日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM12] Coupling Processes in the Atmosphere-Ionosphere System

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:細川 敬祐(電気通信大学大学院情報理工学研究科)、Liu Huixin(九州大学理学研究院地球惑星科学専攻 九州大学宙空環境研究センター)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Chang Loren(Institute of Space Science, National Central University)

17:15 〜 19:15

[PEM12-P10] 中規模伝搬性電離圏擾乱とスポラディックE層の統計的関係: GPS網とイオノゾンデによる磁気共役点観測

*渡辺 一唯1大塚 雄一1新堀 淳樹1惣宇利 卓弥2西岡 未知3Perwitasari Septi3、Maheswaran Veera4 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所、2.京都大学 生存圏研究所、3.情報通信研究機構、4.SASTRA Deemed University)


キーワード:MSTID、スポラディックE層、TEC、イオノゾンデ、パーキンス不安定、太陽活動度

中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)は、主に中緯度のF領域で発生する電子密度の疎密構造が波のように伝搬する現象である。特に夜間に発生するMSTIDは、夏半球側において発生しやすいスポラディックE層(Es層)の不安定性と結合して成長することが明らかになっている。また、同一の磁力線上に位置する南北半球のF領域は、相似的な構造を持つことが知られている。このことは、Es層で発生した電場が磁力線に沿ってマッピングされることで、南北両半球のMSTIDが電磁気的に結合している可能性を示唆している。
本研究では、この南北半球の電離圏結合の統計解析を行うため、2011年から2020年における、日本国内4地点のイオノゾンデのデータと日本及び日本と磁気共役点であるオーストラリアのGNSSシステムから収集された全電子量(TEC)を調べた。
GNSS衛星と受信機間の電波の位相差及び遅延量から算出したTECデータに対して、1時間の移動平均を減算することで、MSTIDの周期に相当する1時間以内の変動成分を抽出した。また、MSTID活動度を(δI/I)×100%の比で導出した。ここで、δIは特定の4.05°×4.05°の範囲で1時間に観測されたTEC変動の標準偏差、IはδIと同じ領域、同じ期間に観測された背景TECである。この指標を、日本におけるイオノゾンデ観測点の上空100kmと同じ磁力線上に位置する南北半球の高度300kmの地点で算出した。
地方時19時から02時におけるMSTID活動度と2つのEs層のパラメータ(foEs, Δfo-b(≡foEs-fbEs))を平均した(foEs: Es層の臨界周波数、fbEs: Es層のブランケット周波数)。Δfo-bはEs層の電子密度の不均一性を示していると考えられる。5月から8月までのMSTID活動度と2つのEs層のパラメータの日変化の相関係数を算出した。
日本におけるEsパラメータと日本におけるMSTID活動度の相互相関係数は、沖縄を除く3地点のすべての年で大きい値を示し(0.2-0.8)、稚内、国分寺、山川、沖縄の順に高い値を示した。このことは、高緯度の方がF領域に対するEs層の導電率の比が高いことやF領域でのパーキンス不安定が小さいことで、MSTIDはEs層からのシーディングがなければ十分に成長できないため、MSTIDとEs層の結合が強くなることが考えられる。
5-8月の日本とオーストラリアにおけるMSTID活動度の相関係数は、高緯度ほど最大値が大きく、太陽活動度と反相関を示した。また、5-8月の日本におけるEsパラメータとオーストラリアにおけるMSTID活動度の相互相関係数は、太陽活動度が低いときは日本の共役点における結果と同様になったが、太陽活動度が高いときは低くなることを示した。太陽活動度が高いときは、F領域の導電率が大きくなることでペダーセン電流が流れやすくなる。MSTIDの水平波長に対応する数百kmの空間スケールをもつ電場は磁力線に沿って南北両半球のF領域に伝わるが、空間スケールが数十km以下の電場が減衰すると考えられる。MSTID活動度には、約15~400kmの空間スケールのTEC変動が含まれる。数十km以下の空間スケールをもつTEC変動は、高太陽活動期には、南北両半球における磁気共役性が弱くなる可能性が考えられる。