日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM10] Space Weather and Space Climate

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Pulkkinen Antti(NASA Goddard Space Flight Center)、Aronne Mary(NASA GSFC/CUA)、伴場 由美(国立研究開発法人 情報通信研究機構)

17:15 〜 19:15

[PEM10-P12] DMSP衛星観測データを活用した人工衛星表面帯電自動検出システムの開発

*升野 颯人1寺本 万里子1、荒木 大智1飯田 佑輔2、花沢 明俊1、岩瀬 智哉1北村 健太郎1、奥村 哲平3、古賀 清一3、岡本 博之3 (1.九州工業大学、2.新潟大学、3.宇宙航空研究開発機構)


キーワード:表面帯電、人工衛星、機械学習

人工衛星の表面帯電は、宇宙開発における重要な課題である。特に、デブリ除去や軌道上サービスのようなミッションでは、衛星とターゲット間の電位差による放電がシステムや機器に損傷を与えるリスクがあるため、表面帯電の発生メカニズムを解明し、予測・検出する技術が求められている。
この課題の背景には、低軌道を飛行する人工衛星の表面帯電がオーロラ電子と電離圏プラズマ密度という2つの要因に起因することが挙げられる。先行研究では、(1)降下電子(>14 [keV])のフラックスが > 108[eV cm-2 s-1 str-1 eV-1] であること、(2)電離圏プラズマ密度が104[cm-3]以下であること、という条件が帯電発生の指標として定義されている(e.g. Gussenhoven,JGR, 1985)。しかし、これらの条件を満たさない帯電現象も存在し、その原因が十分に解明されていないのが現状である(Masuno, SGEPSS ,2024)。
この帯電を引き起こすプラズマ環境の解明に向けて、帯電イベントを多く検知する必要がある。先行研究では、帯電時のイオンのETダイアグラムにはイオンライン構造と呼ばれる特徴的なパターンが見られることが確認されている(Anderson,2012)。この構造は、衛星が周囲のプラズマに対して−ΦV[V]に表面帯電した際に発生する。具体的には、周辺のイオン(1[eV]以下)が衛星の電位によって加速され、ΦeV[eV]のエネルギーを持つイオンとなりセンサの開口部を通過する。その結果、ΦeV[eV]のイオンフラックスが極端に多く観測され、この特異な構造が形成される。そのため、このイオンライン構造の統計的な検出手法の開発を行ってきた (Masuno,SGEPSS, 2024)。しかし、帯電を正確に統計的に検出することが困難であり、最終的に目視確認に依存しているのが現状である。
そこで本研究では、これらの課題を解決するために、DMSP衛星F-16号機が観測したデータを活用し、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた表面帯電の自動検出システムを構築した。使用したデータは、2009~2019年の11年間に観測された降下イオンフラックスのETダイアグラムで、イオンライン構造が確認された帯電データ3081例と非帯電データ2819例を抽出した。さらに、ノイズ付加によるデータ拡張を行い、最終的に帯電データ8599例、非帯電データ7898例を学習モデルに使用した。検証データとしては、帯電データ341例、非帯電データ315例を用いた。
その結果、学習データに対するaccuracyは99.6%、lossは0.015、検証データに対するaccuracyも99.6%、lossは0.014を達成し、CNNによる高精度な帯電検出が可能であることが確認された。また、従来の研究で定義された帯電条件を満たさない帯電も検出できることが明らかとなり、帯電に寄与する新たな要因の発見につながる可能性が示された。