日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] Frontiers in solar physics

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:鳥海 森(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、Sterling Alphonse(NASA/MSFC)、渡邉 恭子(防衛大学校)、今田 晋亮(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)

17:15 〜 19:15

[PEM11-P12] Solar Flares on the Early Sun: Insights from TESS's Photometric Observations of a Young Sun-like Star, EK Dra.

*一柳 大治朗1山敷 大亮1山田 大翔1石原 一真1行方 宏介1,2,3,4山敷 庸亮5 (1.国立大学法人京都大学、2.国立天文台、3.ゴダード宇宙飛行センター、4.アメリカ・カトリック大学、5.京都大学大学院総合生存学館)


キーワード:若い太陽、太陽黒点、恒星の黒点、EK Dra、フレア

恒星フレアは、その惑星の磁気や大気、さらには生命の存在可能性に大きな影響を与えるため、その発生メカニズムの解明は天文学において重要な課題である。現在の太陽観測によると、黒点の面積が大きいときほど、太陽フレアの頻度は増え、放出エネルギーは大きくなることが知られている。さらに、多くのフレアは中緯度帯で発生していることも分かっている。しかし、誕生して数億年の太陽についても、黒点と太陽フレアに同様の関係があったのかは不明である。そこで、我々は若い太陽型星であるEK Draと呼ばれる恒星に注目した。EK Draは、誕生後1億年と若く、半径と質量が太陽とほぼ同じであるので、若い太陽型星のモデルとして非常に優れている。本研究では、黒点の面積と恒星フレアの発生頻度の関係と黒点が発生している緯度帯について調べることを目的とした。その達成のために、NASAのTESS衛星が取得したEK Draの光度変化のデータの解析を行った。TESS衛星は、2019年から2022年の期間EK Draを12セクター、つまり合計で約12ヶ月分観測している。本研究では、セクター毎にフレアの発生頻度、黒点面積、黒点の自転周期を算出した。過去の研究では、異なる恒星に対して、黒点面積と恒星フレアの発生頻度の相関を比較することはされているが、同じ恒星について異なる時期の黒点面積と恒星フレアの発生頻度の相関を調べた研究は前例がなく、非常に重要である。はじめに、「EK Draの黒点面積と恒星フレアの発生頻度の相関」について調べた。黒点面積については、恒星の自転による黒点の見え隠れが、恒星の光度曲線の周期的な明暗の変動を引き起こすので、光度曲線の変動の幅を計算することで黒点面積を算出した。また、光度が急激に変化している部分を恒星フレアとみなし、その数を調べることで恒星フレアの発生頻度を見積もった。その結果、現在の太陽と同様に、EK Draの黒点面積と恒星フレアの発生頻度には正の相関があった。これは、巨大フレアは巨大黒点起因で起きていることを表し、太陽の知見がスーパーフレアなどの極端現象にまで適用できることを示唆している点で重要である。次に、EK Draで黒点がどの緯度帯で発生しているのかを調べるために、「EK Draの黒点面積と黒点がある位置の自転周期の相関」について調べた。太陽などの恒星は差動回転をしており、赤道側ほど自転周期が短くなると考えられている。このことから、EK Draの黒点の見え隠れによる光度変化の周期を調べることで、EK Draで黒点が発生している緯度帯を求めることができる。この結果、EK Draは自転周期が2.6日〜2.7日のとき、黒点面積が大きくなることがわかった。EK Draの自転周期の平均が2.605日であることから、中緯度帯で黒点面積が大きくなっていることがわかる。つまり、EK Draは主に中緯度帯において活発な黒点活動が行われている。現在の太陽では、黒点やフレアの大部分が緯度10度〜30度で観測されているので、このことも現在の太陽と一致している。本研究では、太陽よりも若いEK Draという太陽型星についても、黒点面積と恒星フレアの発生頻度のあいだには正の相関があり、また黒点とフレアは中緯度帯で発生しやすい、ということがわかった。太陽が誕生して数億年というのは、太陽系の惑星に大気が形成され、地球上に最初の細胞が誕生した時期である。この時期の太陽がどのような活動をしていたかを調べることは、惑星形成や生命の誕生を考えるうえで非常に重要なことである。EK Draという恒星はこの時期の太陽について調べることができる優れたモデルであるから、本研究で太陽とEK Draの黒点や恒星フレアについての類似性がみられたことは、過去の太陽にも現在の知見が適用できることを示唆し、過去の太陽や地球、および生命誕生の謎を解き明かす重要な手がかりになるだろう。