日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Frontiers in solar physics

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:鳥海 森(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、Sterling Alphonse(NASA/MSFC)、渡邉 恭子(防衛大学校)、今田 晋亮(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

17:15 〜 19:15

[PEM11-P01] 深層学習を用いた高温領域の非線形熱伝導シミュレーションの高速化

*小関 裕真1金子 岳史1飯田 佑輔1 (1.新潟大学)

キーワード:深層学習、サロゲートモデル、数値シミュレーション、非線形熱伝導、太陽フレア

太陽フレアの物理メカニズムを解明し、事前予測に活用するためには、高速かつ高精度なシミュレーションが必要である。太陽フレアのシミュレーションでは非線形熱伝導を考慮した磁気流体方程式から数値的に時間発展を求めるが、熱伝導のタイムスケールが短いため、時間刻み幅を非常に小さく設定する必要があり、積分回数が増加する傾向がある。これに対して、放物型偏微分方程式の効率的な数値解法としてSuper TimeStepping(STS)法が用いられることがある。STS法は、計算の安定性を維持しつつCFL条件を超える時間刻み幅を可能にするが、非線形現象においては精度に限界がある。また、近年では深層学習によりシミュレーションの途中計算を代替するサロゲートモデルが注目されている。

本研究では、太陽フレアシミュレーションの非線形熱伝導方程式部分の高速化を目指し、シミュレーションデータを学習させ、一定時間経過後の温度プロファイルを推定する深層学習モデルを開発した。オートエンコーダを基盤とする19層の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を設計し、温度分布と拡散係数を入力、数秒後(直接シミュレーションで必要な時間刻み幅の1000倍程度)の温度分布を出力するよう構成した。学習データには1次元非線形熱伝導のシミュレーションデータを使用した。初期プロファイルにはガウス関数を適用し、熱伝導係数は0.1から5.0の範囲でランダムに設定した。

提案モデルにより、直接シミュレーションの結果を正解とし、深層学習モデルによって予測された温度プロファイルのMean Absolute Percentage Error(MAPE、平均絶対誤差率)は1.28%という高精度を達成した。また、深層学習モデルの直接シミュレーションに対する誤差は、STS法の直接シミュレーションに対する誤差よりも小さかった。さらに、太陽フレアの実際のパラメータを仮定して計算を行った場合を推定した結果、提案モデルは計算効率の向上が期待され、高温領域のシミュレーションにおいて有効である可能性が示唆された。

深層学習を活用したサロゲートモデルはSTS法に対して、非線形熱伝導シミュレーションの高精度化と積分回数の軽減を両立できることを示した。本手法は、太陽フレアの高温領域におけるシミュレーション効率と精度を向上させる潜在力を持つ。