日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 太陽圏・惑星間空間

2025年5月26日(月) 15:30 〜 17:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、坪内 健(電気通信大学)、座長:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小財 正義(情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 極域環境データサイエンスセンター)

15:30 〜 15:45

[PEM16-06] 機械学習を用いた次世代太陽風観測装置用アナログ系の異常検知システム

*竹原 大智1岩井 一正1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)


キーワード:太陽風、次世代電波望遠鏡、機械学習、異常検知

惑星間空間シンチレーション(IPS)現象は、電波天体を観測する視線を太陽風が横切る際に、太陽風中の密度擾乱により引き起こされる電波の散乱現象である。名古屋大学では観測周波数327MHzの大型電波望遠鏡3基を用いてIPS観測を行っている。既存装置では、平均して1日に平均約70天体を観測しているが、より多くの観測データが求められている。

そこで現在、1024chのアナログ入力を持ち、物理開口面積4000平方メートルの次世代太陽風観測装置(次世代機)の開発が進められている。次世代機は強力なディジタル信号処理能力を持ち、2次元ディジタルフェイズドアレイにマルチビーム機能を実装した大口径かつ広視野の次世代電波望遠鏡である。次世代機の導入により、既存装置の約10倍の観測データが創出され、太陽圏構造の理解や太陽風加速問題の解明、宇宙天気予報の精度向上などが期待されている。現在、開発計画のPhase-1として64ch分のディジタルバックエンド(64ch系)が開発済みである。

次世代機ではシステムが複雑化した。高品質な観測を安定して実行するためには、システムの異常検知と監視が重要な課題の1つである。特にアンテナ素子の故障は、振幅減衰を引き起こし合成ビームの品質低下をもたらす。本計画では16384本のアンテナ素子が使用されるため、人力で故障したアンテナを見つけ出すことは難しい。各chの入力レベルをモニターし、正確にアナログ系の振幅減衰が検出できれば、次世代機の保守性が向上し、安定して高品質な観測が実現できる。

本研究の目的は、S/Nが悪い環境下や無線周波数干渉(RFI)が変化する環境下でも動作する、柔軟かつ高精度のアナログ系異常検知システムを開発・実装することである。先行して開発された64ch系の各チャンネルの出力データから、合成前のアナログ信号の異常を検知するAIを開発・実装した。本AIではロジスティック回帰モデルを使用し、5 回の交差検証を行った。室内実験では連続波の擬似信号を入力し、任意のアナログ入力に3dBの減衰器をつけたものと、そうでないもののスペクトルデータ12000個を用いた結果、99.925%の精度で検出できた。屋外実験では、名古屋大学内の建物の屋上にダイポールアンテナを設置して得たスペクトルデータ6400個を用いて、99.531%の精度で検出できた。以上より、機械学習を用いることで柔軟かつ高精度のアナログ系異常検知システムを開発できたと考えられる。