日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM14] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:山本 衛(京都大学生存圏研究所)、小川 泰信(国立極地研究所)、野澤 悟徳(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、吉川 顕正(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

17:15 〜 19:15

[PEM14-P07] トロムソにおける無人ミリ波分光観測に向けた機械式冷却黒体の開発と同地における今後の観測計画

*水野 亮1、角川 寛人1中島 拓1長浜 智生1、鈴木 和司1、川端 哲也1野澤 悟徳1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:大気微量成分、ミリ波分光、極域、地上観測

太陽活動に伴い極域に降り込んだ高エネルギー粒子が、大気分子を電離しイオン反応を介してNOx, HOxなどを生成しオゾンを破壊することが知られている。
我々は、南極の昭和基地と北極のトロムソの両極域からのミリ波スペクトル分光による大気分子の同時観測を通して、季節変化の影響と高エネルギー降り込み粒子の影響を切り分けたいと考えている。トロムソでは2016年に観測装置を設置して短期の観測は行ったものの、COVID19パンデミックの影響もあり観測停止の状態が続いてきた。まだ長期定常観測には至っていないが、2024年1月に観測装置の再立ち上げを開始し観測再開の準備を進めている。
ミリ波分子スペクトル観測では、常温と冷却の異なる2つの温度の黒体からの黒体放射を電波強度の校正信号として用いる必要があるが、現在、昭和、トロムソ共に液体窒素を冷却黒体に使用している。しかしながら、湿度の低い昭和に比べトロムソでは液体窒素を保持するガラスデュワーに霜が付いて成長し電波のビームを遮ってしまうため長期に渡る無人連続観測が困難な状況になっている。この問題を解決するため、超伝導受信機を冷却する真空容器のクライオスタット内に黒体を設置し、着霜の心配のない冷却黒体を用いた電波強度校正システムを内蔵したミリ波分光計システムの開発を行っている。
黒体にはTK-RAM(Thomas Keating社製)というポリプロピレン製のサブミリ波帯でよく使われる電波吸収体を用いるが、熱伝導率が低いため、黒体を低温に冷却し外部の放射による熱流入に対して安定した放射温度を維持することが重要な開発ポイントとなる(齋藤,名古屋大学修士論文, 2022)。TK-RAMを無酸素銅板にボルト締めすることでTK-RAM内部から冷却する方式で固定し冷却効率を高めるなど実験室での基礎実験を進めている。現段階では冷凍機のステージが29K、TK-RAM黒体の物理的温度が88K、電波強度から算出した等価放射温度が116Kとなっており、冷却黒体として使用できる温度範囲には達しているがまだ十分とは言えない。さらに開発を進め、受信機搭載時の温度上昇や外部からの熱流入に対する安定性の評価を踏まえて実用化を目指したい。
発表では、機械式冷却黒体の開発だけでなく、昭和基地と同様の受信機多周波化も含めた観測装置の開発状況と今後のトロムソでのミリ波分光装置の再稼働についても紹介する。