し、これはマーチソンのIOMを10 K/minでHeガス流下にて加熱した [10] における観察と一致する。本発表では、模擬分子雲有機物質からのガス放出パターンについても議論をおこなう。
References: [1] Yokoyama T. et al. (2023) Science 379, eabn7850. [2] Lauretta D. S., Connolly H. C., Jr. et al. (2024) MaPS. 59(9), 2453. [3] Naraoka H. et al. (2023) Science 379, eabn9033. [4] Oba Y. et al. (2023) Nat. Commun. 14, 1. [5] Li J. et al. (2021) Sci. Adv. 7, eabd3632. [6] Nakano H. et al. (2003) ApJ. 592, 1252. [7] Burnham A. K. et al. (1987) Energy Fuels 1, 452. [8] Chyba C. F. et al. (1990) Science 249(4967), 366. [9] Yamamoto D. and Tachibana S. (2018) ACS Earth Space. Chem. 2(8), 778. [10] Komiya M. and Shimoyama A. (1996) Bul. Chem. Soc. Jpn. 69, 53.