日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM16] 太陽圏・惑星間空間

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、坪内 健(電気通信大学)

17:15 〜 19:15

[PEM16-P01] Hinode衛星観測と惑星間空間シンチレーション観測で探る低速太陽風の流源および太陽風の加速機構

森島 啓太1、*岩井 一正1藤木 謙一1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:太陽風、太陽活動領域、コロナ磁場、惑星間空間シンチレーション

低速太陽風の流源と太陽風の加速機構は共に太陽風の物理学における長年の未解明問題である。本研究では活動領域の端で観測されるプラズマの上昇流(upflow)に着目し、upflowと太陽風の関係の解明を目指した。upflowは先行研究から低速太陽風の流源である可能性が示唆されてきたが、検証された時期が限られると共に、粒子のその場観測によって太陽風速度が検証された例は限られている。そこで本研究では、目的1として太陽の活動度が異なる多数のサンプルを解析することでupflowが低速太陽風の流源になり得るかを検証した。続いて太陽風の加速機構は、Alfvén波の散逸や衝撃波への遷移によって太陽風を加速するAlfvén波モデルが極域のコロナホールを流源とする太陽風の観測やシミュレーション結果と整合的であるが、活動領域を流源とする太陽風ではAlfvén波の寄与は不明である。そこで本研究では、目的2としてupflowが流源であると示唆される太陽風についてSuzuki(2006)で示されるAlfvén波モデルを検証した。このモデルでは、太陽風速度の二乗が光球磁場の大きさを光球から1 AUにおける磁束管の拡大率で割った値に対して比例することを示唆している。以上を検証するために、本研究では1太陽活動周期以上に渡って次の観測およびモデルから構築した計51のデータセットを解析した。解析したデータの1つ目はHinode衛星に搭載されたExtreme-ultraviolet Imaging Spectrometer(EIS)によるコロナ輝線の分光観測であり、Fe XIII (202 A)輝線の視線方向のドップラー速度を使用してコロナ底部におけるupflowを判別した。2つ目は、惑星間空間シンチレーション(IPS)観測から得られる太陽風速度である。3つ目はPotential Field Source Surface(PFSS)モデルによって外挿されるコロナ磁場であり、IPS観測から得られる太陽風速度とHinode衛星観測から判別されるupflowを接続した。解析の結果、目的1と目的2に対して次の結果を得た。まず目的1に対して、29サンプルでupflowがPFSSモデルで開いた磁力線と接続しており、その内の23サンプルでは開いた磁力線が500 km/s 以下の低速太陽風と接続していた。以上から、少なくとも一部のupflowが低速太陽風の流源になり得ることが示唆される。続いて目的2に対して、磁束管の拡大率の平均値が800倍を下回る群では理論式と同様の関係を示し、800倍を上回る群では理論式とは全く異なる依存性を示した。続いて、IPS観測で得られる太陽風速度からコロナ底部で必要とされるエネルギーフラックス密度(F_ips)と、EISで観測されるスペクトルの非熱的な線幅から推定されるコロナ底部のエネルギーフラックス密度(F_eis)とを比較した。その結果、理論式で再現されない群ではF_ipsがF_eisを上回ることが分かった。以上から、理論式で再現される群ではAlfvén波が太陽風の加速に寄与する可能性が高いことが示唆され、理論式で再現されない群ではupflowを流源とする太陽風の加速にAlfvén波以外の現象も寄与する可能性が考えられる。