日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Dynamics of the Inner Magnetospheric System

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:桂華 邦裕(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Goldstein Jerry(Southwest Research Institute)、Sun YIXIN(Peking University)


17:15 〜 19:15

[PEM13-P04] 地球磁気圏のEMIC波: Arase衛星による偏波解析を用いたイオン組成導出の試み

*菊地 陸1笠羽 康正1土屋 史紀1松田 昇也2笠原 禎也2松岡 彩子3佐藤 晋之祐1城 剛希1 (1.東北大学、2.金沢大学、3.京都大学)

キーワード:地球、あらせ、磁気圏、EMIC波、イオン組成

Electromagnetic ion cyclotron (EMIC) 波は、温度異方性のある各種イオンにより励起される円偏波を持つ低周波電磁波動である。各イオンのサイクロトロン周波数を基準とした周波数特性を示すが、各イオンの密度がその強度や偏波特性に影響を与える。このため、波動が強く十分なS/Nが得られ、かつ、周波数帯域幅が広い場合には、周辺プラズマのイオン組成を推定することが潜在的に可能である。粒子計測器では10-20 eVを下回る低エネルギーイオンの定常的な観測が困難であるため、EMIC波を用いたイオン種及びその組成の導出は、地球及び惑星の磁気圏・プラズマ圏におけるイオンの輸送ダイナミクスを紐解く手がかりになり得る。

 これまでに、Akebono衛星やVan Allen Probes (VAP) 衛星により、各種イオンのEMIC波が観測され、イオン組成の推定に有益なモード変換イベントも報告されている [Matsuda et al., 2015; Miyoshi et al. 2019]。一方、Arase衛星におけるモード変換イベントの観測事例は、Miyoshi et al. (2019) のFig.2に示される一例のみに留まっており、イオン組成に関する詳細な議論は行われていない。本研究は、Arase衛星の磁場データを用いてEMIC波のより広範な観測事例を調べ、電離圏のトップサイドからプラズマ圏における低温イオンの組成分布とその変動を見出すことを目的として着手された。

 本解析は、Arase衛星に搭載されているMGF (Magnetic Field Experiment) [Matsuoka et al., 2018] による256 Hz 3軸磁場波形データ(2017-現在: 地球に近い領域で継続取得)、及びWFC (Wave Form Capture) [Matsuda et al., 2018] による1,024 Hz波形データ(EMIC-Burstデータ: 2017年3月-2018年10月の間欠的期間。サーチコイルによる磁場3軸波形データの存在期間)を用いる。2025年2月現在、これらのデータにおいて組成情報を導出し得る「S/Nの良く、H+、He+、O+のサイクロトロン周波数を跨ぐ広帯域のEMIC波」を探索する途上にある。これらに対して、Akebono・VAPに対して行われてきた手法を適用してイオン組成の導出を行う。具体的には、特異値分解 (Singular Value Decomposition; SVD) 法 [Santolik et al., 2003] 等を用いた偏波解析を行い、偏波度 (polarization)、伝播方向を示す波数法線角 (Wave Normal Angle; WNA)、及び波の平面性 (planarity) を求めるとともに、イオン組成情報を含むcutoff周波数やcrossover周波数を得て、ここからイオン組成の導出を行う。

 本講演では、2017以降のMGFデータ、及び2017-2018年10月の期間でWFC (EMIC-Burst) データを用いた解析の初動結果について述べる予定である。

 本研究は地球磁気圏のEMIC波から、イオン組成及びその変動を推定することを目的としているが、2026年11月に水星到着予定のBepiColombo、また木星を周回し近年ガリレオ衛星フライバイを実施したJuno、2031年から木星を周回するJUICEによる磁場観測への発展も念頭においている。